全ての人ががむしゃらに白球を追える世界を創るには -野球とSDGs-
はじめまして。Tomoya(@d_Tomoya_1)と申します。
初めての投稿となりますので、読みにくい所等あるかもしれませんが、ご容赦頂ければ幸いです。
さて、先日投稿されたカラガラさんのnoteに刺激を受け、私も同じくSDGsに関連した記事を書いてみることにしました。
私は学生時代と社会人を合わせて約7年間途上国に駐在した経験があります。
アフリカの教育系NGOに勤めていた時には、教育活動の一環として現地で野球の指導を行ってもいました。
そんな中で、途上国ではまだまだ野球を楽しむだけの環境が整っていない部分もあると実感し、多くの課題を感じました。
今回は、それらの経験談を交えながら、全ての人がむしゃらに白球を追える世界を創るにはどうしたらいいかについて考えていきたいと思います!
【※途上国と一括りにすることはあまり好きではないのですが、今回は便宜上このワードを使用させていただきます。】
途上国で野球が盛んになるための3つの課題
まずは、途上国における野球の地位について見ていきます。
野球というスポーツは、とにかく途上国での人気が低いです。
私がこれまでに住んでいた3か国(アフリカ1、東南アジア2)では、いずれの国でも野球が流行っていませんでした。
それでは、野球というスポーツを流行させるためには、どのような課題を解決しなければならないのでしょうか?
課題①:ルールの難しさ
まず挙げられるのが、ルールの難しさについてです。
例えば、基本的にはボールを蹴ってゴールに入れることで得点できるサッカーとは違い、野球は点を取ることだけでも複雑な競技です。
バッターは3回ストライクを取られるまでに打たなければいけないとか。
ランナーは1つずつしか先の塁に進めず、打球によって進み方も違うとか。
基本中の基本のルールですら複雑なのが野球です。
途上国の多くは教育システムがまだまだ未熟で、考える力が弱い子ども達がたくさんいます。
「野球は考えるスポーツ。頭でするスポーツ。」なんてことをよく聞きますが、詰め込み系の教育スタイルが主流である途上国の子どもや青年にとって、考える力を問われる野球はとても難しいスポーツに思えます。
つまり、根気強く頭を使って考える習慣を身に着けることが、野球を流行らせるためには必要だと言えます。
課題②:お金がかかる
皆さんは高校球児の道具にかかる値段をご存知でしょうか?
あくまでも参考程度ですが、これくらいの費用が掛かります。
・金属バット:約2万円
・グローブ:約3万円から6万円
・スパイク:約1万円
・ユニフォーム、アンダーシャツ、帽子、ベルト等:約3万円
・バッティンググローブ、守備用手袋、エルボーガード等:約2万円
・総計:11万円から14万円
さらに、高校野球であれば2年半の現役生活となりますので、その間に道具の買い替えも必要ですし、部費や遠征費と言ったお金もかかります。
私も高校球児でしたので、改めて過去の支出を計算してみたところ、2年半で150万円は少なくとも使っていたという結果が出ました。
また、皆さんが大好きな野球観戦も、決して安くはないチケットを買って楽しむ娯楽です。
このように、野球というスポーツは見るのにもやるのにもお金がかかります。
1食500円にも満たない金額で暮らしている国の人々が野球をやろうなんて考えたら、日々の暮らしを全て犠牲にするくらいの覚悟が必要になってきます。
もちろん、途上国にも野球をしている子はいます。
ただ、その場合の道具はほぼ日本やアメリカからのご寄付で賄われていました。
裏を返せば、そうした助けがなければ、野球をすることは夢のまた夢だというのが現実です。
経済的な問題は、野球という贅沢なスポーツをしたり観たりする上で、重くのしかかってくる課題なのです。
(コーチを務めたチームの子ども達と。ご寄付で頂いた道具と一緒に記念撮影)
課題③:野球に費やす時間がない
最後は、時間に関する課題です。お金以上にこの問題が大きいのではないかと、個人的には思っています。
アフリカで少年野球のコーチをしていた時に、選手とこんな会話を良くしました。
