折々の漢字――「今年」は出題できて「今宵」は出題できない理由
小中学校で漢字を学習するときは、教科書本文の中でその漢字が初めて使われたときに、本文下段などに初出漢字であることが示され、学んでいきます。
漢字ドリルなどでは、その初出漢字を学ぶときは、特殊な使い方を除いて、本文での読み方や熟語をそのまま読み書き問題として出題することが普通です。
例えば「路」という漢字を初めて学習する場合、
ある教科書で「道路」として初出したのであれば、その教科書に沿った漢字ドリルでは、読み書き問題は「道路」になります。
別の教科書で「通学路」として初出したのであれば、そっちの教科書に沿った漢字ドリルでは、読み書き問題は「通学路」です。
ところで、中学では、どの教科書でも「走れメロス」が掲載されています。
「走れメロス」には「今宵」という漢字が使われているので、「宵」という漢字が「走れメロス」で初めて出てきた場合であれば、漢字ドリルの読み書き問題では「今宵」が出題となるはずです。
実際、そうやって問題を作ろうとしました。
しかし、とある理由で「今宵」の「今」のほうが出題できないことが分かったのです。
なぜか。
それは、常用漢字表には、「今」に「こ」という読みが入っていないからです。
「今」は、常用漢字表には、「コン」「キン」「いま」の読みしか入っていません。
常用漢字表に読みが入っていなければ、小中高ではその読みをしっかり学習する機会はありません。
そのため、「今宵」で出題するにしても、「こ」は学習していないので、「今」には「こ」というルビをつけて、読み書きさせないようにしなければなりません。
でも、「今宵」って学習したことがないのにすんなり読めますよね。
どうして「こ」という読みを習ったことないのに読めるのでしょうか……?
それは、「今年」の存在があるからです。
「今年」と「今宵」の扱いの違い
「今年」は、「ことし」と読むことができます。
これは小学校でしっかりと学習されます。
「今」の「こ」という読みが学習されているじゃないか! と思われるかもしれませんが、違うのです。
これは、「今年」は「ことし」という熟字訓で学習されるのです。
「熟字訓」とは、漢字の1つ1つに読み方をあてるのではなく、熟語単位で訓をあてたもののこと。
「今」と「年」を分割させることなく、「今年」で「ことし」と読む、とするのが熟字訓なのです。
「今宵」は熟字訓ではないので、「こよい」を学習することはできません。
「今(こ)」と「宵(よい)」という読み方で考えると、
「今(こ)」と「年(とし)」で「今年」を形成させてもいいと思うのですが……。
そのあたりの、熟字訓といっても漢字単字単位で読めるのでは?疑惑というのは、ほかの熟字訓にもあるかなーと思います。
「今年」が熟字訓になって「今宵」がならなかった理由って、何なんですかね。
常用漢字表制定時は「今宵」という表現は一般には使わなかったから熟字訓にならなかったということでしょうか。
でも、いまは古語的な雰囲気を出すために、あえて使われることも多いですよね。
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