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マンガ読みの年中休業うつらうつら日記(2022年5月7日~5月13日)

東京都のコロナは増えたり減ったり、3千から5千人の間ぐらいをフラフラしています。今度、オミクロンの変異株として「AB2」というのが出たそうで、感染力は強いらしいです。いつになったら落ち着くのか、想像もつきません。こういう生活がすでにもう「ウィズ・コロナ」なんでしょうね。それなりに暮らし、慣れてしまった部分もあるし(消毒、手洗い、マスク)、自由に旅行、特に海外には行きにくいってとこはしんどいですね。1日も早く元の生活に戻りたいんですが、テレワークでなく出社する動きだけが元に戻りつつあり、ワタシ的にはブーイングです。たとえ仕事中でも、せいうちくんが家にいる方がありがたいので。

22年5月7日

娘の誕生日。
なんともう31歳になる。
こんな歳まで元気に生きていられるのは現代医学とケアしてくださる皆さんのおかげに他ならない。
感謝の念以外の何物もない。

コロナで中止されていた面会が5月末には再開されるらしい。
会って、おめでとうを言おう。

毎年この日を迎えるたびに、もっと彼女にしてあげられることはなかったのかと考える。
施設が閉鎖になっても訓練を続けていれば座れるぐらいにはなったのではないか、始終そばにいて話しかけていたらもしかして「まま」と言ってくれる日が来たのではないか。
そんなのは全部別の宇宙で起こったかもしれないことで、この宇宙では起こらなかったのだ、と納得するのにとても時間がかかる。

私たち2人にできる最善を尽くしてきたし、不憫と愛情と妙な話だが誇りが常に心にある。
運命だ。
運命を受け入れて前向きに生きることが人間の姿だ。
「起こったかもしれない」無数のことに心を持っていかれるのは迷いがあり、愚かだからだ。

私たちの娘は中年を迎える重度心身障碍者。
そこがすべての始まりだ。
しかし当時の私は母親として成長する代わりに絶望の淵に沈んだ。
世の中には取り返しのつかないこと、やり直しのきかないことがあると知り、どんな深い祈りもどんな強い願いもかなわない時があると骨の髄まで学んだ。
せいうちくんや息子のおかげで絶望の沼に沈んだきりにはならないで済んだが、今も傷跡は深い。
娘を愛する気持ちに変わりがなくても、会った後は泣いて泣いて泣いて止まらなくなってしまう。
それもまた真実の気持ちなんだろう。

せいうちくんに散歩に誘われ、特に「パンケーキ食べに行こう」の部分に強く惹かれて出かけた。
駅前にある店の、クラシックパンケーキをいつも食べるのだが、今日はソフトパンケーキにしてみた。
ラズベリー入りのクリームと花を煮詰めたというシロップがついてくる。
最大は5枚重ね。
いつも2枚重ねまでしか行かないが、いつか「五重奏」を食べてみたいものだ。

さて、今週のマンガだが、女性の同性愛について描いた作品を並べてみた。
知見が少ないので定義に当てはまらないものもあると思うが、まあにぎやかしということで。

最初はいきなり本格派。
志村貴子の「青い花」全8巻。
女子校で生まれる淡い恋心のお話。
当事者の片方が全然「いかにも」のタイプでないところにリアリティがある。
美しい話だ。
だいたい女性の方が肉欲にとらわれないせいかいろいろ考える傾向のせいか、美しく昇華された物語になる気がする。

22年5月8日

息子から「母の日」メッセージが来た。
「いつも愛をありがとう」なんて、口がうますぎないか。
男の子はもっと口下手な方がカワイイのに、と思いながらもきっちりデレる。

娘が元気に生きていて息子が自分の食い扶持さえ稼いでくれれば、他に望むものはない。
その程度の欲でいられれば、人生案外楽なものだ。

またせいうちくんからパンケーキを餌に散歩に誘われたが、今日はどうしても外に出る気になれなくて、丁重にお断りした。
いつでも私の気分を尊重してくれるせいうちくんは、全然気を悪くした様子もなく電チャリで新しい街の地図を広げに行った。

