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あなたのメガネをかけさせて。

私はアルフォートが大好きだ。

あのチョコレートとクッキーがくっついているお菓子。

学生の頃はコンビニでついつい買ってしまうお菓子NO1だった。息子がうまれてからは、冷蔵庫の中にいつもストックしていて、1日1個はつまんでしまうから、週に1回はドン・キホーテで買い足している。

ぜんぜん飽きない。
毎日食べてもおいしい。


なのに、だ。

息子がうまれてからの4年間、ほとんど毎日アルフォートを食べているというのに。つまり少なく見積もっても1000個以上は食べているというのに。


私はアルフォートのチョコレートに描かれている「船」に気づいていなかったのだ。


少し前にアルフォートデビューを果たした4歳の息子。

「今日のおやつは、何食べる?」

と私が息子に聞くと

「船が書いてあるチョコレート!」

と答えた。


私の頭の中には「船が書いてあるチョコレート」がちっとも浮かんでこなかったので

「船が書いてあるチョコレートはないなぁ。ポッキーでも食べる?」

と答えた。


息子は納得していない様子で、冷蔵庫の方に走っていって冷蔵庫を開けて、「ここにあるじゃない!」と言いながらアルフォートを指差した。


え?と思いながら、アルフォートのチョコレート部分を見てみると、しっかりと船の絵が刻まれていたのだ。


驚きすぎて「ほんまやーほんまやーほんまやー」と何回もつぶやいている私の横で、息子は「ほらね!」と勝ち誇った顔をしながらアルフォートを食す。





私はどうして大好きなアルフォートに描かれている船の絵に気づけなかったんだろう。


まだ数回しかアルフォートを食べたことのない息子には見えていて、1000個以上も食べている私には見えていなかった。


私は自分が「チョコレートとクッキーがくっついた美味しいお菓子」をただバリバリと食べ続けている動物のように感じてしまった。どんなにかわいいお皿に盛り付けされたマグロでも、猫にとってはただのマグロでしかないのと同じように。


アルフォートには船の絵が描かれているけれど、なんでだろう?どんなコンセプトのお菓子なんだろう?そもそもアルフォートってどういう意味だろう?どういう想いを込めてアルフォートっていう名前になったんだろう?

たとえばそんなふうに考えたり、もしくはそんなことをだれかと語り合いながら、食べ物をただ食べること以上に楽しむことができるのは人間だけなのに。



私は今目の前にあるものを、
どのくらいちゃんと見れているんだろう。 

アルフォートに描かれている船の絵のように、自分の周りにあるのに見えていない「素敵なもの」が、まだまだたくさんあるのかもしれない。



もしかしたら、私がかけているメガネを通して見える世界は、息子がかけているメガネを通して見える世界よりもボンヤリしているのかもしれない。

それならば、息子がかけているメガネを借りて、もう一度世界を見直してみたいなと思った。

どんなにくっきりハッキリしているんだろう。きっと、おもしろいなと思うものが、不思議だなと思うものが、きれいだなと思うものが、かわいいなと思うものが、かっこいいなと思うものが、身の回りに溢れすぎていて目移りしちゃうくらいなのだろう。

食べたり寝たりする時間ももったいないと感じるくらい、もっともっとこのおもしろい世界を、自分の目で見て、自分の手で触れて、自分の鼻でにおって、自分の耳で聞いて、味わいつくしたいと思っているのだろう。


大人になった私がそのメガネをかけてしまうと、きっと「めんどくさい人」とか「仕事のできない人」とか言われてしまうのかもしれない。

アルフォートに描かれている絵に目を向けるよりも、もっとやることが他にあるでしょう?そんな時間があるんだったら、仕事をしてください。みんな忙しいんだから。もしくは役に立つ勉強をしてください。そして誰かの役に立ってください。


そんなようなことを誰かに言われたり、言われていなくてもそう言われているような気がし続けて、私のメガネのレンズはどんどん分厚くなっていったのかもしれないなと思った。


でも今、私はお母さんになって、会社勤めはしていない。分厚いレンズのメガネをかけなくたって、誰にも迷惑はかけないだろう。


限りなくうすいうすいレンズのメガネをかけている息子のそばで、私も少しずつレンズをうすくうすくして、世界をもう一度ゆっくり見渡してみよう。


きっと世界は、
今の私が思っている以上に
鮮やかなはずだから。


そして、
旦那さんのメガネとか
母や父や弟のメガネとか
祖母や祖父のメガネとか
友達のメガネとか
ご近所さんのメガネとか
ママ友のメガネとか。

全員にメガネを借りて、その人から見える世界を見てみたい。生きていく中で、その人自身が1番歩きやすい見え方にどんどん調整されていったそのメガネを。


それはできないにしても


みんながそれぞれいろんなメガネを通して世界を見ているんだなと感じるだけでも、なんだかいつもより優しくなれるような気がした。

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