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海堂尊「カレイドスコープの箱庭」

海堂尊「カレイドスコープの箱庭」読了。

今回は、事件としては小さく、病院内部の病理医の誤診の有無について淡々と。

日本の医療現場では、金にならない解剖や病理診断が軽視されているという問題提起。

文庫は375ページあるのに話は283ページで終わり、残りは「作品相関図」「桜ノ宮市(物語の舞台)年表」「海堂尊ヒストリー(後半)」でした。

…人体解剖の業務に勤しむうちに解剖の欠点に気付き、Ai=オートプシー・イメージング(死亡時画像診断)なる概念を樹立しAi学会創設、他の医学会に社会導入を提唱するも玉砕。ふてくされて小説を書き上げ「このミステリーがすごい!」大賞に応募したら大賞受賞、海堂尊を襲名。…

P291

それにしても死体を画像診断する、という単純で反対者のいない優れた発想を世に広げようとしたら、かくも不毛な反発と豊穣な世界が目の前に広がっていくだなんて夢にも思わなかった。

それとうらはらに広大な物語世界を作ることが、細密画を描くようなかっきりした論理展開を必要とするなんてことも思いもしなかった。

P375

架空の物語世界を通して医療問題の認知を広げ、世論の支持を持って現実世界を変えていく…って、面白いですね。


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