そして探索の旅のついでにTOPSのケーキ買ってきてくれて、小さなカーネーションがついてたから「そうか、今日は母の日か」と思ったんだけど、まさか息子が忘れずにメッセージくれるとは思わなかった。
ケーキにその小さなカーネーションあしらって写メ撮り、息子に送った。
「父さんが母の日だからって買ってきてくれました。娘ちゃんとあなたからだと思っていただきます。ありがとう」
返事は「うわぁ、素敵!」だった。

今日も仲良く過ぎてありがたい。
せいうちくんとの散歩を断ってしまったのは悪かったが、全然外に出たいと思わないんだよね。
家の中でごろごろしていれば幸せ。
時々飲み会だ旅行だって爆発する時以外の私は非常におとなしい生き物なんだ。

今日のマンガは超長編の市東亮子「やじきた学園道中記」。
本編だけで29巻あるところに「Ⅱ」が12巻、「F」が既刊13巻。
喧嘩の強い女子高生コンビがあちこちの高校の争いごとを鎮めて回る話。
実はこの2人は全然どうこう言う仲ではないんだが、コンビの片割れ「キタさん」がやたらに女にモテる。
いつも何らかの女難にあってしまうのはメガネで知的なクールさが女の子たちにグサッとくるからだろうか。
(ところでこのマンガ、以前にも書いてる。絶対ダブらずに行きたかったんだが、ここにはどうしても使いたかったのでしょうがない。ごめんしてください)

22年5月9日

膝のリハビリに行ってきた。
今回それより重大だったのは首の痛み。
診察してレントゲン撮ってもらったら、軽い「脛骨捻挫」、つまり「むち打ち症」だった。
2週間前に家の中で仰向けに転倒し、したたか後頭部を打ちつけたせいらしい。
「これだけ頭打ってるんだったら脳神経外科に行きなさい」と言われた。
めんどくさいー。

リハビリのPTさんにその話をしたら、
「僕もちょっとカルテ見てきます」と下のフロアに行き、見て来てくれた。
「確かにかなり打ってますね。うさこさんはワーファリンものんでるし、行った方がいいですよ。血腫ができている可能性もあります。吐き気はないですか?」とリハビリの間中心配してくれていた。

じゃあしょうがない、行くか、って家に帰ってから調べて駅前の脳神経外科に電話してみた。
ところがそこは脳神経外科の看板は上げてるもののMRIなどの検査機器がなく、必要と思われた場合は隣の駅前の病院に依頼して撮ってもらうんだって。めんどくさいシステムだなぁと思いながらいっそ本丸、とばかりにその隣駅の脳神経外科に電話する。

「2週間前に後頭部を強打したんです。整形外科で頸椎捻挫しているから一度脳専門のところで診てもらえと言われました」と告げると、受付の看護師さんが、
「わかりました。吐き気はありますか?」
「ありません」
「その間に熱は出ましたか?」
「一度、軽く発熱しました。風邪らしくてすぐに治りましたが」
普通、脳についての問診を受けてると思うじゃないか。
看護師さんの次のセリフは、
「発熱があるということなら病院には来ないでください。1、2週間してからおいでください」。
そして電話は切られてしまった。

「36.7度しか出なかった」「2時間ほどで下がった」と訴えようと何度も電話し直したが、出ない。というか、切られてしまう。着信拒否か。
コロナ中だから神経使うのはわかるけど、それでは私の脳みそはどうなるんだ!

いたく腹を立て、3つ目の脳神経外科のHPを眺める。
設備も整っていそうだし、うちから自転車でなら行けるだろう。
初診は予約しなくてもいいって書いてあるから明日行ってみよう。
医療現場も大変だが、隔離室で待たせるとかもうちょっと詳しく聞くとかしてほしい。
「熱?はい、コロナ決定。来ないでください」では本当に具合の悪い人はどうしたらいいんだ。
私は特に変わった症状もなくせいぜい頭痛がするぐらいでいつものことだから、整形外科とあとせいうちくんに懇願されなかったら特に受診するつもりはなかったが、断られると腹が立つ。
ぷんすか。

今日のマンガは柊ゆたかの「新米姉妹のふたりごはん」既刊9巻。
深夜ドラマにもなったが、親同士の再婚で「姉妹」になった2人が、外国暮らしで親が留守の家で一生懸命ごはんを作る。
妹の方が数段上手い。
この2人がもう、雰囲気醸し出しちゃってお互い意識もしちゃって、ゆりんゆりんした雰囲気満点。
料理マンガとして読むもよし、百合マンガとして読むもよし、2つの味わいの作品。

