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年中休業うつらうつら日記(2021年12月4日~12月10日)

まだオミクロン株は暴れていないようです。このままのんびりお正月を迎えたい。新居の内覧会も済んで、もう少し社交月間を続けてから新年ゆっくり、そのあと怒涛の引っ越し作業に入るでしょう。どこかで「千駄木仮住まい日記」もまとめてみたい。いや、面白い場所を選んだものだと自分で自分に感心してます。

21年12月4日

今日は実に何もしないでのんびりだけしていた日なので書くことがない。
それに、のんびりと言うと聞こえが良かったり悪かったりするが、とにかく平日が疲れて仕方ないので何もない日に必死で身体を休めているのだ。
このままだと血尿が出そうだ。
平日働いてるせいうちくんには申し訳ない。手を合わせて拝んでる。

なので、前日ZOOMの話しか書くことがない。
しかもうろ覚え。
ビル警備とかのビデオ録画みたいに一定時間はきっちり残っているがそれを過ぎると消去されてしまうらしく、脳内に何にも残っていない。

あ、ここで日記の秘密がバレたね。
毎日きちんとその日あったことを思い出して書いてるわけじゃなくて、多くは簡単なメモ(それすらない時も多い)を元に膨らませて後日作っとります。
そして、今週始めの日記が何の因果かほぼ最後に回されてしまって、「締め切り」間際に書いてるってのが真相。
だから、書いてない週は水曜あたりから「ヤバイ、日記書いてない」とむずむずじたばたし始め、QOLも下がるし、うまいこと今日までの分は書いてある、なんて週はとっても過ごしやすい。
何の、誰のための締め切りかわからないものにこんなに縛られてしまう私のことを、いつも「仕事」の締め切りを多数抱えている友人Kちゃんなどは「ある種のバカ」と思っていることだろう。

さて、ZOOMで印象に残っているのは、長老も心臓が悪く、10年ほど前に狭心症を起こしたらしいこと。
私も狭心症を起こす危険アリと言われているので、
「何をしたらなるの?何に気をつけたらいいの?」と聞いたのだが、
「わからん。原因不明じゃ」という答え。

その時、やはり同じように「ホルター心電図」をとったらしいのだが、時代が違うのか医師の性格か聞いてた人がちゃんとしてないのか、まず「普段通りの生活をしてください」と言われたので特に運動もせずのんびりしてたそうだし、第二に、「生活記録表なんてものは書かされなかった」のだそうだ。
それで、全然波形に異常が出なかった彼は装置をつけたまま30分間ランニングマシンで走らされ、やっと異常波が出たんだってさ。
だから、彼の場合30分走っちゃいかんことだけは証明されたが、他の部分は謎のまま。
うーん、後学のためにならん人だ。

私が受けたホルター心電図は、「○時○分」と記入して食事欄にチェックを入れたり、何ならトイレも何時に大小どちらだったかを書くし、「ただ寝ていても検査にはなりません。少し運動してみて、『軽運動』の欄に時間とチェックを入れてください。階段を上り下りしたり早歩きしたりで結構です」と言われていたので、普段なら昼寝してるか寝転んでマンガ読んでる時間に外の坂道を2往復登り降りしたり、わざわざ「だんだん坂」まで昇降しに行ったぞ。
その結果、「理想的な生活表ができましたね」とほめられ、そして結局「はっきりした原因はわからないのですが、異常波は出てます。静かな生活を心がけてください。でも、運動不足で体重が増えるようなことはないように」とずいぶん難しいこと言われちゃった。内容が、じゃないよ、実行が、だよ。

持病なんて持たないがよろしい。
一病息災とは言うが、一病のめんどくささはかなりのものだ。
まして多岐にわたると、心臓の先生は「うつ病気味で散歩も難しいです」とか「人に会いたくなくて自信が持てずに」なんてことはまったくの管轄違い、一方心療内科は「外に出なきゃ、ってのがあなたのかかってる呪いなんじゃない?」って言うけど、違うんです、単なる循環器内科の指示なんですぅ。
お互い、おくすり手帳を見て薬がバッティングしてなければあまり気に留めないみたい。
高齢化が進んでるんだったら、主治医制度、その人の生活のすべてを診てくれる先生がいないとやっていけないよ。

あと、ZOOM会で覚えているのは小田原在住の女性が来てたな。
それから「市井のマンガ研究家」を名乗るHくんが、今度出る「このマンガがすごい!」の宣伝をしてた。
うちはもちろん買って、たいがい男女両方のおススメ20位までをとにかく買う。
すでに既刊が多いものやあまりに趣味と違いそうなものは外すが。
(去年は「チェーンソーマン」を買わなかった。今だに1冊も読んでない)

