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少女たちは、1万円の薬を買えたのだろうか


緊急避妊薬、というものがある。

緊急避妊薬。アフターピルとも呼ばれるこの薬は、避妊に失敗した時や性被害にあった時に、72時間(3日)以内に内服することで、約80%の確率で妊娠を防ぐことができる。

望まない性行為や妊娠から、女性が自分自身の身を守る、数少ない、おそらく唯一とも言って良い手段だ。

この緊急避妊薬が日本で認可されたのは2011年。たった9年前だ。


日本初の緊急避妊薬「ノルレボ錠」が発売 / 日経メディカルオンライン


それまで日本では、女性が自ら妊娠を防ぐ手段がなかった。レイプされた女性は、ただただ「妊娠していませんように」と祈るしかできなかった。

たった9年前まで、セックスにおいて、女性は無防備だった。


9年前、私は学生だった。


当時、私にはすでに交際していた男性がいて、性交渉も何度か経験していた。”望まない妊娠”から自分自身を守る手段がほとんどないことにも気付いていた。

だから緊急避妊薬の国内認可の知らせは、とても嬉しかった。

そして続いて、衝撃を受けたのだ。


緊急避妊薬の薬価が1万円もする、ということに。



1万円の薬。


1万円の薬。

それを知った時、「本当にこの薬が必要な人は、1万円を工面できない人だ」と思った。

望まぬ性交渉、あるいは妊娠。それは誰にでも起こりうるものだ。

それでも、そんな状況が起こりやすい人、というのが存在する。

虐待で自宅に帰れない人。
身体的・経済的 DVを受けている人。
初等教育さえも十分に受けられない人。
医療や情報へのアクセスが乏しい人。

そんな人が、果たしてこの1万円を工面できるのだろうか。

性暴力に遭った時、ボロボロの体と精神状態の中、自力で情報を検索し、緊急避妊薬という存在を知り、医療機関に連絡をとり、1万円以上する診察料を工面して72時間以内に緊急避妊に辿り着けるのだろうか。


私には、到底不可能としか思えなかった。


まともな性教育がされていないこの国で、「外に出せば大丈夫」という嘘の情報が漫画やAVで氾濫するこの国で、情報や福祉や金銭的な支援から遠くにいる人がどうやってこの薬にたどり着けるのだろうか。この世で唯一、女性がセックスから自分の身を守れる薬を、手に入れることができるのだろうか。


仮に10代の少女がいて、その子が緊急避妊薬を求めたとする。

性暴力に遭うことは絶対的に悲しいことで、そんな不幸は誰の身にも起きて欲しくないと考えている上でのことだが、それでもその状況で、緊急避妊薬を求めて医療機関に受診できる子は、不幸だけれども、助かるチャンスがあるのだと思う。


親と話をして、お金を用意するかもしれない。
信頼できる友人を頼るかもしれない。
アルバイト先で、ちゃんとした大人が助けてくれるかもしれない。
自分のスマホで通信量を気にすることなく、情報を得るかもしれない。


社会や人とどこかで繋がっている人は、きっと助かるチャンスが残っている。(もちろん、性暴力の悲劇は絶対になくなってほしいと願っているし、性暴力でもまだマシだったなどという意図は全くない)


けれど1万円を用意できない人には、それがない。

そんなふうに支えてくれる人は、きっと、ほとんどいない。

その人たちにも同じように、望まぬ妊娠から身を守る権利があり、そして等しくその方法と手段が与えられて然るべきなのに、それがない。


薬価1万円の薬。

必要な人はたくさんいて、もっと安くできたはずの薬。

どうして、そんな中途半端なものにしてしまったのだろうか。



一人でも多く、緊急避妊薬が届く様に


私は、誰しもが「望んだ時に妊娠をし、出産をする」権利があると信じている。妊娠も、出産も、緊急避妊も、そして中絶も、等しく女性に与えられた権利だと考えているし、社会の仕組みとして、この世に生まれてくる生命は全て祝福され、そして大切にされて欲しいと願っている。


だからこそ、必要な人に緊急避妊薬が届いて欲しい。


緊急避妊薬は、受精卵が子宮に着床するのを防ぐ効果があるとされている。72時間以内に内服することが必要で、妊娠予防率は約80%だ。内服までは早ければ早いほうがいいとされている。自費診療になるため健康保険証はいらない。保険証を取り上げられていても、産婦人科を受診すれば処方してもらえる。救急外来でも良い。ただし診察料は、薬代も合わせて12,000円〜20,000円。海外ではもっと安い。



#緊急避妊薬を薬局で


今、緊急避妊薬を薬局で処方できるように働きかけている人たちがいる。薬にアクセスしやすくなれば、必要な人が72時間というタイムリミット内に内服できるチャンスが増える。そしてこの活動をきっかけに、日本だけが異常に薬価が高いことにも注目されている。


緊急避妊薬の国内認可から、ようやく9年。

その間、少女たちは1万円の薬を買えたのだろうか。





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緊急避妊薬については、こちらのnoteでも書いています。もしよろしければ、ご覧ください。


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