22年5月10日

思わぬ病院ウィークになった今週、全部で5つもの病院に行くことになる。
整形外科、脳神経外科、心療内科、歯医者、心臓の定期検診。
外に出ると思うだけでくたびれてしまう。
転倒で病院に行くってのに、朝から転倒した。
今回は側頭部をドアにぶつけただけなので、ドアが動いて大したダメージはなかったのが幸い。
しかし病院で話す時、気まずいぞ、転倒ばかりしている老女。

脳神経外科へはすぐにたどり着けた。
自転車で15分ぐらいだ。
受付で来院の理由を話しながら、念のため、
「こちらの病院にはMRIとかありますよね?」と聞いたところ、CTまでしかなくてMRIが必要な時はよその病院に行って撮ってもらってる、と一番最初の病院と同じことを言う。
このあたりの脳外はみんな、着信拒否するような病院のMRIがないと立ち行かないのか!

それでも親切そうなドクターが「CTを撮ってみましょう。それで詳しいことがわからなければよそにMRIを撮りに行っていただくことになります」と言う。
CTですべてが明らかになることを祈る私。

でかい筒の中に頭部を送り込まれて映像を撮られた結果、シロだった!
血腫も脳挫傷の跡も全然ないって。
万が一具合が悪くなったら、と症状の書いてあるパンフをもらって、退散。
やっぱ私は骨が丈夫なのかしらん。
寝たきり暮らしのくせに骨密度が20代の人の110パーセントぐらいあるからなぁ。
しかし心を引き締めて、これからはあまり転ばないようにしよう。
やれやれ、用心のためとはいえ、余分な用事がひとつ増えた。
せいうちくんがとても喜んでくれたから、なんてことないけどね。


今日のマンガは山田香苗の「東京城址女子高生」既刊4巻。
これは実は百合物でもなんでもなく、ただ女子高生数名がきゃあきゃあと東京近辺の「城址跡」をめぐる、どっちかと言うとそっちの趣味の人の範疇。
にぎやかしということで許してください。
意外と東京都内には城址跡がある。
そんなところを散策してみるのもいいかも。

22年5月11日

2週に1度の心療内科。
今日は2週間ぐらい前にアームカットしてしまった話でもちきり。
60歳過ぎて自傷してる人なんているんだろうか。

「原因はあるの?」と言われて、せいうちくんが飲み過ぎて正気を失くしたことなどをしゃべる。
相手が正常でない状態なのがとっても苦手なのだ。
ドクターは大笑いして、特に前回ひどくせいうちくんをほめてしまったものだから(「あの人は奇跡のような人ですよ」とか言ってたなぁ)、
「ダンナ、しっかりしろよ。ちょっとほめすぎちゃったかな。意外とだらしないんだね。やっぱりADHDかな」とぶつぶつ言っていた。

「ま、しかしそんなダンナだけどあなたのことを大事に思ってくれてるんだから、心配かけないようにね」と言われ、あとは家に誰かが常にいるような気がする話。
寝室にせいうちくんといても、キッチンの方に人の気配を感じる。
息子が泊まりに来た後ならそのなつかしさが長引いてるだけなんだが、どうも母親のような気がするんだよね。
新居になじまないのをいいことに、心の隙間に入り込まれているんだろうか。
「次回、その話を細かくしましょう」と言われて今日はおしまい。

疲れているのでまっすぐ帰りたかったが、先日作った読書用のメガネの度がきつすぎるので、「3カ月以内なら1回に限り無料でお直し」って制度を使って直してもらおうと思う。
一生懸命ググってこないだ行ったメガネ屋を見つけ出した。

交渉はスムーズに運び、どうも私が想定していたより近くで本やタブレットを見ているらしいと分かり、度を一段階下げてもらうことにした。
2段階下げても見えるが、それだと今持ってるぐにゃぐにゃの読書用メガネと同じ度数になってしまうので、ここは一段階で。