20位入賞してる中で「これは大当たりだった!」とか「これ好き!」となるのは半分ぐらいの確率かなぁ。
さすがにマンガ編集者やデータ調べの名人たち、よく調べてくれている。
毎年この季節は燃えるよ。
でも引っ越しあるから、あんまり買うのは控えて引っ越し後にしよう。
急騰した過去作や続巻の異常な値段がおさまった頃になるかも。

ああ、全体のレイアウトを考えて写真を見ていたら思い出した。
今日は安田さんち(旧安田楠雄邸)にも行ったみたいだ。
せいうちくんが「近くの史跡名跡を見ておこう」って言い出したんだろうな。
大河ドラマとかの影響もありそう。無事に描き切るのか、渋沢栄一の人生。

意外と近くて歩けるところにあった。坂は登るけど。
渋沢邸ほどではなさそうだが、立派なお屋敷。
いつか森鴎外記念館なんかも行ってみたいなぁ。

21年12月5日

毎週恒例になってきた「お客さんを呼んで千駄木界隈を散策後、鰻か穴子(この2択しかない。あっ、最近は串揚げ屋さんも候補としてあった!)を食べる会」。
今回は大冒険をした。
どこに行ったとか何を見たとかの方面での冒険ではなく、学生時代(もしかしたらその後も)につきあっていたカップルをまとめて招待したのだ。

もちろんサプライズ的な要素はまったくなく、両方に「じゃあ、もう1人はAくん(Aくん宛にはBさん)にしますね」と予告は打った。
「ご不快ならメンバーチェンジしますが」とも伝えた。
両方とも「諾」ときたのはいい感触だろう。

若さゆえに別れてそれぞれ別の人と結婚し、子供もいる。
しかし今だに互いにすれ違いの別れを惜しんでいる風情が漂う。
こんなものをセッティングして、私はいったい何がしたいのだろう。
せいうちくんにも端的に言われてしまった。
「これで何かが始まっても、僕は責任取れないからね!」
私だって取れませんとも。

そもそも別れて以来顔を合わすのが初めてなんてことはまったくなく、普段から会ったり相談に乗ったりしゃべったりLINEしたりしてる様子。
我々のようなお邪魔虫がいなくとも、会いたければ勝手に会っているだろう。
その機会を1回増やしただけの通りすがりの愉快犯で終わった感がある。

とりあえず我が家集合で、みんなで作戦会議。
しかし実体はAくんが持ってきてくれた猫マーク入りどら焼きのようなお菓子をつまみに、Bさんが持ってきてくれた珍しいビールを飲んですでに前祝い。
のんびり話し込んじゃった。


2人の仲はともかく、Bさんがこの近辺に住んでるそうなので行先のセレクトには大いに頭をひねったが、会って聞いてみたら何のことはない、微妙に近くて遠いためあまり歩いてみたことがない、どこへ行くにしても楽しみだ、とのお返事。
とりあえず初めての試みとして「岩崎弥太郎邸」にタクシーで行って、帰りはゆるゆる上野あたりを歩きながら戻って朝倉彫塑館に行き、最後は穴子で〆ましょう、という計画で。

私から見ると「うちからずっと北の方」としか認識できない「弥太郎さんち」は、お庭も屋敷もとにかくでっかい。
あいにくなことに裏庭にあたる広―い地面には重機が入ってところどころ穴を掘ってたりしてる。
単なる芝生の養生とも思われない、かと言って岩崎弥太郎さんちの庭から遺跡が出るほど掘るわけもない、はて、あのKubotaのユンボは何のために入ってるんだろうか、としげしげ見ちゃったよ。
何事もなければ大庭園であったろうに、別口の面白さを見学してしまった。

お屋敷は、朝倉彫塑館みたいに自分の靴は袋に入れて持ち歩くんだがこれはきっと単なる管理の問題なんだろう。
それを履いて外に出る機会はほとんどなかった。
なお、散歩なのに折り畳み杖を忘れた私はここの入り口で「貸し杖」を見つけてくれたBさんに大感謝。
屋敷内の階段も苦労なく昇り降りできた。

玄関ホールからして大きな暖炉が目につくが、驚くのは屋敷全体の暖炉の多さ。
弥太郎さんはよっぽど寒がりだったんだろうと想像する。
たぶん20個近くはあったと思う。
何ならひと部屋の両側に1個ずつある場合も。
森薫のマンガ「エマ」みたいにそこを掃除し、石炭を運び、火をつけるのもうんと上階の不便なあたりに住んでいるメイドさん(いや、この場合女中さんなのか)たちの仕事だったんだろう。
「サンルームは暖房の補助ともなり」と説明板に書いてあったが、そんなに寒かったのか岩崎弥太郎。
確かに石造りの家ってのは案外冷え込むものだとは思ったけどね。

