素敵な日

先日、11歳年の離れた従妹がやってきた。
大学進学のために新幹線で上京するついでに大阪で遊びたいというので了承したが、なんと5日もうちに泊まりたいという。
長いな、と正直思ったが、生まれる前から知っている彼女が同居する祖母からの攻撃に耐えて無事公立大学に合格した日のことだったので、お祝いも込めて了承したのだった。
どこに行こうか、何を食べようか、ユニバは休園中だしイマドキJKが喜びそうなスポットや映えるカフェはどこだろうかと考えに考えていた。
ところが、彼女がやってくる2週間ほど前になっていよいよコロナの野郎が身近に迫ってきたため、叔母と相談して1泊2日に変更となったのだった。

いよいよ翌日に従妹がやってくるという日、客用布団を干したりいつもより念入りに掃除をしたりしてワクワクしていた。
彼女の方も同じだったらしく、とは言っても、彼女の場合は大阪に遊びに行けることよりも「やっと祖母のいる家から抜け出せる!」と言うことのほうが圧倒的に嬉しかったらしい。
夜遅くに投稿されたインスタのストーリーには「明日になればサヨナラだ」という文章とともに、Mrs.GREEN APPLEの『僕のこと』という曲をつけていた。
「ああ なんて素敵な日だ」という歌詞に思わず声を上げて笑ってしまった。
11年前の私も彼女と同じ思いを抱いていた。

翌日、新大阪に迎えに行くと鮮やかな黄色いキャリーケースを引いて彼女はタッタッタッタッと小走りで改札から出てきた。
黄色は彼女が大好きなアイドルの担当カラーだ。
私が大阪に出てきた時も、当時好きだったアイドルの担当カラーにあわせて真っ赤なキャリーケースを引いていたのを思い出した。

1駅移動し、梅田でキャリーをロッカーに預けて彼女が行きたがっていた大阪限定の某店に足を運んだ。
道中、ぽつりぽつりと話をした。
なんとか挙行できた卒業式のことや、大学の入学式がなくなったこと、海外の大学に進学する友人がギリギリ入国できたが寮で隔離措置になったこと。
そして、泣いて別れを惜しむ祖母に満面の笑みでサヨナラしてきたこと。

偏屈な祖母との生活はさぞ辛かっただろう。
南九州の田舎に住む、今年90歳になった祖母。
私も祖母と半年だけ暮らしていたことがある。
今では帰省のたびに笑顔で話をするが、あの時の恨みは忘れずにいる。

私と従妹は11も年が離れているのに似たところが多い。
祖父が違うのに顔はそっくりだし、好みも似ている。
だからついつい甘やかしてしまう。
私の大学生活は悲惨だったから、同じ轍を踏まないように手助けしたり楽しい思い出を残してやりたいと勝手に思っている。

そんな彼女と私の大きな違いは、他人への気の遣い方かもしれない。
相手がどう思うかを想像してあれこれと悩む私に対し、彼女は相手に「大丈夫?」と気遣いながらも自分の気持ちや考えに従ってスパッと選択をしていく。
「また遊びに来てね」という私に「ありがとう」ではなく「もちろん!」と返事をよこしたり、恥ずかしげもなく「好き!」「嬉しい!」「楽しい!」と感情を全身でストレートに伝えてくる彼女は眩しい。


しっかし、コロナの野郎、本当に憎いな。
はやく終息してくれ。

そして彼女の新生活が、幸多いものになりますように。


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