どうしてトランプを支持するの?共和党員の声を聞いてきました
公開討論会から一夜明け、ユタ州ソルトレイクシティを後にして昨日からテキサス州ダラスにやってきました。州が変われば国が変わったかのように、人も言葉も変わります。見るからに黒人の方が増え(6〜7割が黒人の方のように感じます)、スペイン語を話す方も急激に増えて、案内板は英語の他にスペイン語もあります。そして、本当に南部英語に慣れなくて、戸惑いました。笑
先日の公開討論会をまとめた記事がとても多くの方に読んでいただけ、さらに調子に乗って書いた関西弁記事のほうも予想外の反響をいただいて、今日からの取材に一層の気合が入りました。読者の方がたくさんいてくださるのは本当に励みになります。
さて、今日はテキサス州ダラスという街にやってきているのですが、ここはケネディ大統領が暗殺された街として、政治的にも歴史的にも重要な街です。
そして、共和党支持者が多い街としても有名で、大統領選挙ではドナルド・トランプが勝つとされる州です。地図真ん中下の方にある「TX」と書かれているのがテキサス州。赤色が共和党支持州を表すのですが、真っ赤でしょ。笑
さて、ここに来た理由はずばり「共和党員の話を聞きたい」から。早速ダラスの共和党事務所に行ってまいりました。
トランプさんがなんか可愛い事務所
やってきました、共和党事務所。入り口にちゃんとトランプさんとマイク・ペンス副大統領候補の名前入りステッカーが。ちょっと可愛いですよね、トランプさん。笑
実はダラスに来てからというもの、アジア人には一人も会えず、圧倒的な黒人比率で、駅で「アジア人、1ドルくれ」と声をかけられ続ける、少し心細い州。しかも「移民は追い返せ」というトランプさんを候補者に選ぶ政党だということで、こんなアジア人一人が突っ込むのは少し勇気が要りました。
しかし、入ってすぐにとても陽気な方が、
「ようこそ、こんにちは。ボランティアですか?」
と声をかけてくださり、
「共和党の方に大統領選挙の件で少し取材したいのですが。」
というと、
「もちろんだよ、ぜひこちらへ」
ととってもフレンドリーに出迎えてくれました。
左から共和党ダラス事務所のブライアンさん、トムさん、そしてクリスティーナさん。
「もちろんトランプに入れるわよ!」
インタビューにはクリスティーナさんが答えてくれました。
−クリスティーナさんはどうして共和党でお仕事をされているのですか?
私はもともとキリスト教徒で、自分の道徳観やイデオロギーがとても共和党に近かったの。それで家も共和党支持だったし、そのまま共和党の州議会議員をサポートしているわ。共和党っていうのは、小規模経営者がその支持層にとっても多いんだけど、それは共和党が「自己責任」というのを根底に置いている党だから。自分たちが努力すればしっかり報われるし、それを怠ればそのせいで起きることも自分の責任。社会保障に力をいれる民主党なんて、私は支持できないわ。
−やっぱりトランプは好きですか?
私は去年8月、トランプが共和党の予備選挙に出るって言ったときからトランプを支持してきたわ。今回ももちろんトランプに入れるわよ。でもね、実はテキサス州の予備選挙ではテッド・クルーズが1位になっているの。トランプは確か2位。
そのせいで、実はテキサス州では「トランプなんかに入れるくらいだったら投票に行きたくない」という人も結構いたりするの。民主党は予備選挙でいくら候補者同士で戦っても、一般投票ではちゃんと統一候補にみんな投票するよう統一させるのがとても上手いんだけど、共和党はたまに支持層が割れちゃったりすることがあるから。今回きちんとトランプに入れてもらえるように有権者に働きかけるのが私達の仕事ね。
選挙キャンペーンのための専用アプリがある
−具体的にはどういうことを?
