羅生門 芥川龍之介 読書感想文

中学生か高校生か、時期は不明確だが教材として読んだことは覚えている作品。薄暗く雨降りの情景だったり、死体が出てきたりと、なんとなくおどろおどろしい雰囲気は覚えており、教科書に載っている作品なのにそこそこ面白かった印象です。改めて読み直してみても、読みやすく興味深い作品である事は変わりませんでした。

まず雨の降る悪天の中、荒廃した門の上階にうち捨てられた死体の山、という舞台が興味をそそられます。そこで途方に暮れる下人と怪しい老婆が邂逅するわけですが、そんな世界に読者を引き込む描写がとにかく素晴らしいと感じました。赤く膿のあるにきびを持つ下人、 背の低い猿のような老婆といった怪しい人物描写が、怪しい舞台設定と相まって物語にますます深みを与えます。下人の心情の変化も面白く、最初は多少の正義感があったものの、老婆との問答によって生きるためには他者をおとしめることもいとわない、という正統性を得て躊躇なく悪事を働くという展開。老婆も抵抗し、開き直ったが故にかえって酷い目にあい、目も当てられない結末でした。

短編ながらも、想像をかき立てられる表現と人間の嫌らしい部分がぎゅっと詰まっており、なるほど、これぞ芥川龍之介といったところを感じました。

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