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THE FIRST TAKEのYOASOBI『群青』がなぜこんなに支持されるのか考えてみた

2021年2月26日22時、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』でYOASOBI『群青』がプレミアム公開され、1日で300万再生、3日で600万再生を超えて、まだまだ凄い勢いで伸び続けている。


この動画は公開される前から音楽ナタリーなどの音楽ニュースサイトで告知され、28日日曜の午後には『アッコにおまかせ!』で収録前後の模様も独占取材と銘打って放送された。サポートバンド4名、コーラス9名を加えたTHE FIRST TAKE史上最大の計15名の収録であったという話も含めて、チャンネル運営側もかなり力を入れてプロモーションしたことが伺えるけど、それにしても凄いヒット。

元々はアルフォートのCMソングであり応援ソング

『群青』の公式動画は、これが3本目で、もともとブルボンの『アルフォートミニ』のCMソングとして2020年9月1日に配信リリースされ、同時にマンガ『ブルーピリオド』とコラボしたスペシャルムービーも公開された。

『ブルーピリオド』は、金髪でDQNなのに成績優秀で、人生を流して生きていた高校生が、ある日、絵を描くことこそが本当に自分が好きなことだと目覚め、倍率200倍の東京藝大の受験に挑む話。本当に自分が好きなことに真剣に取り組む喜びと困難の日々を描く。いま話題の作品のひとつで2021年中にTVアニメ化されることが決まっている。

アルフォートのスペシャルムービーの冒頭には

「好きなことと向き合う、すべての人に」

というメッセージが表示され、背景に流れる『群青』の歌詞には、ブルーピリオドのエピドードに基づいた希望と迷いと克己の物語が歌われる。

このブルボンの公式ムービーの再生回数は2021年3月2日現在で約170万回。

もうひとつの『群青』の物語

音楽ユニットYOASOBIの公式チャンネルで『群青』のオフィシャルMVが公開されたのは2020年12月1日。YOASOBIはコンポーザーayaseとボーカルikuraの美男美女コンビだけど、MVはすべてアニメーションで、『群青』の公式MVでは、脚の怪我を抱えながら、隕石が落下してくる地球最後の日まで踊り続けるダンサーの姿が切り絵風のアニメーションで描かれる。

僕はブルボンのスペシャルムービーを知らなかったので、この公式MVの「地球最後の日まで自分の好きなことを追求する」というシチュエーションが凄く印象に残って、公開されてしばらくは『群青』はそういう話なのだと思い込んでいた。この公式MVは3月2日現在1856万回再生。

3カ月前に公開されたブルボンのスペシャルムービーより一桁再生数が多いのは、YOASOBIの固定ファンが多いというのもあるし、ブルーピリオドとは別の物語で再び「自分の好きなことを追求する」話を描いたことが支持されたというのもあったのかも、と思う。

コメント欄が猛烈に熱いTHE FIRST TAKE版

公式MVの公開からさらに3カ月後に、THE FIRST TAKE版の『群青』が公開されて、前述のように3日で600万再生なので、たぶん近日中に公式MVの再生数を抜くだろうし、たぶん、現在9021万回再生のTHE HOME TAKE版の『夜に駆ける』も抜くのではないだろうか?

そう思うのは、コメント欄の温度が桁違いに熱いから。THE FIRST TAKEやTHE HOME TAKEのコメント欄は基本的に絶賛ばかりなのだけど、『群青』のコメント欄は、読むだけで心震えるようなコメントがいくつもある。

例えば美大や藝大の受験生や、一般の受験生、さらにさまざまな人生のハードルにチャレンジしている人達が、自分の人生の意味をこの曲の歌詞の中に見いだし、老若男女が熱く語っているのだ。

藝大油画一次を受験した者です。
半年前くらいに初めてこの曲を知った時、ブルピを元にした曲だと知らずに聴いたのですが、人生で初めて曲に共感しすぎて鳥肌が立ちました。自分の気持ちを丸ごと代弁してくれているような。後からブルピと関係していることを知り、すごく納得しました。
この曲を聴くといつもやる気が溢れてきます。ありがとうございます。
明日一時通過の結果が出るのですが、自分は出来ることをやりきったので、自分を信じて2次の対策をしながら結果を待ちます。合格できますように。

