メルセデスW202の思い出

急に秋らしくなったこの頃。
ふとW202型Cクラスを思い出した。

あれは10数年前、9月のとある土曜日夜。

よく飲みに行くお姉さんからメールが来た。
「明日海行こう!バーベキューやりたい!」

え?もう9月中旬過ぎてるんだけど。
海なんて誰もいないだろ。
「だからいいんじゃん。誰か連れてきて」

そうすか。

翌朝、親友(男)を連れて、待合せのお姉さんのお家へ。合流して他の女の子2人を拾って海へ行くらしい。

お、ベンツW202型Cクラスのステーションワゴンが停まってる。
そういや今まで何度も飲みに行ってるのにクルマの話した事は一度もなかった。

いいじゃないか。

1.W202とは

W202は、メルセデスベンツ初のDセグメント向け小型車にして傑作の誉高いW201型、190Eシリーズの後継モデルだ。

190と言う車名からCクラスと変えて1993年に登場したW202型。(正確にはステーションワゴンはS202型となる)

オリビエ・ブーレイがデザインしたこのクルマ、91年登場のW140型Sクラスのイメージを踏襲しながらコンパクトにまとめ、クリーンで清廉かつ誰が見てもベンツという雰囲気は非常にうまいと思う。

参考
https://www.goo-net.com/catalog/MERCEDES_BENZ/CCLASS/9000514/


190E時代の高コスト体質を反省し、コストダウンが顕著と言う評判がこの頃のベンツでは定説だが、実際にはW202Cクラスは190Eのネガを解消したクルマと見るべきだろう。

190Eは世界初のマルチリンク式リアサスペンションを採用したクルマ。
W202はコレをベースに、能力を上げるべくフロントサスペンションをマクファーソンストラット式からダブルウィッシュボーン式へ。

後席が狭過ぎる190Eより、全長70mm、ホイールベースを20mm拡大して後席を使える様にした。
にも関わらず全長は4.5m、カローラクラスだ。

内装デザインもクリーンかつ品質感高い。
構造が少々簡略化されたとは言え、今は無きヤシの繊維まで使う多重構造のベンツ式シートの最終型。

エンジンは当初直4と直6をDOHC化で高性能化したエンジンを搭載。
その後97年には新世代3バルブV6エンジンが搭載された。

2.インプレ

今回のクルマはC240ステーションワゴン。
という事は後期型2.4L V6エンジン搭載車だ。

知り合いから下取り付かないから安く譲って貰ったとの事だが、意外にそこまで古くない。

タイヤは標準の15インチ、ミシュランの安タイヤXMが付いてる。なかなかいいチョイスだ。

さて、当方がステアリングを握る事となった。
5人乗車かつ荷物満載でのインプレだ。

シートはファブリック。
サポート、面圧はやはり素晴らしい。
硬めだが、キッチリ身体をサポートしてくれる。本革よりこっちの方がよほどいいと思う。

感心したのはフロントサスペンションの能力。前輪の能力をキチンと引き出し、コーナーでは無理なくクリッピングに付ける。
最後まで操舵に反応してくれる。

いつでもステアリングを切った分だけ曲がると言う、当たり前の様でなかなか難しいフィールをキチンと実現していて素晴らしい。

やはりダブルウィッシュボーンの効果はデカいのか。

ステアリングギヤ比はスローだが、グルグル回すとやたらと切れる前輪のおかげで小回りは得意。
そういやメルセデスのステアリング機構はこの代までリサーキュレーティング・ボール式。穏やかなフィールな訳だ。
この次の世代からは皆一般的なラックアンドピニオンになる。

もちろんパワーに不足無く、メルセデス製5速ATも変速のキレが良い。スルスル加速する。

エンジンの回転感がシャリシャリと若干安っぽく感じるのは、メルセデスの迷作エンジンである、中途半端な3バルブSOHCかつ、V8と同じ製作ラインを使う為にバンク角90度とされたM112型V6だからか、なんていう先入観からだと思う。

こんなの知らなきゃそんな文句言うほどでも無い。
黒子に徹して必要なパワーをキチンと提供してくれる良いエンジンだ。

総じて運転し易く実用車として良いクルマだと思った。

3.最後に

ヤシの繊維を使った凝ったクッション構造のシート、リサーキュレーティング・ボール式操舵機構。これらは今のベンツには無い。

もちろんやめたのは決してコストだけでは無いだろう。

とは言え旧世代ベンツの最終モデルに乗れたのは幸運だった。

最期の本家メルセデスと言われファンから愛されてる名車190EやW124とは違い、コストダウンの烙印を押されたW202。

10数年前のこの頃なら兎も角、
現在、もうマトモな車体はほとんど残ってないだろう。

バーベキュー帰り、爆睡の4人と満載の荷物を積んみ、ハイペースで山道のコーナーを楽々クリアする度、その走りに感銘を受けた。

緊張も疲労も皆無。

安全とはかくあるべき。


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