美容院の店長さん

駅前の美容院に通っているのだが、
かなり不義理をしている客でして
というか、
女性としてそのサイクルは桁はずれて
おるのです。

自分の中では、
そろそろのびたなー
重いなー
むさいなー
という感じになってから
荒地を整備するが如く
その美容院を訪れるのです。

すると、
店長は、

今日はどういった戦略でいくの？

と聞くのでありました。
戦略？
戦略ですよ、あなた。
千両箱でもなく
戦略…なんのための？

突っ込みたいのは山々だが、
店長とわたしの間では
戦略なのです。

荒地を整備する
その所業は
みていると
盆栽にもみえ、

一度、

美容師さんで、盆栽趣味な人
多いんじゃないですか？

とか、いってみたりしたことがあります。

そんなことは、ない

と答えられた気がします。
ところが、この店長は、
話のわかる人で
もっというと
お客様の話をちゃんと聞いてくれる
やさしい人でした。

なので、
私が、脳の構造とか右手と左手の話とか
深層心理の話なんかすると
チャキチャキしているハサミの手を止めて
やってみてくれたりしました。

ちなみに
わざわざ
わたしのよくわからない話
につきあって
やってみてくれる人
あまりいません。

どうやら
マンガが好きらしく
特に
手塚治虫先生の
火の鳥
などに関しては
むしろ

想いが深すぎて
なにも言えません

みたいな感じで
話をしてくれなかったのですが
ドロロの
漫画の話から
宇宙へ行っちゃって
宇宙のマトリョーシカについて
夢中に話をしていた時は

オレからオイラに
主語が変わっており
すましたカッコいい
美容師さんじゃなくて

みせかけだけでなく
ちゃんと一緒に
楽しい時間を
すごせた2人でした。

いや、美容院で
髪の毛
チョキチョキ
してただけだけどな

それはそれで
とても
しあわせで
楽しい
時間でした

思い出しても
ありがたくて
涙が
でてきます

なぜこんなことを
書いているのかといえば

すでに
去年病気で
お亡くなりに
なってしまっていたから

それを
いつものように
不義理な客は
今頃知ったのです

なんてこった

そうはいっても

ポジティブに捉えてください
あの世でこんなに元気です
と
いっている気がします

最後に
髪の毛切りに行ったのは
なので去年なわけですが

たしかに
その時
店長は
すごく疲れていて

オレにこんなに切らせるな
みたいな
息切れみたいな
そういう感じがありました
（そりゃそうだろうな…）
それは、
悪い意味ではなく

あんた、もっと
自分に目をかけて
こんなになる前に
自分をキレイに
してやんなよ

みたいな
もんです

もう、
あの店長は
いないのです

遅れて届いた
手紙みたいに
知らせてきた
この事実は

それでも

なにごとか
笑顔になれる
生き様の
ヒントを
教えてくれました

暗雲たちこもる
人間経済界の
生産管理部門で
ただ
エネルギーをまわし
働き生きるだけではなく
です

その感じ方
だけではないのですから

よく生き
よく死ぬ
ご冥福をお祈りします