こういったコメントに、さらに激励や応援の返信がついてさらに共感の輪が広がっている。

この現象はアルフォートのスペシャルムービーでも『群青』の公式MVでも起きていたけど、THE FIRST TAKE版では、コメントが一人語りに終わらず、返信で応援したり、自分も頑張ると決意を表明したりしてる。

自分の好きなことを追求する人生に迷い悩んでいる人がこれほどに多くいて、この曲がその人達に共感され勇気を与えている。

YOASOBIとぷらそにかの物語

『群青』のコメント欄のもうひとつの特徴は共感の輪。その共感のキーとなっているのがコーラスパートの存在。この曲ではコーラスの比重が高く、完全にもうひとつの主役となっている。

コーラスを担当しているのは『ぷらそにか』という若手シンガーソングライターたちによるセッションユニット。ひとりひとりは有名でなくとも、テレビの歌うま番組の出演者や優勝者がちらほらいる実力派で、YOASOBIのボーカルikuraこと幾田りらも、もともと『ぷらそにか』のメンバーで、YOASOBIで大ブレイクしたあとも、『ぷらそにか』で精力的にさまざまなセッションに参加している。


『群青』の大ラスでは、『ぷらそにか』のコーラス隊だけでなく、ikuraもayaseもバンドメンバーも一緒に歌っている。コンポーザーのayaseは元々ロックバンドのボーカルで、ベースのやまもとひかるも実はソロデビュー済みで、キーボードの禊萩ざくろも自分のバンドでボーカルをやっている。『ぷらそにか』の面々も全員が個別のシンガーなわけで、個人でも歌で勝負できる人達が一緒に歌っているという事実、「みんなで作っている感」がさらに感動を盛り上げている。

コメント欄が動画をさらに感動的にする

コメント欄では『ぷらそにか』のメンバーもそれぞれに想いを語っていて

ぷらそにかとしてコーラスで参加しました、元松美紅(もとまつみく)です!!
ヘッドフォンから流れる、ikuraちゃんの歌声が素晴らしすぎて泣きそうになるのを堪えながら歌いました。
素敵な経験をさせていただき、ありがとうございました😌
コーラスで参加させて頂きました、ぷらそにかの みきまりあです。🐼
First takeの緊張感と一体感、今でも忘れられません。。とても貴重な体験でした!
たくさん聴いていただけると嬉しいです( ; ; )

みたいな感じで、それぞれに沢山の返信でお祝いと激励がされている。ただ、人数が多いので感動的ではあるけど、どうしてもテンプレ感もある。なので、これに乗っかった一般視聴者の人達が

自宅コーラス隊を担当させていただきました。
「ただのYOASOBIファン」です❗❗
皆さんと一緒に歌えて幸せでした😁😁
再生を担当しました素人です。
この度は非常に貴重な経験をさせていただきました。一発撮りならではの緊張感を共に共有できたこと、これがとても印象的で、同じ時代を生きていたことに感謝したいと思います。音楽の力を感じることができました。ありがとうございます。

みたいなコメントをしていて、でも、これらにも笑いと共感の返信がけっこうついている。

『群青』の曲を聴きながら、これらのコメントを読んだり書いたりすることで、さらに感動が昇華する、という体験がここにはある。

社会は抑圧するが、人は支え合う

視聴者は、『群青』のTHE FIRST TAKEのパフォーマンスに「好きなことを追求することの困難さと克己」だけでなく、「人はお互いに支え合って頑張れる」というメッセージを読み取っている人達が沢山いて、それがまた感動を強化しているのだと思う。

人は社会的動物なので、お互いの役割分担がないと生きていけないのだけど、同時にお互いに抑圧しあってしまい、本来の自分を見失いがちなストレスの中で僕らは生きている。

YOASOBIの曲の多くは、そんな社会の抑圧の中で、自分の生きる意味を見いだし、自分のためや大事な人のために強く生きていこうというメッセージがストレートに語られている。それが、強く心に響く。

その辺は、アニメ『BEASTARS』の第二期OPに使われている『怪物』に強く出ていて、『群青』の次にはこれが来て欲しいと思っています。






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