回想記

高校三年生後半。
手に入れた平穏はかくもよくあるインキャの行き場。
でも、そんなカーストはもうどうでもよくて。
天国だと思った。

私の司書さんは、私のスペースに入ってくることも出て行くこともなく、借りる本を持って行った時だけ、小部屋から出てくる。
おっとりしていて丁寧で、何考えてるかわかんない、ふっくらメガネさん。先生ということを感じさせないどこにでもいそうな。それでいて小粒のピアスを片耳ずつ2連3連しているから、実はメタル系なんじゃないかと想像したこともある。

「返却日は休み明けの1/7です。」
(あ、私の誕生日か…。
誕生日だ〜!なんていうのも気が引けて、さっと受け取って部屋の隅のソファに沈む。

開放感のある図書館の唯一死角になるような特等席。
(昼休みは赤青青緑、この四人の弁当早食い選手権andソファー争奪戦が熾烈な展開を知られることなく繰り広げているので、4限終わりからの段取りと弁当を食べる席場所を取ることで頭がいっぱいなのである。)
左を向けば大詰めを迎えるテスト勉強組。
ここにいる生徒は大概、青青緑を除けば、私も含め皆赤である。

斜め上後ろの3年2組は窓全開で山場をむかえた青春に明け暮れている。クリスマスを間近に控えた冬。
期末テストの点数で購買のパンを懸けてみたり、
募る話はないけれどそれらしく笑い上げてみたり、
登りがいのない誰かにしがみついて、したり顔で教室の王が息を荒立ててみたり。
自分を守るために精一杯に蹴落としたり。
出る杭を打ち、でないようにとギリギリを攻めてあるいたり。

見え見えだ。痛いくらい。ゾッとして寒気がして、ここにはいられないと思う。そして、こんなことしてられないと思う。
私も一通り試してはみたつもりだが、楽しむことはできずこの座間である。

これからの人生を私は決めきれないで逃げている。ともいえよう。
この社会では驚くほど不器用で今を今らしく生きている彼らは遠ざけておきたいものであって、付き合えたものじゃなかったのである。

本当に居場所なんてなかった。
どこにいても落ち着かない三年だった。
泣けてしまう、あー。
マスクをしているからこの前流しておこうか。

今日はここまで。

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