ハプニング。

夕方に車で外出し、日が落ちてから帰ってきた。
駐車場の自分の駐車スペースの脇には外灯があり、羽虫がたくさん集まっていた。
車を止め、虫が車内に入らないよう気を付けながら車から降りる。

飛んでいる羽虫に気を付けながら歩いていると、頭が何か”線”に引っ掛かった。
ん?と思った瞬間、数十センチ先の空中で慌てふためく黒い塊が目に入った。
蜘蛛だ。けっこう大きい。猫の手のひらくらいある。
おおっっ!とびっくりして少しよろめいた。
すると、蜘蛛もビヨビヨと大きく揺れ動く。
え?と少し後退りすると、蜘蛛もビヨビヨしながらこちらに移動する。
ああ、、、そうか。さっきの”線”はこの蜘蛛の糸だったのだ。
そして、私はまだその糸に引っ掛かっているらしい。
私が動くと空中で蜘蛛がワタワタとなっていた。

どうしよう、、、
下手に動くと、まだ残っている蜘蛛の糸に再び引っ掛かってしまうかもしれない。
暗くて糸がどこに張られているのか見えないので避けようがない。
もたもたしているうちに、あの蜘蛛が糸をたどってこちらに来ても困る。

まずは、今ついている糸をどうにかせねば、、、
もう羽虫の大群を気にしている場合ではない。
左右上下に動いて、蜘蛛がどう動くか観察しながら策を練る。

ふと視線を感じて振り返ると他の車の主が遠巻きにしてこちらを見ていた。
私が気づいたことに気づき、見て見ないふりをしながら、そそくさと車の方へ向かっていく。
怪しくないですよ!蜘蛛!この蜘蛛見えませんか?と心の中で訴えてみたが、当然伝わるはずもなく、、、車に乗り込み、行ってしまった。

まあ、いいや。と、気を取り直し、この宙ぶらりんの蜘蛛をどうするか考える。
とりあえず、蜘蛛を着地させよう。そうしたら自ら糸を切ってどこかに移動するはずだ。さて、どうやって着地させよう。と思った瞬間、
サササササッッと、糸をつたって蜘蛛が壁へ向かい移動し始めた。
私が通りすがりの人に気を取られている間に、蜘蛛もこのピンチをどうするか考えていたのかもしれない。
壁に到着すると、すぐに陰に隠れた。

ああ、よかった。蜘蛛も無事だし、私も連れ帰らずに済んだ。

しかし糸が引っ掛かったのが頭だったから気づけたが、気づけないままだったら蜘蛛を家に連れ帰っていたかもしれない。
もし、歩く位置やタイミングがずれていたら糸ではなく蜘蛛とぶつかっていたかもしれない。

そんな事を考えていたら
色んな偶然が重なって自分の人生が積み上がっていくんだなあ、としみじみしてしまった。