あと、天井やら壁やらの凝りようがスゴイ。
特注品なんだろう、天井に張る織物に見事な刺繡を入れたり、壁を箔押しして何工程もかけたり、これは記念館にしてお金取らないともったいない。

ここでたっぷり見学をし、庭には「撞球室(ビリヤード部屋)」まであるのにきゃいきゃいし、男性軍はどちらかというと母屋とココをつなぐ地下道が気になる様子だった。
「戦時中は防空壕代わりにもしたのだろうか。何かの折の逃げ道にしては目立ちすぎる。できれば入ってみたい」とせいうちくんみたいな物騒な人がいるから、もう埋めてあるかもよ。

お休み処があり、「お抹茶セット」などが頼める。
ちょうど4人分の椅子席が空いていたので(畳は私が無理)お願いし、それぞれお抹茶セットやシュークリームやチーズケーキ、コーヒーなどを注文。
私はシュークリームにお抹茶(Hot)だ。
甘いもののあとに抹茶の苦みがさっぱりして美味しかった。

ゆるゆる歩いて彫塑館へ、という計画の下、上野公園を抜ける。
人だかりがして大声が聞こえるから、またなんかの政治的活動か?と思ったら大道芸で、声の通るおにーさんが不安定に積んだ台の上で剣のお手玉をしている。

また、行きずりの古民家を改装したギャラリーではドット絵がカメラを通すと立体感がなくなるせいなのか却って立体に見えるという現象を見せてくれていた。
ゲーム会社にいたこともあり、ドット絵に慣れているAくんには面白かったのではあるまいか。
うーん、どうしてあの塊がスマホで写すとダビデ増に見えちゃうんだろう…

いろいろ眺めたり写真撮ったりしてる間に大いに遅れてしまった。
計画変更して上野公園を出てタクシーを拾って彫塑館に飛ばしてもらったが、そして運ちゃんも刑事ものかと思うぐらい張り切ってくれたが、着いた時には彫塑館の閉館時間16時を3分回っていた。
残念!

まあBさんはお近くだからまた来られるだろうし、Aくんが喜んでエスコートするだろうし、あらまあ、私はいったい何がしたいのかしら?

Bさんが私のタイプなのを知ってか知らずか、Aくんが、
「ほら、うさこさんの好きなバームクーヘン屋さんがすぐそこですよ」と言い、Bさんには、
「うさこさんはあの店のおねーさんにご執心なんです」とささやく。
勢い、Bさんを連れて店に入る格好になってしまった。

ドアのすぐ向こうでうつむいて作業してたおねーさんは、私が引き戸を開けると「ああ、びっくりした!」と大文字で書いた顔をすぐに「あっ、いらっしゃいませ。いつもどうも」とにこやかに。
この瞬間、カワイイ女の人(主観)たちに囲まれて、幸せだなぁ。

Bさんに、
「おみやげにプレゼントしますから、お好きな味のバームクーヘンを4つ選んでください」と気前のいいところを見せつつ、陰の本命おねーさんには、
「ワタシ用に10個、別の袋に入れてください。あと、できればいつもいただく見本の生キャラメルをお客様に…」とさあんまり気前よくなさげにささやくと、おねーさん合点承知な感じで「はいっ」と奥に入って生キャラメル持ってきてくれる。
その間にもBさんセレクトの4個が決まり、袋にどんどん入る。
生キャラメルは、いつの間にか図々しく私の空間(間違ってます。わかってます。よその店です)に遠慮なく入ってきてたAくんの手にも渡ってしまった。
見かけ通り抜け目ない男だな、Aくん。

とりあえず「谷中ぎんざ」を見物してから頼みの綱である喫茶店「乱歩」に行ってみたが、本日休業!
まだ穴子屋さんの予約には1時間以上あるので、日頃、計画がうまくいかなくても全然気にしないせいうちくんが妙にがっくりしながら「どこかでお茶でも」と力なく言う。
たまたま入ったとこがお酒も飲める明るくていい雰囲気のカフェで、みんな「食前酒」と言わんばかりにビールやらワインやらを飲んだ。
ここでもAくんとBさんの過去の思い出がいろいろ聞けたことは言うまでもない。
2人の間には「昔つきあってたよね」オーラが出まくっている。
我々、ここにいていいのか?そもそもこんなこと始めてよかったのか?
2人とも配偶者も子供もいるんだぞ。

