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2023-09-23: 着てきた服について

ここ数年、服を買って激しく失敗したり、未知のブランドに無闇に特攻することがほぼ無くなった。
自分に必要な服、自分が好む方向性の服の像がかなり具体化してきたためだろうが、無闇にめちゃくちゃ着ていた時の方が純粋に服を愉しんでいた気がする。

勢いで買って「いやーこれは無いわ」と爆死してみるのもいいもんだ。すぐ金欠になるけど。
せっかくだから(何が?)雑に振り返りをしてみる。

開闢期(~2011)

かいびゃく(開闢)と読みます。

自分が能動的に服を買い始めたのは大学生も終わり頃で、世間一般に照らし合わせてもかなり遅い自我の目覚め感がある。
自分は2011年前後くらいから商業誌で漫画を掲載させていただけるようになり、仕方なく作画資料として女性向けファッション誌を買い出したのがこの時期だった。

それ以前は、服って一番お金かける必要がないものだと思ってたし、実家住みだったのでお母さんが買ってきてくれる服を適当に着ていた。
さすがにその感性で若い女性が出てくる漫画を描くのは舐め過ぎなのではないか?と思い、ファッションに対する解像度を上げる必要があると考えた。

ファッション解像度を上げるにはプレイヤーになるしかないと思い、「俺は服が好きなんだ」という仮想人格をDockerみたいに自分の中に立てて、服を買いに行った。

忘れもしないが、一番最初に「意識的に」買った服は、バスクシャツみたいなストライプが入ったコットン地の異様にタイト(というかピチピチな)ジャケットだった。ブランド名は忘れたが、地元の商業施設に入ってる古着屋で2000円くらいで買った。

あとは、なんか日常着でネクタイ着けてるのがオシャレだと思ってニットタイとかループタイを巻いて通学しはじめた。
ボタンが全部色違いのBDシャツ着たりな。
もうやめようかこの話。

黎明期(2012~2014)

とにかく知識を手に入れて服と踊ることが重大事であり、別に自分がオシャレ君になる必要は無かった。

知的好奇心を満たすため、セカンドストリートのようなファスト風土化した16号線にも存在するリサイクルショップ系古着屋に高頻度で通った。

やることは、とにかく陳列されてる服を見ることと、ブランドを知ること。
セカストみたいなお店ではまず店員から声をかけられることはないので、自分の世界に没入して延々と商品を見れる。試着のハードルも(比較的)低いし、何より「色んなジャンル、色んなブランドの」服が販売されていることにアドがある。

オープンワールドゲーの初期アバターよろしく、何もわからない状態でドーバーに行っても、ファッションのコンテクストが分からなすぎて何も出来ずにボコボコにされ、退店せざるを得ない(※私の場合です)。
FF2(ワンダースワン版)で、序盤で雑にワールドマップを歩き回ってたら速攻で強いザコにエンカウントして狩られていた記憶が蘇る。

世の中にはインターネットという便利なものがあるので、色々調べると「コムデギャルソン」とか「マルタンマルジェラ」とかがコンテクスト厨にはたまらない匂いを発していることが分かってくる。たしかサカナクションの山口さんもここから入っていったとベストバイ記事で答えてた気がする。

見てるだけではどうにもならないので、清水の舞台から飛び降りるつもりで服を買ってみる。
服を新たに買う場合、基本は手持ちの服や靴との合わせを考えるものだが、初期アバターはそもそも服を持っていないので何を買っても良い。
そのため、明らかに似合わないギャルソンオムのスラックスとか、ブランド名だけ見て買ってた気がする。
まあ数千円の世界なので、麻雀でいえば点5の店でフリーで打ち始めるようなものでしょう。俺はそんなんしたことないけど。

さらに、勇気出して地元のよく分からん古着屋に出入りしたりもしてみた。
基本接客がタメ口の店主がいて、よく分からんブランドの新品のカットソーとか薦められるがままに買ってたな。カモである。

HAREとかチェーン系のショップには行かなかった(まず地方にないし)。BEAMSやアローズでも基本買わない。というのも、地方のチェーンセレショは実質的に商品の「セレクト」をほぼしておらず、セレオリ、つまり自社製品が商品の大部分を占めるから。
BEAMSのセレオリの中で服を選んでも情報が増えていかないので。

