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誰にも負けないもの

「犬派ですか猫派ですかって聞かれるより嫌い」

ドラマで耳にし、苦手な質問を思い出しました。

「これだけは誰にも負けない、というものを教えて」
ってやつです。小学校の自己紹介で「好きな食べ物は」みたいなテンションで聞いてくるけど、オリンピック選手じゃないんだから、「誰にも負けない」なんてもんを求めるなよ、と思っていました。

小学生の私は、ピアノが弾ける、読書が好き、作文が得意、など教師垂涎の特徴(多分)をいくつか持っていました。でも、たかが知れています。ピアノのコンクールに出たこともなければ、小説を発表したわけでもありません。それどころか隣のクラスのYさんやKくんの方が、おそらくピアノは上手でした。

「得意な何か」を「誰にも負けない何か」と言うことは、残酷な勝負の世界で「得意なもの」の価値が下がるように思えました。

サッカー、とか、バスケ、とか、得意なスポーツを書く人以外に、「好きなアイドル」を書く人がいました。

誰それを好きなのは私がイチバン、と強く思うことは、同じ主張の人と仲良くなるんでしょうか、それとも争うんでしょうか。仲良くなれるんならいいけど、じゃあその「イチバン」っていうのは何を意味するんでしょうか。

「負けない好き」「イチバン好き」というのは、すごく、怖いことに思えます。それは、もしかすると、私がどこかに「イチバン好き」を隠し持っているからかも知れません。それで、別の誰かの「イチバン好き」を刺そうとする自分がいるからかも知れません。

今でも、教室の壁に「自己紹介カード」はあるんでしょうか。
今も、あの質問はあるんでしょうか。

ちなみにわたしは、犬も猫も好きです。鳥も好きです。毛か羽の生えている生き物は大体好きですが、タランチュラは動物園でチラッとみるくらいがちょうどいいと思います。

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