やっと穴子寿司屋さんの予約時間が近くなって、腰を上げ、店に向かう。
Aくんは前にもこちらの方に来てくれたが、その時は鰻コースだったようで穴子は初めてだって。
もちろんBさんも。
最近私が「とろける穴子寿司」を宣伝しまくってるから、日記読んでる人は結構楽しみにしてくれてるらしい。

ここは日本酒もいいようなので、私以外の3人は二合徳利とお猪口をもらって飲み始めた。
私は普通にビール。
おつまみ頼んでお通しも美味しくて、あー極楽極楽。

2人の話を聞いていると、人生は常に分岐し、そこから「在ったはずの過去」を離れて「新しい選択による新しい未来」へ踏み出すんだなぁとしみじみ思う。
それでも違う分岐の果てがどうなっているかはまだ我々に知らされてはいない。

せいうちくんがあの日、私の開いたお茶会に来なかったら、そのあとお互いに待ち伏せばっかりしてるストーカーと化したけど、どこかで会えない瞬間があって、その隙間に別の出会いが入り込んだら、彼が親の反対や説得に負けていたら、いろんな未来が無限数に広がる多重宇宙はいったいどれだけの悲劇と感激を秘めているのか。

名物穴子が出る頃にはもう全員けっこう飲んでる。
だからって乱れるAくんでもBさんでもないんだが、せいうちくんと私はすぐ乱れる。
せいうちくんがずばずば質問で切り込む一方で、私は例によって「女を口説きにかかる」。
だってBさんってインテリで細かそうなのに抜けてるとこは抜けてるんだもん。よく出てくるKちゃんを含め、そういうタイプ、大好き。
と、いくらそこがステキと口説いてるからって、二合徳利の注ぎ口に気がつかないで別のあたりから注いでるのを大声で指摘されて嬉しい人がいるだろうか。

お店が閉まる時間にはまだもうちょっとあるが、他のお客さんはみんな帰ってしまい、洗い物も終わってお店の人側としては帰りたいなぁという雰囲気濃厚な中、お茶が出て、しばらくして請求書のメモが出た。
気がつきゃ暖簾も仕舞ってるし、思わぬ無粋な長居をしてしまった。
お勘定をして、さっきの抹茶喫茶の分まで合わせて割って、1人頭5千円とちょっと。
これだけの質の穴子を食べたら、高くはないだろう。
AくんもBさんも絶賛してくれ、相変わらずこの日記は穴子日記になっている。

店を出て、Bさんは忙しいと言っていたから帰るだろうけど、Aくんぐらいはうちに引っ張って行ってもう少し飲もうと思ってたんだよね。
でも、交渉の初めから、
「勘弁してくださいよ、うち、遠いんですよ」と逃げ腰で、
「Bさんはどうするんです?」と聞きながらも結局反対の日暮里方向に去ってしまった。
残された我々はバスに乗ると言うBさんと同方向なので、バス停まで送って、乗るのを見届けて帰った。

2人きりになったとたん、せいうちくんからすごい勢いで抗議された。というか、叱られた。
「あそこでキミがAさんを引き留めずにさっさと『じゃあ我々は帰ります~』って立ち去ってたら、AさんがBさんを送って行ったかもしれないじゃない!どうして邪魔すんの!?」
「えー、だってAくんと飲んでもうちょっとBさんとのことを赤裸々に聞こうと思って…そもそもそんなマチガイのタネをまいちゃダメじゃん!」
「お互い大人なんだから、ほっとけばいいでしょ!まったく、人のことに首ばっかり突っ込んで…」
せいうちくんはいったい何がしたかったんだ?!
そもそもの最初から、我々は全然正気じゃなかったんじゃないだろうか!

というわけで家に帰って正気に戻るべく努力したけど、正気もなくしモノみたいなもんでいったんなくなるとそう簡単には見つからない。
お風呂入ってもまだ正気が行方不明で、Aくんにメッセージ送ってZOOMを申し込んじゃった。

幸い向こうは私の分まで正気で(さては私が落としたのを不正取得したな?!)、
「くたびれてもうくつろいじゃってますので」と断わってきた。
私の正気を返せ~!