この頃は本当に服選びがカオスで、似合う似合わないなんて本当に考慮外だった。
アタッチメントやLAD MUSICIAN、ミヤケやギャルソンのようなドメブラが多かった気がする。
海外ハイブラは古着でも手を出しづらかったが(バイトしてなくて、原稿料も少しずつ入ってきたくらいの時期だったので)、幅広に色々見てた。基本デニム履かないんだけど(高校時代無限にライトオンで買ったデニム履いてたから)、RRLとかアーペーセーとか見てた気がする。

わりと金を出して買ったヨレヨレのLADのカットソーを、ボロ服として即捨てられてしまったり、実家暮らしだったのでだいぶ親に色々言われた。
やはり自我というのは徐々に出していくのが良いわけで、二十歳超えて突然自我を全開で出し始めると周囲が心配してくる。そんなの気にしても仕方ないのだが。

やがて多少は知恵をつけ、個人経営のセレクトショップでも多少買うようになる。

当時買ってたブランドというと。
インポートならアミ(まだアレクサンドルマテュッシ名義だったころ)とか、バンドオブアウトサイダーズ、メゾンキツネ、バルマン、ワン期のバレンシアガ、ラグ&ボーン、ジュリアンデイビッド、SATURDAYS NYCとか……。フィリップリムとかウミットベナンも着たかもしれない。

ドメスティックだと(オオスミタケシさん時代の)ミスタージェントルマン、ALLEGE、ソロイスト、ホワイトマウンテニアリングとか。
相対的にインポート着ることが多かった気がする。
マジで地元で買えるものはなんでも着た。

いろいろ買う期(2015~2017)

新卒で関西にて勤めることになり、業後に南堀江に足繁く通い出す。

ピカチュウに電撃食らったみたいなニールバレットのスウェット着て親に大不評だったり(気密性が強くて暑かった…)。

当時勤めていた会社は私服NGだったので、なんとか会社でも服を楽しめないかと思い、トムブラウンやブラックフリース、バンドオブアウトサイダーズやインディビジュアライズドシャツのBDシャツを着てたな~~。
ボーナスでトムブラウンのカーディガン買った記憶がある。今もたまに着ますよ。

ヴェトモンが流行りはじめていた時期だったので、ヴェトモンやデムナ期初期のバレンシアガも多少買ってた。
バレンシアガはむしろ古着屋でゲスキエール期の服を漁ったりしてたな。

あとラフシモンズ。ラフシモンズ一番買ってたのはこの頃。なんかめっちゃパンチ穴開いてるジャケットとか着てた。
いまネットのどこ探しても見つからないんだけど、漂流者期(2015ss)のPコートがあったんですよね。セーラーカラーっぽい。あれ古着屋で試着したんだけど、買っておけば良かった。パーカーは今もたまに流通してますね。eBayとか見ればあるのかな。

マルジェラもこの頃一番熱心で、ドールコート試着したりしてた。今あの値段では絶対買えないしそもそも中古市場でドールコート全然流通してないのでアーカイブ目的で買っておけばよかったかもしれん。。
Pコートなら絶対買ったかもな~。
ここのえ期とかの、本人期のマルジェラちょいちょい買ってました。

あとはギョームアンリ・ベルナベアルディ期のカルヴェンとか、マルニとか、JWアンダーソンとか着てたな。
先日ナポリの男たちの配信観てて、当時のカルヴェンのセーターが出てきて懐かしくなってしまった。阪メンで買ってたよあたしゃ(MRK)。

当時一番山登ってたので、アークテリクスアルファSVとか買った。これは今も結構着るし、登山以外でも重宝してる。アークテリクスめちゃ高くなってるね今。当時の倍くらいしないか?(オンラインショップ見ながら)。
ヴェイランスは検討したけど結局当時買わなかったなー。

あとシルバーアクセサリーにも手を出すようになり、ワークスタットミュンヘンを時々買っていた。

アルチザン期(2018~2021)

