the BODY vs 最強女子
ジャスコを改装したイオンではなくオープンから数年のららぽーとにすればよかった。
少し遠いのがネックだが、ららぽーとにはFLYNG TIGERもある。
対してここはどうだ、衣料品売り場にデカデカと書かれた「G.G.」の文字。シニアをメインターゲットにした郊外のイオン。
何の話かって。
立てこもる場所だよ。
死人から逃げて立てこもる場所はショッピングセンターと相場が決まっている。
生者の肉を噛みちぎる死者が今、イオンの外を彷徨っているのだ、うようよと。
半日前に集団で脱出していったG.G.達はどこかへ辿り着いただろうか。
妙に静かだ。
西日射し込む1F、窓に面したKFC。そのカウンターに身を隠し外を伺う。
足を引きずり首をぐらつかせながら、カクン、カクン、と歩く影がひとつ。
あれは。
FLYNG TIGERで働くオシャレ男子。俳優の田中土に似ているメガネ男子。
屍体になってもメガネとはお友達。
土くん……
ゾンビになってしまったのか。
でもカッコイイ。
良くない考えが頭をもたげた。
イケメンゾンビとキラキラ女子が恋愛する映画を見たばかりなのだ。(『ウォーム・ボディーズ』2013・米)
ゾンビとの恋愛、ありじゃない?
そう考え出したら止まらない。
フードコート横の非常口を管理人室から拝借した鍵でそっと開ける。
隙間からパサパサになったフライドチキンを差し出して上下に振る。
食べたくなるなるケンタッキー。
土くんが気づいた。
こちらへ来る。
非常口目がけて素早い動きで走り込んでくる。
あー、あれか。ここ走るゾンビの世界ね。
扉をくぐる土くんをかわす。
ゾンビも急には止まれない、前のめりにつんのめる姿を見ながら素早く非常口を施錠する。
土くんが振り返る。2人の目が合う。
恋がはじま…… らなかった。
土くんが牙を剝く。
来いや。捕まえて飼ってやる。
こちとら霊長類最強女子と世界に讃えられた女子だ。
私はレスリングの構えをとって、土くんを睨みつけた。
【続く】
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こちらは「第2回逆噴射小説大賞」応募作品です。
胡乱な小説書くの楽しいな。
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