いけませんね、40年近くたっていても、人の恋愛が気になってしまう。
ゴシップ好きのサガとでも言いましょうか、「もうどうにも止まらない」なんです。
今日味わった抹茶のお味でも思い出して、短い脚で座禅まがいのものを組んで、心を落ち着けて寝る
思わず長老(無職で独居なのでヒマ率高し。話好きの噂好き)にZOOM申し込んであれこれ話し込んだ、なんてのは秘密です。

あと、私はバカみたいに口の軽い大型スピーカーだけど、「これはナイショね」と言われたことは口が裂けても言わない。
守秘義務を、守るところではきっちり守らないとゴシップ好きはつとまらない。
そもそもネタが寄ってこなくなっちゃうもんね。
それにしても楽しい半日だったなぁ。
Bさんともこれからもっともっとお近づきになりたい、と家で拳を無意味に握りしめてガッツポーズを作っている不気味な私。
Aくん、Bさん、どうもありがとうございました。

21年12月6日

前のマンションでは寝室にシングルベッドとダブルベッドを置いて、せいうちくんが寝るまではダブルベッドで一緒にいて、そのあとは私がシングルベッドに戻り(iPad ProとiPad mini2つのホルダーをつけて寝ながらマンガか小説を読めるようにしていたものだから)、ひと通り読書をして睡眠薬が効いてきたらせいうちくんのベッドに戻る、という「夫問い寝」をしていた。
しかし今の仮住まいでは部屋が狭いのでダブルベッドのみ。
シングルベッドは倉庫に預けてある。

当然、新しいマンションに移ったら元のような寝室を作り上げるつもりだったのだが、せいうちくんから待ったがかかった。
「ずっとダブルベッドで一緒に寝るのが気持ちいい。キミがシングルベッドで寝落ちして朝、隣に寝てないととても寂しい。今後はダブルベッドだけで行かないか。その方が寝室も広く使えるし」と言うのだ。

確かにダブルベッドのヘッドボードの端にiPad Pro用のホルダーだけつけて、小説を読む時はminiに差し替えてもあまり不都合はない。
眠る時はわりとせいうちくん側に寄って寝るので、ホルダーも邪魔にはならない。
考えるべき課題だ。
一番の問題は「それじゃあ何のために高い倉庫のスペース代を払ってシングルベッドを取っておいたのか」という「もったいない精神」だけかも。
寝てる時にずっとぎゅっとしてもらってるのはすごく安心で気持ちいいからなぁ。

しかしこの「ぎゅっ」がくせもので、深く眠っているはずなのに自動的に私の肩に腕を回して腕枕をしてくれる。
そいで「ぎゅっ」である。
これは誰が隣に入ってきても無意識にそうしてしまうのではないかと前々から疑っており、こないだ息子が泊まりに来た時に頼んでみた。
「父さんが寝てから、ベッドの隣に入ってみてくれない?」
うさん臭そうに「なんで?」と聞く息子に私の疑惑を説明すると、
「オレはやんないよ。意味ないじゃん。やだよ」とにべもなく断られてしまった。

こういうことをずっとは黙っていられない性格なので、翌日息子が帰ってからせいうちくんに事の次第を打ち明けた。
まずは大笑いされた。
「それは息子が正解。夫婦の性的行動に子供をまき込んじゃいけないよ。やはり両親のダブルベッドは神聖なものだからね。それに、僕は眠っててもキミだって確信してやってるはずだから、試してみても無駄だよ」とこれまたド正論。

くやしいから、今度引っ越してコロナが明けて友達が泊まりに来るようになったら酔っ払った誰かを酔っ払ったせいうちくんの隣に放り込んでみないと気がすまない。
Gくんあたりがすごく適当な人材に思える。
酔っ払い加減といい、無法さ加減といい。
ああ、その日が楽しみだ。
(これを読んだGくんが絶対にうちには遊びに来ないか、泊まらないという危惧は大いにあるんだが)

21年12月7日

先週の続きで、歯医者。
15年ほど昔にややこしい治療をしてあるため、要注意な場所だ。
今度トラブルがあったら抜歯することになると思う。
歯列矯正以外で歯を抜いたことがないので、できれば温存したい。
そんな歯の根っこ、二股になったところの三角形の歯肉が炎症を起こしたのだ。
2週間前に抗生剤を注射してそのあと3日間錠剤をのむ、そんな程度ではおさまらなかったらしく、同じ治療をもう1回した。
それでやっとおさまってきてくれた、って次第だ。

それでも力をかけたり歯を食いしばったりすると痛みの初期みたいな感覚があり、大変不安。
「だいたい治ったとは思うんですが、時々不安です」と訴えたら歯医者さんは、
「ということは悪化してる雰囲気じゃないんですね。どちらかというと治る方向。うんうん。それはよかったです」と言ってまた注射で薬を入れてくれた。
今回は錠剤はなし。