1時間あればできあがる、と言われたのであてもなく街にさまよい出る。
何度も星乃珈琲店の前を通り過ぎたが、スフレを食べていこうという元気もない。

その間にも息子から、
「今日明日と都内にいるから、うちに泊まってもいいかな」と連絡が。
「大丈夫ー」と打ち、せいうちくんがカレー作ってくれるつもりなのを確認して、そうか、息子が来るならトップスのケーキ買っておこう。
こないだ母の日ケーキを食べたばかりなので、違う種類のダークチョコレートケーキにしておいた。
心療内科でもらった薬となぜか衝動買いした鳩サブレーをリュックに入れたらもうパンパン。

せいうちくん作の青梗菜の牡蠣ソース味が食べたいなーと思い、スーパーに青梗菜を買いに行く。
8株も買っちゃった。(1回に4株食べる我々だから、いいのだ)
息子が来るならかぶの味噌汁も作ってやりたいな、とかぶを買い、牛乳飲むだろうな、と牛乳を買い、持っていた買い物袋が小さいので本当に何もかもパンパンになってる。
メガネ屋には時間通りに行けたが向こうさんが混雑していて座って待つよう言われたので、座席で荷物の詰め替えをして何とか持てる程度にまとめた。
リュックのファスナーがかぶの葉を噛んでしまいそうな危うい荷物。

メガネ受け取って、もうフラフラで自分ちの駅まで帰りつき、そうだ、息子にくるみパンを買っておいてやろう、と最近買わなくなっていたくるみパンを2個買う。

最後に通りすがりのコンビニで息子と私用にタバコを買い、準備万端。
いつもGくんに怒られてるが、確かに息子を可愛がり過ぎてるよなぁ。
とめどなく、ダメにする方に甘やかしているのかもしれないけど、もう大人だから知ったこっちゃないのだ。
可愛がりたければ可愛がる。
甘やかしてダメになるようなヤツは最初からダメだ、と江口寿史大先生もおっしゃっておられるんだから。

その息子は23時過ぎにやってきて、どうやらテレ会議中らしく、
「ごめん!30分だけ、会議させて」と言ってスマホで何やら打ち合わせをしている様子。
仕事で疲れていたせいうちくんは待ちくたびれて先に寝ちゃった。
結局会議が終わったのは2時近く。
どこが30分だ!

幸い私は起きていられたので、そのあとの時間を楽しんだ。
「オレは、今生での残された時間をできるだけこんな風に両親と楽しく過ごして使いたい。少なくとも今はそうできる距離だし、精神的な距離はもっともっと近いから」
んなこと言われたら泣いちゃうじゃん。
私のアームカットも、「大変そうだね。お父さんもオレもついてるよ」とはげましてくれた。

「カノジョと、結婚するの?」と聞いたら、笑って、
「なんべん聞くんだよ。するよ。どこかのタイミングで、する」。
「私の理想としては、今年の9月(カノジョの誕生日)までに私のサファイア(9月の誕生石)の指輪をサイズ直ししてあなたからカノジョにあげてほしいんだけど。お古なんかじゃダメで、やっぱりあなたが買うべきなのかな」
「いやいやいや、ありがたいよ。大事な記念の品をさ」
「じゃあ、8月ぐらいまでにはカノジョの指のサイズを聞いといてね。でもそれやると指輪が全然サプライズにならないんだよね~」
「『アフロ田中』に寝てる間に糸巻きつけて測るシーンがあったなぁ」
「じゃあそれでお願い」

こんな風な息子に対する結婚観。
「沖縄とかで近しい親族だけでやろうよ、海の見える教会でさ。ついでに沖縄観光したい」
いろいろ野望が交錯してたぎっている。
これはいかんと自分で必死にストップかけてるんだよ、これでも。

3時頃息子が寝て、平和に終わる1日。
昼間の苦労も何もかも吹き飛ぶなぁ。

今日のマンガはこれも本命、全せいうちくんが泣いたオノ・ナツメの「ACCA13区監察課」の番外編、「ポーラとミシェル」。
父親同士も幼なじみで、しかもいつも成績を張り合っていたトップ同士の娘2人もたまたまおない年。
父親の競争が再び始まるかと思いきや、2人は全然張り合う気持ちはない。
ただお互いを大切に思っている。
最後のシーンではただ涙。しかも幸福と祝福の涙だ。
オノ・ナツメの絵と相まって、魂が浄化されるよう。