もっとコアな服をくれ! になってしまい、ディープゾーンへ進んでいく。

ドメスティックブランドであれば、高品質シャツで有名な山内、m.a.+で経験を積んだtaichimurakami、奥山メリヤスが立ち上げたバトナーとか。
あと、銀座Cathedral(現Lister)に定期的に通ってオリジナルブランドだったOPUS JAPANをよく買ってた。アウターとかまだ持ってる。

インポートだと、テック生地で有名なBYBORRE、インド人デザイナーのRajesh Pratap Singh(このシャツ着て義両親に結婚挨拶に行った)とか。
Label Under Constructionも結構着てたな。かっこいいんだけどニットアウター暑いんだよな……。いつも汗かいて着てた。

Carol Christian Poell欲しいな~と思い出したのはこの頃。
古着でLMアルティエリ(カルペディエムのデザイナーで現在はm_moriabcを手掛けるマウリツィオ・アルティエリ氏が過去にやっていたブランド)を探して着てたり。
アルチザンブランドはだいたいタイトだから、taichimurakamiが一番自分としては着やすいんだけど。

アクセサリーはトビアスウィスティセン、Henson、コディサンダーソンあたりのごついのを買ってた。今もよくつけてる。

パンツはリックオウエンスが最適解になってた時期で、履くパンツ全部リックオウエンスにしてた。
メイヤー夫妻期のジルサンダーもよく買ってたな。

最近(2022~)

服買いに行ったりする時間も減り、仕事仕事仕事家庭家庭仕事仕事家庭家庭仕事服仕事仕事って感じで服との付き合い方が変わってきた。

2023年は特に服を買っておらず(当社比)、実家や奥さんが買ってくれる服とか着てる。
服は欲しいが欲しい服がない状態。ラフのラストコレクションも何も買わなかったしー。

着てる服は、もうだいぶ自分の中の定番というか制服イメージができてしまった。
シャツならSteinのオーバーサイズシャツを適度に袖まくりするのが一番良く、アウターはSteinのシャツの上に羽織れるオーバーサイズ感が必要で、それこそSteinのジャケットやGraphpaperのアウターがしっくりくる。

Tシャツは何も考えないならOAMC(ジルサンダーのルークメイヤーのブランド)あたりのオーバーサイズなものが良い。バレンシアガやジルサンダー、マルジェラは高くなりすぎ。基本見ない。

リックオウエンスはレザースニーカー欲しくて買ったが、パンツは履いてない。持ってるパンツが全部同時期に破けた(洗濯の仕方がラフ過ぎたのではないかと思っている。)ため、今はThe Viridi-anneを履いてる。
手持ちの服が足りないときは、とりあえずThe Viridi-anneを眺めている。

Carol Christian Poellはパンツを買った。コットンジャケットくらい買ってもいいのだが、同じようなものをtaichimurakamiで買ってるからな~。とすると、もうスニーカーかレザーアウターしかない。余り金がないととても買えない。

まだ手を出してないが、着てみたい服は色々ある。
Araki Yuuのジャーキン、IS(isabella stefanelli)のヴァージニア、ポールハーデンやジェフリーBスモールのジャケットないしセットアップ。
これを書きながら、toogoodとかも良いかもなと思っている。

30代、在宅業ということを考えると、いかにリラックスできるかを服選びの優先度の上位に据えてしまいがちだが、たまにエッジの効いた服を買ってもいいだろう。

ここ数ヶ月気になってるのは、Wright.というブランドのバスクシャツ。これは近々袖を通す予定。
あと、ヨレヨレになってしまったマイキータにかわる眼鏡として、ジャックデュランの眼鏡を買った。坂本龍一さんが愛用していたタイプだ。

おわりに

だらだら書いたが、本当はもっと紆余曲折、失敗を経て今に至る。
熟慮して買ったのにほとんど着なかったこともあるし、勢いで買った服がいまだに一軍だったりする。

自分の服との関わり方が果たして漫画にいい影響を与えたかは甚だ疑問だが、頭の中で色々考えるより、思い切ってコミットしたのは結果的に良かった気がしている。
ファッションが好きな人の気持ちが、多少は分かるようになったので。

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