「これでまだトラブルあるようならすぐにお知らせください。えーっと、うさこさんは来年1月末にお引っ越しでしたね。じゃあ、その前に1回予約を取って、歯のお掃除その他小さなところを最終調整しましょう」とのこと。
家から小さなビル3軒隣の近さにこんな親切な腕の良さげな歯医者さんがいるという幸運は、新居では望むべくもない。
そもそも家の周り徒歩5分ぐらいに商業施設みたいなものが見当たらないもん。
(隣に大病院があるが、そこに歯医者があるとしても大袈裟すぎるだろう)

下町の良さで、何でも近くにある。
それを「ホームセンターがないじゃん」と思ってしまうのは、平たくて地価が安く車文化が成立する田舎から出てきた証拠だろう。
次回が最後の予約だ。
嗚呼、またひとつ、ここでの生活が終わっていく。

21年12月8日

新マンションが完成し、内覧会が行われた。
これまでモデルルームしか見てないので、図面以外で自分の住む部屋をホントに見るのは初めてだ。
感動の対面。
同時に傷や欠陥を指摘する場でもあるため、自分らだけではおぼつかなく、不動産に詳しい友人Tくんの応援を頼む。
雨の中を現地まで来てくれて、ロビーで待っててくれた。ごめんね、待たせて。

まずとにかく部屋を見る。
前に住んでたマンションよりは狭いが、今の仮住まいよりは当然広い。
売主会社の案内の人と一緒に控えている施工会社の人も、
「お2人でお住まいですか?広すぎるぐらいですね」と言う。
まあほどほどか。
新築なのと今の1LDKとの差にちょっとくらくらきちゃった。

しかしくらくらするために来たんじゃないんだ、内装のアラを捜しに来たんだ。
なのにぼーっと洗面所の鏡扉を開け閉めしたりだけしている我々に比べ、プロのTくんはすごかった。
「ここ、床に顔近づけて向こうを見るとわかるんですけど、汚れついてますね。糊かな?」
「明らかな傷がありますね」
「あー、これはチョンボですね。扉板の端がささくれてます」
などなどと、私が1つも見つけられず、せいうちくんが2つばかり見つける間に15個以上の問題点を指摘してくれた。

その場でクリーニング担当の人が呼ばれ、床をせっせと拭いて塗料の残りなど(でも本当に光に向かって適切な角度で見ないと全然わからない程度なの)をきれいにしてくれたりして、本格的に修理をお願いするところは8カ所まで減った。
それでももう1回、確認会に来なければならないので、せいうちくん少し辛そう。
まあ、ピカピカの状態で受け渡ししてもらおうじゃないか。

その間にもSECOMさんの説明が入ったり配電盤の説明が入ったり。
これまでの生活で初めて、完全にSECOMさんにガードされることになる。
外出時など、SECOMをかけていけば扉や窓が開けられたら警報が鳴り、確認の電話が入り、警備員さんが駆けつけてくれる。
1人で家にいる時でも同じことだ。
押し入られたら警報が鳴るし、いざとなったら緊急ボタンを押す手もある。
きっと我々は何度も間違えて自分たちの出入りで警報を鳴らしてしまうだろうが、確認の電話がかかってきたら「間違えました」と謝れば大丈夫みたい。

友人の家でしか見たことがなかったカラーのハンズフリーのモニター、外からチャイムを押した来訪者の写真を数枚撮影してくれる。
不審者対策もばっちりだ。

室内をひと通り終わって、共用部分の説明。
地下の自転車置き場からはエレベーターで出入りするらしい。
すでに電動自転車用の置き場を2台分確保してあるが、出かける時は1人ずつ押して出なきゃいけないなぁ。
車を売ってしまいうちではもう用のなくなった外のタワー式駐車場、自転車の出入りの時に気をつけてくださいって。
まず電動自転車を買うところから始めなくっちゃ。

ゴミ置き場は今日は事務方の詰め所になっていたので、場所の案内のみ。
郵便受けがすごくて、名前も何にも書いてない銀色の小さな扉がびっちり並んでいる一角がある。
郵便ボタンを押してキーをかざすと自分ちのボックスがぱこーんと開くのだ。
荷物も同じく、荷物ボタンを押して以下同文。
もっとも宅配ボックスは個人にひとつずつ振り分けられてるわけじゃないから、どこが開くかわからないけどね。
もちろん部屋のインターホンも点灯してお知らせしてくれるから荷物の出し忘れがない。
実は今住んでるとこ、お知らせランプがないため、うっかり配達状を見逃すといつまでも宅配ロッカーに入れたままにしちゃうんだ。
うちも4日ぐらい本を閉じ込めて占領してたことがある。
なので不在連絡票に「ボックスがいっぱいなため、持ち帰ります。再配達の連絡をお願いします」って紙がよく入ってる。

