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女子同士って政治の話をするの?男はするよ、と聞かれた件

大学生のとき、同じ学部の男子学生から聞かれたのがこの質問だった。

「女子って、女子同士でいるときに政治の話をするの?男はするよ。しないでしょ?」

こう聞かれて私はとても戸惑ったし、「なるほど、この人は私を見下しているんだ」と腹落ちした。というのも、私とその男子学生は同じ学部に在籍しており、その学部とは法学部だったからだ。

法学部は法律だけを学ぶ学部ではない。政治学や社会学も学ぶ。もっと言えば、一年生の時期は文系も理系も横断して履修できる授業が提供されており、幅広い教養を学ぶことができる。カリキュラムについては大学ごとに特色や方針があること、私が他大学のカリキュラムについて知識・情報を持っていないため、法律一直線のような大学もあるかもしれないが。

幅広い教養を培うチャンスと専門性を高めるチャンス。大学ではその両方が得られうると、私は認識している。

だからこそ、肩を並べて法と政治を学ぶ学友に対して、「女子は政治の話、するの?しないでしょ?」と問うことは、とても視野が狭いように感じられた。

「私たち女子学生が政治を学んでいることを知っているのに、わざわざそんな発言してくる?」と心の中で面食らった。

しかも性別で区切っているのはちょっと、いやかなりびっくりしてしまった。たしかあれは、2007年か2008年のことだったと記憶している。学部の男女比は、7:3くらいで男子の方が多かったがしかし。

ただ、私はその男子学生に面と向かって怒ることはできなかった。というか早く話を切り上げたくて、すぐに話題を変えたと思う。いたたまれなかった。

その発言をされたとき、男子学生がその発言をした理由として、以下の可能性を考えたからだ。

①その男子学生にとって、私が政治の話などしそうにもない人間に見えた
②授業以外でも政治の話をするオレ、カッケーってしたかった
③「女子=難しい政治の話はできない」というイメージ先行

どれもすべて当てはまるんだろうな、と思った。私は授業にすごく真面目な学生ではなく、学生生活よりもアルバイトの方をエンジョイしていて、そのことを学友たちも知っていた。そんな私に対してだから、違和感なくあの発言ができたのかもしれない。しかも②の「オレ、カッケー」も同時に満たせたのかもしれない。

とはいえ特に強烈に感じたのは③で、「難しい話は女子はしないでしょ?できないでしょ」というイメージの押しつけがひしひしと伝わってきた。

実際、私は「政治の話をしそうにない人」なんだったとも思う。性別関係なくプライベートで政治の話をあまりしない人間はいるし、私はそのタイプだからだ。正直、大学生だった当時はなおさら、政治を身近には感じていなかった。加えて不真面目な学生だったから、前述の発言をされても仕方なかったとも認識している。

たが、「女子って政治の話をするの?」に関しては「するよ」と言えばよかった、と後悔している。

ゴリゴリに目を合わせて「政治の話に性別関係ないじゃん」と言えばよかった。「女性が参政権を獲得してから何年経ってるんだよ」と言えばよかった。「ていうか女性が参政権持ってない時代だとしても、誰だって政治の話をしていいじゃん」と言えばよかった。

当時、私と同じ学部の女子学生はプライベートで話すときにときどき政治の話題は出ていた。議員インターンに参加していた女友達もいた。

かといって日常的に熱心に政治について議論していたかと聞かれると、そうではないけれど。

テストの悩みや将来について、友人関係のトラブルや恋愛の一喜一憂、メイクやファッション、おいしいものを食べられるお店、趣味の話などを語り合うことの方が多かった(私は)。

でも、政治の話はたしかにしていたのだ。初めての選挙や奨学金の話。こうした身近なトピックも政治の話ではないのか。

しっかりとあの日、あの男子学生に言えばよかった。この後悔は今も、まだまだこれからも胸にしこりを残していきそうだと予感している。


社会人になってから時折「女子って政治の話をするの?」の問いを思い出す。それには理由がある。

というのも学生だった頃と比べると、女性同士で政治の話をする機会が増えているように感じたからだ。しかもそれは20代の早いうちからで、あの質問をされてからそこまで時間は経っていない時分からだ。

同僚の女性、大学時代の女友達、高校時代の女友達などと話していると、愚痴のその先に政治の話へとたどり着くこともある。

子育て政策、待機児童、キャリア形成など、社会の課題を「自分ごと化」し、政治の話をする女性が多いことに気づいた。そうした瞬間は、仕事の休憩時間であったり、プライベートで雑多な話に花を咲かせている時間であったりする。意気込んで「政治の話をしよう!」ではないのだ。

私は結婚も出産もしていないけど、育児に関する問題を一緒に語る相手または聞き役と認識してくれたのは、なんだか嬉しい。必ずしも同意が欲しいわけでも共感が欲しいわけでもなくて、聞いて欲しいだけかもしれない。でも「なんでだろう?」「もっと社会がよくなる方法あるよね、きっと」と問いを続ける彼女たちから、大切な気づきをもらっている。

民主主義の国で、一人ひとりが政治の話をする、というのは正にこういう状況であり、こうした声が国会に反映されることがひとつの理想のように感じた。

もしかすると私が思う政治の話は、あの男子学生が言っていた「政治の話」とは、テーマがちょっと違うのかもしれない。なんかもっと壮大なテーマを指していたのかもしれない。今となってはもう、あの男子学生の意図は知らんけど。

一方、社会人になった私が男性から政治の話を振られたことはほとんどない。

こういう話はよく振られていた。

・髪の毛もっと綺麗にしたら?
・今日は肌の調子良さそうだね
・彼氏いるの?
・結婚しないの?
・子ども産みたくないの?

ていうか世の働く男性は恋愛トーク好きすぎじゃないか?学生の頃は我慢していたのだろうか。女性よりよっぽど恋愛トークが好きに見える。あくまで私の個人的体験と環境、所感による印象だが。もちろん同僚や上司であれば、業務に関する話の割合の方が圧倒的に多い。

あるいは、あの男子学生と同じように、私のことを政治の話ができる人間だとはみなしていないからかもしれない。私が変わっていないのか、たまたま私自身が選んだ環境がそうだったのか、答えはまだわからない。

なんだか女性と男性を対立構造に立たせるような書き方になってしまったけれど、そんなことは望んでいない。

もっといえば、性別も年齢も学歴も国籍も問わず、政治の話はできると思う。それくらい現代は情報へのアクセスがしやすくなっているし、大学に行ってなくても政治についてしっかりと意見を持っている人は今も昔もたくさんいるし。

政治の話とは、それこそ育児やキャリア、日々の賃金など身近な話題なのだと思う。「政治の話、しないでしょ?」なんて決めつけた言い方、誰かに言われたくないし、誰かに言いたくもない。

良くも悪くも忘れられない言葉。
女子って、女子同士でいるときに政治の話をするの?男はするよ。しないでしょ?」by大学時代の同級生

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