22年5月12日

朝の6時に目が覚めてしまって、自炊作業などをしながら過ごす。
せいうちくんも起きて来て、息子と少し話した後、9時半ごろ出かけて行った。
11時頃に息子を「ごはんだよ。カレー食べなよ」と起こして、サトウのごはん2パックを平らげるのをくるみパン1個をかじりながら驚嘆して見る。
この食欲は、そろそろ肉体年齢と折り合いをつけないと代謝が下がって出腹のモトになるという怖い人体の法則を、彼はまだ知らない。

息子に人生初の「短編小説」を読んでもらった。
ひどく感心してもらえた。
途中では「接続詞の使い方がうまいんだよなぁ」とか言っていたが、読み終わったら「はー」とため息をつき、
「人生でこれほど自分のものになってる瞬間を持つってのは幸せなことだね」みたいなことを言っていた。
「いい?」
「うん、いい。抒情的だ。文章が上手いとは思っていたけど、こんなに書ける人だとは思ってなかった」
素直に脱帽してくれて、私も嬉しい。

書くよう勧めてくれたCちゃんの話などをしていたら、
「長いことつきあってる友達がいっぱいいていいね。これからの若い人って、ちゃんとそういう関係が持てるのかな」とあらぬ心配をする。
「あなたを見てると、今のコントの仲間たちや保育園からの幼なじみや、長いつきあいの友達が多いようだけどね」
「いや、そりゃ稀有よ。たまたまオレのケースは稀有。普通は難しい」

確かに息子よりさらにデジタルネイティブで、LINEやメッセージで育ってきてると関係性はずいぶん変わるだろうね。
LINEの1行って、行間を10行ぐらい読まないといけない気がする。
いや、むしろそうも思わないで言ったなり言いっぱなし、読んだ側も読みっぱなしで深い交流が生まれないのがいけないのか。

「友達のGくんが、いつも『あいつはウソばっかりついてるじゃないか。あんたら、あのウソツキをどう思ってるんだ!』って怒ってるよ」と何気なく話したら、
「僕、そんなにウソつくかなぁ」と本当に思い当たらないような顔をするので、
「NYに2回合わせて実質3カ月しかいなかったのに、半年修行してきたとかさぁ、母さんのバイト料15万円あげたら、『このお金は一生使えない』とか言っといてすぐ使っちゃったとかさぁ、『もう何をするにも親に借金を申し込むことはない』って言ったのにすぐお金借りに来るとかさぁ、バイトすぐ探すって言ったのに全然探してないとかさぁ、母さん全部しゃべってるから、いちいちバレてるよ。怒ってる」
「なんだかお父さんがいっぱいいるみたいだなぁ」とむしろ嬉しそうな顔になったのはカワイイ。

あと、驚いたのは彼の一人称は「僕」なのだそうだ。
「今も『オレ』って言ったじゃん」ととがめたら、
「え、そう?時々言うかな。でも、8割は『僕』だね。時々『オレ』」
きっと我々は彼の身内として「オレ」のシャワーを浴びちゃってるんだろう。
決して「オレ」と言えない一人称「僕」か「私」のせいうちくんなんか、羨ましがっているぐらいなんだが。

「今日も泊めてくれないかな。明日も都内で練習あるからちょうどいいんだ」と言ってたくせに、1週間ぐらい留守にしていたカノジョが今日は帰ってくると連絡が来たとたん、
「あ、やっぱり家に帰るわ。カノジョ帰ってくるんだって」と臆面もない。
こっちは晩ごはんには何を出してやろうかとかいろいろ考えてたのに。
まったく、息子孝行はやりたい範囲でやるべし、だ。
誰に対する孝行でもきっと基本は同じ。
持ち出しをしている、と思ったとたんにつらくなるし取り返したくなるのが人情ってものだからね。

今日のマンガは名香智子の「シャルトル・シリーズ」全12巻。
1巻1巻に凝った副題がついており、収録のストーリーにもタイトルにちなんだ題がついてる。
これ自身はモテモテ金持ち大貴族の話なんだが、主人公の母親である公爵夫人は病的な女好きで男嫌い。
後に夫になる公爵に、
「私の男好きなど趣味の範疇を出ませんが、貴女の女好き男嫌いはもう立派な病気です。病気持ちの女を妻にはできませんよ」と結婚前に言われたほどの病の深さ。
それでどうして子供ができたかは本編を読んでいただくとして、名香智子のマンガでは一番好きなシリーズだ。