はあ、しかし、せっかく表札少し凝ったのに、表側からしか見えないのか。
自分じゃなかなか見る機会なさそう。
買う時にそんな仕様はなかなかわからんからねぇ。

そのあとは自由に採寸する時間をもらって、部屋のあちこちを採寸し、せいうちくんが図面のコピーに赤ペンで数字を書き込んでいく。
内部が複雑な形をした納戸などは、測りあぐねた挙句、
「もういいっ!荷物を持ってきてから考える!」となる。

やはりリビングは思ったより細長い。
キッチン部分が少し出っ張っているので、反対側の奥の幅より10センチ短い。
反対側には無事に予定通りの180センチのテレビラックと80センチ幅の飾り棚が置けそうだが、食卓は幅120センチのやつをカウンターに垂直の角度で置くと両端を通る時少し窮屈。
カウンターの下に一部もぐらせて窓側の余地を大きく取ろうかな。
でも、それだとテーブルの反対側に行くのにぐるっと回らなきゃいけないもんな。面倒かも。

リビングにくっついてる4畳半ほどの空間は、会議室かなんかのように、日頃は寄せてある4枚の可動式パネルを、レールに沿わせて動かすことで仕切ることができる。
息子とカノジョが泊まりに来たら、いや長時間遊びに来ただけでもこの「部屋」を作ってあげよう。
人のうちにずっといる時って、逃げ場がなくて緊張するもんね。
食事の支度する間、そこでゆっくりしてもらうとかに使えそう。
もちろんお泊まりも大歓迎だ。

普段はあまり何も置かずに開けておくつもりのこの部屋だが、シネマルームにしようとの野望はまだ消えておらず、西側の壁をスクリーン用の壁紙で貼ってもらう予定。
Amazonの安売りで1500ルーメンの明るい4Kスマートプロジェクターを買ったので、それでサブスクとかDVDを観る予定。
機械が賢すぎて使いこなせていないため、今のところ苦労が多い。
しかし、新しい家で安楽椅子で100インチの映像を観るためにせいうちくんに頑張ってもらおう。
(すぐ隣のリビングに65インチのテレビがあると思うと多少モチベーションは下がるが、昭和生まれの人は何でも壁に投影したいんだい!幻燈会から刷り込まれた野望なの!)

家具のことは引っ越してから考えることにして、とりあえず採寸をすませて、いろいろ説明受けましたのチェックをもらってアンケート書いて、いったん終了。
今日の殊勲者Tくんにお礼の食事をおごらなきゃ。
駅ビルの中にあるファミレスに毛が生えた程度のイタリアンで全然かまわないそうなので、3人でそこへ行く。

お2人様セットに単品を加え、パスタ2種とピッツァ1枚、サラダと前菜をもらうことにし、男性軍はワインの小ボトル、私はアイスコーヒーで「乾杯!」。
「いいおうちですよ。躯体がしっかりしてますからね。ここの駅前はこれからもっと人気が出るでしょうし」とプロが言うととっても安心で嬉しくなっちゃうじゃないか。
食べながらいろんな話をするうちに、彼らはどんどん飲み物のお代わりを飲み始めた。
ビールとワインをちゃんぽんに、何杯ぐらい飲んでたかなぁ。
最初からフルボトルにしておけばよかったかしらん。

Tくんは前のマンションを買う時も恩人で、当然のように真ん中あたりの3LDKを買おうとしていた我々に、全体図面を見ながら、
「もう600万頑張って、この4LDK角部屋にしませんか?ずいぶんお値打ちですよ?」と勧めてくれた。
無理して払えなくもない額だったので、そっちを買い、LDK隣の和室をぶち抜いてリビングを広く取った3LDKにして、18年間大変快適に幸せに暮らしてこられた。
何もかもTくんのおかげだ。

せいうちくんのクラブ関係の友人はいろいろな職業に就いているが、彼ほど得体のしれない、いや失礼、謎な人もいない。
本人もニコニコと「いえ、あっちゃこっちゃいろいろやってるだけで」と笑顔で、それ以上は語らない。

2人が飲みまくっているので私はドルチェに走り、「クリスマス特別デコレーション アフォガード綿菓子掛け」をいただいた。
この白い物体が、横のピッチャーに入っているエスプレッソをかけると見る見るしゅわしゅわと溶けてなくなる。
残るのはバニラアイスの上のザラメの痕跡だけ。
「結婚式なんかのアトラクションにいいですね」と言うTくんよ、「恋はこのようにあっという間に消えて、残るはバニラアイスのように芳醇な結婚生活です。でも人生は溶けて流れりゃみな同じ」って解説入れたくなるじゃないか!

