2023年10月26日
「さみしい夜にはペンを持て」
という1冊の本を読んだ。
いじめられっ子のタコジローは学校を休んだ。
学校行きのバスから怖くて降りられなかった。
そしてそのバスは終点の公園に着いた。
タコジローは公園でヤドカリおじさんと出会う。
おじさんとの対話の中で、
自分を言葉にすることの晴れやかさを知る。
そして自分自身の本音を客観視し、
向き合うべき現実や大切にすべき友達の存在に
少しずつ気がついていくという物語である。
タコジローは毎日日記を書いた。
誰かからの評価は度外視で、
未来の自分が今日を思い出して笑えるように、
ありのままを書き表していった。
私も彼に倣って紙に書こうと思ったが、
夜の私にはペンを握る力が残っていない。
だからキーボードで今日を綴ってみようと思う。
今日は仕事が終わると疲れ切っていた。
いつもはただ「疲れた・・」という感情が残り、一日を振り返ることはしていない。
今日はいつもと違う。
今日の自分は何を成し遂げたのか想起した。
出社と同時に会議に参加した。
生徒がやってくるまでは4時間近くある。
休憩なしで管轄エリアの社員の悩みに胸を貸し、解決方法を模索した。
部下が言うことを聞かないという相談が
最も悩ましいことだった。
どうすればみんなが働きやすくなり、
なおかつみんなが結果を出せるのか。
中間管理職の私はひたすらに考える。
考えても考えても、自分よりも25歳も年上の社員の動かし方はなかなか分からない。
電話を切ると、ひとり教室にいる私は
「疲れたー!」と絶叫した。
あと30分もすれば生徒がやってくる。
結局休憩をする時間はなく、授業の準備をした。肉体の疲労はなくとも、
脳に栄養が足りていない感覚に支配される。
教室に一番乗りでやってきたのは、
中学3年生の女の子だった。
面倒くさがりな彼女だが、勉強に対する姿勢は
1年前と比べると目に見えて変化している。
今日は学力テストの勉強方法を質問してくれた。私が答えると「えーめんどくさっ」と言い放つ。とは言いつつ彼女はやってくる。
それが彼女なりの反抗期なのである。
19時過ぎ、高校2年生のご家庭と三者面談をした。進路相談を聞き、志望校を決めた。
最終的にはなぜか3人で腹を抱えて笑い転げていた。何に笑ったのかは全く覚えていない。
恐らく当事者の3人のうち、1人も覚えていない。
だけどそこには確かな信頼関係があった。
20時ごろは体験の生徒がやってきた。
昨日が体験初日だった彼女は、
「入塾を決めた」と言ってくれた。
お母様曰く、昨日伝えた勉強のやり方を、
帰宅するやいなや早速やってみてくれたという。すぐに行動していた彼女を見たことで、
お母様は入塾を決めてくださったそうだ。
体験をしている彼女は昨日よりも笑っていた。
信頼の萌芽が見えた気がして、
むず痒いような気分だった。
今日一日を過ごして思うことは、私は生徒たちの素直さに助けられているということである。
大人になると、自分なりの理由を築き上げて取捨選択をしてしまうことが増えてしまう。自分の言葉をしっかりと受け止めて、行動に移してくれることはとても嬉しい。素直に実行してくれる相手がいるとき、言葉には責任がついてくる。だからこそ、私は生徒や部下以上に勉強をして、彼らが望む方向へ導けるような指導者でありたいと、再確認させてもらえるような1日だった。
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