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Water/proof 〜移動する境界〜

「二藤建人の引込線での新作を見ましたか?」と、早川祐太に聞きました。その新作は、水滴を落とし、その落下を真上から観賞することができるというものでその体験は、シャワーを浴びていて、頭を下げると前髪からなだれ落ちる雫を見ているようなのですが、その時に早川祐太の作品を想像し、この展覧会を構想し始めました。
彫刻家による自主企画展『Water/proof〜移動する境界〜』に参加する3人は在学中から、水を傍らに置いて制作しているスタイルは現在も変わっていません。彫刻は野外に作品が設置されれば、自然を作品の中に取り込んでもきました。
どのような状況であっても、彫刻は水が視覚化してくれる重力や、水平、浮力といった現象を彫刻に内在させることもできるのです。彫刻を維持、継続して制作するために彫刻家は、水との距離感を意識的に獲得してきたのではないでしょうか。
早川祐太の作品は静的で、一粒を意識させるものです。管やボトルを使った装置の中で,徹底して水から距離をとった結果であり、それは何度でも再生される映像のような光景です。宮本智之はコンクリートを使った公開制作を行い、彫刻の完成を制作過程の中で変更、迂回することを、流木のような状態と考えます。それは制作の副産物としての『アトリエ・トレース・ジョーギ』というシリーズと関係し、『ジョーギ』という副産物をもう一度作品に返すような、循環的作業の試みでもあります。
3人は学生時代から現在まで多くの作品をお互いによく知る間柄で、彫刻家としてそれぞれの活動とその領野の重なりをお互いに意識し続けてきたように思います。是非、この機会をご高覧ください。
宮本智之 2019.12.16


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