HELL or HEAVEN
ボスの前に突き出された二人組は、まだ子供のように見えた。本当にうちの組織から金を強奪したのがこいつらなのか。屈強な運び屋は全身の骨を折られていた。俺には信じられない。
「いい加減コレ外せよ」
二人は同じ声と口調で言って手錠を引っ張る。生意気な目つきも同じ。双子の兄弟、一卵性双生児という奴か。
「黙れ!ドブネズミが喋るんじゃねえ!」
カレブが凄んでも双子はビビりもしない。
「ドブネズミじゃねえ!」
「ドラネコって言え!」
どちらもそう違わないだろうがこれは不味い。カレブも大概だが、ボスはもっとヤバい。
「儂は」
ボスが立ち上がり、ショットガンを手に取る。
「煩い餓鬼が大嫌いじゃ」
「ボス」
咄嗟に叫んだ。何でそんな真似をしたのか分からないが、とにかく俺はボスと双子の間に割って入っていた。
俺の喉に銃口が突き付けられる。
「儂は、儂の邪魔をする奴が大嫌いじゃ」
「イエス、ボス。しかし口を割らせねば」
カレブは俺の頭が吹っ飛ぶと思って後退りしている。他の取り巻き達もだ。ボスが銃を下ろす。
「では、お前が喋らせよ」
胸を撫で下ろしたのは巻き添えを食わずに済んだカレブ達だ。ほっとしたいのは俺の方だが時間がない。ボスは気が短い。
「おい、泥棒ネコ。金はどこだ。すぐ吐け」
「下か上だ」
何の事だ。
「今度はこっちの番だぞ。エゼキエル孤児院にドラッグを流したのはどいつだ」
え?
「ダチが13人死んだ」
俺は恐る恐るボス達の方を振り返った。目を合わせようとしないカレブ達とは逆に、ボスは口角を吊上げる。
「何で…子供に…」
「実験だろ」
双子の言葉にボスが大きく頷くのを見て、俺は膝から崩れ落ちそうになった。
「あんたは知らなかったんだな」
「じゃ、あんた以外だ」
俺の両脇を双子がすり抜ける。いとも簡単に手錠を外し、二人はボスと取り巻き達に向けて不敵に笑った。
「お前らも行くんだ。下か、上に」
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