選挙キャンペーンで行うことは「電話掛け」と「戸別訪問」の2つがメイン(アメリカの選挙では戸別訪問が認められている)。「グラスルーツ(草の根)」キャンペーンが本当に大切で、たとえば3人の党員が約20000戸の戸別訪問をする。そうやって一人ひとりに共和党の理念や候補者の魅力を伝えていくの。
ちなみに今の選挙戦はすっごい進んでて、党員やボランティアはiPhoneかiPadを持って、専用のアプリ使いながら戸別訪問するの。どこがまだ一度も訪問したことないのか、どういう人が住んでて、断られたところはどういう断られ方をしたのかなどを確認しながら訪問する。そして訪問が終わったらまたそのアプリに記録を残していくの。そうやって個別にリーチするためのキャンペーン戦略を練り上げていくのよ。
もちろん、怒られることもあるし、無視されることもあるんだけど、いつも候補者と政党のパンフレットだけは置いていって、「少しでも気が向いたら見てください」と伝える。心が折れそうでも、街を良くするためには頑張れるわ。
−トランプさんは人種的にかなり微妙な発言もされていますが、それはテキサス州ではどう受け止められていますか。
笑。
そうね、彼はよく人種差別的な発言するもんね。テキサス州はメキシコに近くってラティーノ(最近はヒスパニックではなくこの使い方がされるよう)も多いし、もちろん黒人も多いわ。だからすっごく人種問題はセンシティブな話題で、気を遣うことも多いんだけど、このあたりはもう昔からそういう社会だから、トランプが何を言おうとあんまり関係ないのよね。私たち党員も対応の仕方みんなわかってるし。毎日そういうディール(対応)の連続よ。
ちなみに、共和党にもちゃんと多様性あるのよー!女性議員が15名、ヒスパニック系の議員が8名、10人のアフリカ系アメリカ人議員、そして2人はアジア系アメリカ人。共和党は白人主義だって言われるけど、そんなことはないんだから。
−トランプさんのどういうところに惹かれるんでしょうか。
まずは圧倒的なビジネスの能力。彼はこれまでにビジネスマンとして成功してきて、彼なら国家経営も任せられると感じた。
そして、彼は私たちが言ってほしいことを包み隠さずに直接言ってくれる。他の政治家と違って隠し事しないから、彼の言うことは信用ができるの。
彼はたまに行き過ぎた発言をするけど、それはその裏返し。おもったことを隠さずに言っていない証拠よ。
−今回の公開討論会はどう感じましたか?
トランプがよく頑張ったわ。初めてのことだから前半少し緊張してるかなとおもったけど、後半に連れてだんだんトランプのペースになってた。ガツンと言ってくれたわね。言ってほしいことをいってくれた。
正直、司会とか構成とかはちょっとヒラリー寄りでバイアスがかかってるようには感じたわ。トランプを馬鹿にしたような雰囲気を作り出そうとしてたという意味で。
でもヒラリーもずっと堂々としてて、トランプが言ってるのをうまく切り返したりしてたから、あれはあれで作戦成功って感じかしら。結局トランプもヒラリーもどちらも自分たちの支持層にアプローチして、ちゃんと自分たちに投票するように意思を堅くさせたってところね。逆にあの討論会で無党派層がどちらかに入れようとおもったり、あるいは支持を変えたりはしないと思うわ。
−ありがとうございます。では最後に「アメリカ国民として民主主義は本当に良いものですか?」ということを質問させてください。
…。難しい質問ね。
でも、答えは「Yes」よ。民主主義は良いものです。
これだけ大きな国が民主主義で成立してる。州レベルでは民主主義はとてもよく機能しているし、住民自治が進んでいます。
でも、国については過去8年間は最悪だった。民主主義とは呼べないものが横行してたわ。黒人初のアメリカ大統領は到底民主主義をしたとは思えない。彼はこの国を社会主義国家に近づけようと、社会保障を厚くしようとしたり、宗教を教育の現場から離そうとしたり。課税もするし。
私がトランプに入れようとおもっているのは、彼なら本物の民主主義を取り戻してくれると信じてるから。一人の男がホワイトハウスを牛耳る政治から抜け出したいの。
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以上がクリスティーナさんへのインタビューでした。
オバマ政権の業績が伝えられる日本にいては想像もつかない意見がたくさんあって、僕自身もインタビュー中何度か戸惑うほど。
ただ、あまり政策的な話が出てこなかったのが印象的でした。「直接的な言い方をする」、「嘘をつかない」、「国家も経営できるでしょう」などのイメージ論が多かった。やはり政策ではなく人格や人柄、雰囲気などでリーチする戦いなのでしょう。政策を理解し政策に票を投じる人の割合というのはどれほどいるのでしょうか。日本でもそれほどいないですが、アメリカの党員もこういう感じだとすると、これって相当低い割合かもしれないと感じました(党員だからむしろ政策云々関わらず、投票先決めててイメージ論を語っているのかもしれませんが)。
もちろん、これは50州ある中の一つの州の共和党員の方へのインタビューですから、ミクロの事象をマクロで捉えてはいけません。ただ事前に予習してきた書物や、これまでの報道で見てきた「共和党支持者」の声とほとんど同じだったので、おそらく一般的な共和党支持者とそれほどかけ離れていないのだと思います。
以上、共和党員の声でした。明日は敵地テキサスで頑張る民主党陣営の取材に行ってまいります!
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