そんな彼と「大野雄二80歳記念カリ城上映会コンサート」に行くことになった。
いや、そういうものがあるってよ、ってこないだ言ったら、大スクリーンでクラリスが観られると思うだけで失禁しそうな状態で、同じマニアのN野さんに連絡してたせいうちくん、「今回はちょっとパスしておきます。引っ越し前夜に無理はしないようお勧めしますよ」と言われてた。
そうなの、1月27日って、引っ越し前夜なんだよ!

まあ引っ越しが1日早まったと思って1月27日の朝に引っ越せる状態になってりゃいいわけだから、この際ご夫婦、特に奥さまがカリ城の大マニアであるT家を誘ってみては?と横からささやいたら、Tくんも大興奮、
「ちょっと待ってください、ニョーボに電話しますんで」とたちまちの連絡、快諾を得たらしい。
「ニョーボの声がひっくり返ってました!」
私はパスしようと思ってたけど、T夫人が来るなら話は別だ。
もう15年ぐらい会ってない。
一緒に美輪明宏のコンサート行った仲なのに。

こうして楽しい次の約束もでき、千駄木の最後はあくまで劇的に終わりを告げそうだ。1年間の旅行のつもりだったんだから、最後はホテルに泊まって、朝、大手町のオフィスで新居のカギを受け取って引っ越し現場となる自宅へ急ぐってのも我々らしいんじゃないかな?

いずれにせよ、Tくん、どうもありがとうございました。
息子の将来まで気にかけてくれて、いろいろ細かい心づかいをいただき、感謝の念に堪えない。
「カリ城情報」とチケット取るぐらいのささやかな恩返しで許して。貧者の一灯でございます。

21年12月9日

さて、昨日の計測会で大変困ったことがわかった。
約6畳の洋間にダブルベッドとシングルベッド、そしてベットサイドチェストと洋服ダンスを持ち込むのは無理だ。

完全に無理というわけじゃないんだけど、例えばベッドの足元の歩ける空間幅が30センチしか残らない。
ベッドという低いもののことだから足の部分だけ通れれば膝より上はなんとでもなるもんだが、それにしたって狭い。蟹の横這いになってしまう。

それ以外にもぎっちぎちに置くことになるからシーツ交換とかに難儀するのは目に見えている。
ああいうのはベッドやチェストの間に少し隙間があってマットレスをずらせるからできることなんだ。

というわけで今、私はシングルベッドを置くことをあきらめざるを得ないほとんど瀬戸際まで来ている。
タブルベッド派のせいうちくんが喜んでいるのが悔しくて、それだけのためにベッドだらけのぎっちぎちの部屋を作ってやろうかと思うほどだ。

そもそも、どっちかが風邪ひいた時とか疲れてる時とか眠りにくい時とかケンカした時とか、避難場所としてのシングルベッドがあってこそ健康と平和が守られるってもんじゃないか。
絶対同衾主義、粉砕!

だいたいさぁ、1年倉庫に預けててそれなりにスペース取ってお金かかってたシングルベッドを、今になって捨てるなんて…捨てるにも費用が掛かるんだよ?
何とか使いたいのが人情じゃないかぁ!

21年12月10日

隣の隣のビルの1階が整体院で、膝の痛い私は始終お世話になっているんだが、その整体院を悲劇の大波が次々と襲った。

まず、一番の売りである「都内唯一の温泉足湯」の機械が故障したらしい。
「すみません、うさこさん。今日は足湯お休みなんです」とおにーさんがしょげていた。
いつもだと「10分足湯→10分電気治療→15分ほど施術(要するに、揉む)」なのだが、最初の工程が抜けるのか。
私はかまわないけど、いつもこの時間割に沿ってお客さんの流れをさばいてるわけだから、再組立てが大変だろうな。

もうひとつの悲劇は、施術の時におにーさんが悲しそうに語った、「鍼も打てる鍼灸師兼整体師」のおにーさんがひどい捻挫で、ギプスをして松葉杖使ってる状態なんだそうだ。
もちろん今日はお休みだし、復帰までに1週間以上かかるだろうとのこと。

ここはチェーン店なので湯島とか近くから応援を呼んで何とかしているようだが、基本は私を担当してくれてるおにーさん一人で回してる雰囲気。
捻挫したおにーさんも店を切り回してるおにーさんもお気の毒。
早い快癒を祈る。
「紺屋の白袴」なのか、出勤すると仲間が治してくれるのか、その辺は微妙な、整体院という存在。

おととい聞いて、今日は臨時休業。
足湯の修理をしているんだろうか。
捻挫のおにーさんもゆっくり休んでほしい。


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