22年5月13日

午前中は心臓の検診、午後は歯医者に差し歯を入れに行くという忙しい日。
しかも雨。やだなぁ。

心臓のクリニックは終了間際に行ったのですいていた。
江口のりこ似の女医さんが不愛想な声で「うさこさん、こんにちは」と言ってレントゲンを撮ってくれる。
ツンツンツンデレぐらいの彼女がとても気に入っていて、ぶっきらぼうな物言いにも勝手に愛を感じている、おめでたい患者。

レントゲンと心電図取って、「異常あり」の異常なし(いつもとおんなじってこと)。
心臓は少し小さくなり(それでも標準サイズよりはだいぶでかいが)、水が溜まっていたのも抜けて来て、まあまあいい状態だそうだ。
ワーファリン値2.3で、ばっちり範囲内。

今度家の近くの大きな病院でひと通りの検査をする。
そうすればそこの診察券を手に入れて、かかりつけ医として扱うことができる。
大病院は紹介状がないと診てくんないからね。
その件で日取りを決めようと看護師さんが電話をしてくれたらしいんだが、驚いたことに、
「昔、〇〇区に住んでたこと、あります?」と聞かれた。
確かに住んでた。結婚してすぐだ。

娘を妊娠した時最初にかかったのがそこの病院だったのは覚えているが、病院の方では31年も経った患者の個人情報を把握しているのか!
ものすごく驚いた出来事だった。
つーことは私は古いものとはいえ、そこの診察券をすでに持っていたんだなぁ。
検査の日にも、もしあれば持ってきてくださいとのことだった。
そこから31年の人生を、語ろうか?
7回の引っ越しと娘や息子との暮らし、ぎっちり実が詰まっているぞ。
誰の人生もそうなんだろうけどね。
(会社から帰ってきてこの話を聞いたせいうちくんは、古い診察券を捜しながら泣き笑いしていた。ちなみに診察券はまだ持ってた)

薬局に処方箋を出し、「あとでとりにきます」と家に帰ってひと休み。
15時から歯医者だ。
取れた差し歯をつけるだけなので、それほど時間はかからなかった。
仮につけてみて何度も咬合紙を噛まされ、ちょこっとずつ削って微調整している様子。
できた歯は自前のものとほとんど変わらない。
ただ、妙に新しい感じがして不思議な感覚。

帰りに薬局に寄ったら、けっこう大事な薬が不足していることが分かった。
23日の分から作ってくれてて、問題の薬以外はちゃんと持っているのだが、それだけ別包になってたせいか、23日までの分がもううちにはないんだ。
薬局の方で把握してると思っていたが、私が失くしてしまったのか薬局が間違えたのか、よくわからない。
とにかく病院に電話して、先生に新しい処方箋をファックスしてもらわねばならないらしい。
少し時間がかかりそうなので、また家に帰って休む。
近所の薬局で本当によかった。

じきに電話がかかってきて、必要な薬を手に入れておしまい。
1日おきに1錠、半錠、と飲み分けなければいけない薬があり、あまりの煩雑さに私が音を上げたので、23日分からは薬局の方で苦労して一包にしてくれたらしい。
医療関係の人々には本当にお世話になっている。ありがたいことだ。
ああ、長い1日だった。
そのうえ今夜は定例ZOOM飲み会だ。
こちらはくたびれるけど、楽しい。

今日のマンガはこれもすごい本格モノ、須藤由実の「夢の端々」上下巻。
戦後間もない頃、2人の女学生が山に入って心中を試みた。
「天国に結ぶ恋」に影響されたわけでもあるまいに、と地元では噂になり、2人はやがて別々の人生を歩むことになる。
長い長い生涯の所々で2人は出会い、互いの関係を確認し、1人が凍傷で小指を失くしたため、もう1人も自ら小指を切断する。
その小指はずっと封印されていたが、85歳の時に片方が事故死し、2人の関係は終わりを告げる。
美しい、病的な物語。
でも女性の精神性の高さを垣間見るような、永遠の乙女心がうずく作品だ。

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