Vtuberイベントにおけるモーションキャプチャ機材と環境の選択肢について

■概要

・Vtuberイベントにおいて、3Dモデルをモーションキャプチャでリアルタイムで動かし、それを映像として出力してライブ会場のスクリーン、外部のライブビューイング会場などに伝送し、表示することでバーチャルなイベントを成立させる。

・モーションキャプチャ機材は予算やVtuberのこだわるポイント、会場などによっていくつか選択肢がある。以下、Vtuberでよく使われるモーションキャプチャ機材について解説する。


1.HTC VIVEなど、VR機材+IK(Inverse Kinematics)を活用したもの

VIVEトラッカーはもともとVR用のコントローラーのためのものだが、赤外線による6Dofで空間の絶対位置を取得できるため、頭、両手、両足、腰で6箇所(もっと増やす場合と省略する場合もある)にベルトなどでセンサーをつけ、そこから全身の関節の動きをIKによって推定し、簡易的なモーションキャプチャを行う。

機材予算:一人あたり30万円程度

外注予算:定価はなし。終日で10-20万円程度?

長所:機材の価格が安価。特定のスタジオ設備が不要。

短所:全身の関節をキャプチャしているのではなく、特定の位置の動きからIKで推定のため、正確なモーションキャプチャはできず、かくかくした印象となったり、不自然さが残る。またセンサーサイズが大きく激しい動きをするとセンサーが揺れてしまうのでダンスなどには不向き。後記の高級なモーキャプと比較すると一見してクオリティの差がでる。

総評:

安価なので動きがそこまで激しくないYoutube配信などではよく使われる。民生機器を利用しているので自宅や会議室でも収録可能。

使用している例:バーチャルキャスト、Cluster、Anicast、Vステージ


2.慣性式センサーによるモーションキャプチャスーツ

専用のモーションキャプチャスーツで、関節部分に小型の慣性式センサー(加速度センサー)を内蔵したもの。安価なものとプロ用との高価なものがある。

長所:単体で動作するためスタジオ設備が不要、ノートPCと組み合わせで屋外や番組スタジオなどの収録も可能。

短所:安価なものは地磁気の影響を受け、ドリフトするなど不安定。機構上絶対位置を取れないため、大幅に動き回ると位置が少しづつずれてくる。複数人で使う際は複数台必要になる。

総評:高価なものは光学式と一見わからないくらいの精度だが、複数人で使う際は価格的に光学式と変わらなくなってしまう。

安価なものは誤差やドリフトが激しいが、編集で対処できる動画系のVtuberは品質と価格のバランスで使われることが多い。

2-a:PERCEPTION NEURON PRO

もともと高価だった慣性式モーションキャプチャスーツに対して、クラウドファンディングで出現した破格に安い慣性式モーションキャプチャスーツ。下記のプロ用とのものに比べると精度や安定度に欠ける。具体的には地磁気に弱く、センサーが誤動作(ドリフトなど)を起こしやすい。→指や腕が突然折れ曲がったりする。動画は編集で対処できるが生配信では事故になる確率高

機材予算:一人あたり60万円程度

外注予算:30万円~(日)

使用している例:電脳少女シロ(イベント時は別)、キズナアイなど

追記(PERCEPTION NEURON STUDIO):

2020年3月より、記のPERCEPTION NEURON社から新製品の「PERCEPTION NEURON STUDIO」が登場

PROよりもよりトラッキングのズレが少なく、また地磁気の干渉が減っているようです。ただし、価格は総額120万円程度に上っている模様

「Pro」では<20msだったレイテンシーは<5msへ、また、120Hzだった最大出力レートは240Hzへと大きな進歩を遂げました。バッテリー性能も向上しており、最大5.5時間に渡り稼働します。また、専用のオプション品(別売)の「Neuron Studio Gloves」を加えれば、全身+両指のモーションキャプチャーも可能です。

専用ソフト「Axis Studio」も進化しており、センサーの状態やバッテリー残量の確認も可能になりました。アルゴリズムの刷新や、磁気・磁場の干渉に対しての強化など、さまざまな改良を加えており、さらに精度の高いモーションキャプチャーが実現。映画/アニメ制作やゲーム開発、パフォーマンスやVTuber用途として、優れたクオリティを提供する製品です。

https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2939.php

2-b: Xsens MVN

技術的には似ているが、 NEURONよりも昔からあるプロ用機材。 NEURONのようなドリフトなどの不具合はほとんどない。

Vtuberレベルでは光学式と近い精度で使える。一台の価格では光学式より安いが、複数人同時に使う場合は光学式のほうが安くなる可能性もある。

予算:一人あたり700万円程度

使用している例:REALIYスタジオ、ゲーム開発、伝統芸能の保存事業

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3.光学式モーションキャプチャ

カメラ方式とも呼ばれ、演者はマーカー(丸くて白いやつ)をつけたスーツを着用、スタジオに固定した複数台のカメラでそれを解析し、ワールドでの絶対座標を取得する。絶対位置のため、基本的には動きを忠実に収録することができる。

長所:カメラとマーカーで絶対位置を取得するため、演者の正確なアクションが取得可能。時間解像度も高く、ヌルヌル。ハリウッド映画でも使われている一番高品位な方式。カメラの台数さえ増やせば複数人(6人など)もキャプチャ可能。マーカー自体は軽い材質で電子機構は含まれていないため、演者は軽快に動ける。

短所:高価(数千万~億単位+スタジオ地代)。場所がカメラが設置されたスタジオに限定される。(イベント会場での設営も可能だが、専門人員コストがかかる)。カメラ方式のため、しゃがんだり複数人がいてマーカーが隠れてしまうとロストすることがある。

総評:みんなの憧れだが、高価なためVtuberのみのビジネス規模だと費用対効果が…?

にじさんじ、ホロライブ、バルス、エイベックスなどが導入。初音ミクライブなど高品質なバーチャルライブ全般。

※下記、OptitrackとVICONの細かい差は筆者は詳しくないが、秒間解像度の店でVICONはかなり制度の高い数字で取れるそうです。ただVtuber用途で60fps以上の精度が必要かは正直疑問です。

3-a:Optitrack

光学式モーションキャプチャでVICONよりはいくらか安い印象。素人目にVICONとの差はよくわからず。

カメラ1台100万くらい。

機材予算:最小構成、狭い会議室程度で、600万~1000万程度。カメラ1台100万+ソフトウェア+スーツ。

外注予算:1日で50-100万程度(広さにもよります)

3-b:VICON

光学式モーションキャプチャの最高峰。AVALもVICONを使用。

機材予算:カメラ1台400万くらい+ソフトやスーツ一式1000万程度。

外注予算:知らないが、オプチとそう変わらないのでは

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