選手「おはようございます、コーチ。遅れてすみません。」
私「おはよう。なんで遅れたの?」
選手「洗濯と水汲みの手伝いをしていたので・・・」
また、こんなケースもありました。
選手「コーチ。野球部を辞めたいと思います。」
私「どうしたの?何かあった?」
選手「日曜日は家の手伝いがあって、ママが野球に行くなと言ってます。」
悲しいですが、これが現実でした。
蛇口をひねれば水が出る。洗濯機に服を入れてスイッチを押せば洗える。
そんな環境で暮らしている私たちには想像もしにくいでしょうが、途上国の子ども達にとっては、日常生活に+αを加えることはかなりハードルの高いことなんです。
野球というスポーツに時間を費やすだけの価値が生まれなければ、途上国で野球というスポーツが流行る日は来ないと言えるでしょう。
ここまでに3つの課題を挙げました。
あくまでも個人的な意見ですが、これら3つの課題が解決されることで、今よりも多くの人が野球を楽しむことが出来る世界の実現に繋がると考えています。
そして、これらの課題はSDGsとも大きく関わっています。
野球とSDGs
SDGs(持続可能な開発目標)には、17のゴールがあります。
この内、今回は1番・4番・10番の目標に着目し、先ほど挙げた3つの課題と関連付けて述べていきます。
「課題①:ルールの難しさ」と「4.質の高い教育をみんなに」
基本的な教育が整っていなければ、野球をするために必要な知識や思考力は身に着きません。
反対に、少し複雑なスポーツである野球をすることで、考える力が身に着くこともあります。
野球を楽しめるだけの力が付いたとすれば、開発目標4の達成に近づいたと言える。
開発目標4の達成によって、野球を楽しめるだけの力が身に着く。
私が挙げた課題①と開発目標4は、そんな相互作用を持った関係性にあると考えています。
また、「ルールの難しさ」という課題からは逸れますが、野球というスポーツの発展は、副教科である「体育教育」を充実させることにも繋がり、その側面からも開発目標4の達成に大きく貢献することが出来ます。
前出のアフリカの国では、副教科がカリキュラムに組み込まれている学校の方が珍しいくらいで、もちろん「体育教育」を行っている学校も少なかったです。
国の方針では副教科の充実も挙げられていましたが、5教科に対してゴリゴリの詰め込み授業をしても追いつけないくらいの指導範囲が設定されており、副教科に回す時間がないからです。(他にも、指導者不足という理由もありますが。)
そのような背景もあり、私が勤めていた教育系NGO(学校)では体育の授業を積極的に行っていましたし、野球部だけではなくサッカー部やバレー部といった、体育会系部活動の推進もしていました。
こうした野球(スポーツ)を通した教育支援活動を行っている団体は他にも多くあり、青年海外協力隊の派遣実績でもスポーツ系の隊員が多くなっています。
コロナ禍にある現在でも協力隊員の派遣は行われていますし、野球隊員も存在しています。
興味のある方は、こういった形で直接的な貢献をすることも可能ですよ!
「課題②:お金がかかる」と「1.貧困をなくそう」
1食1ドルという、もはや決まり文句にも聞こえる環境下で暮らしている人々は、残念ながらまだまだ実際にいらっしゃいます。
こうした貧困を失くさなければ野球を楽しむことなんて到底できません。
世界中の人が野球を楽しめるようになるためには、必ず達成しなければならない目標です。
そして反対に、野球を通して目標1の達成に繋がるような取り組みも既に行われています。
私たちファンが直接的に何かすることは難しいですが、こうした選手を応援し、NPBを盛り上げることで、野球を通した目標達成にも貢献できるのではないでしょうか。
「課題③:野球に費やす時間がない」と「10.人や国の不平等をなくそう」
野球に時間を費やすことが認められにくい現状の裏には、野球というスポーツが職業選択に繋がっていないという事実があります。
SDGsの主要ターゲットの1つであるアフリカ大陸では、南アフリカにしか国内野球リーグが存在しておらず、「プロ野球選手」という職業を選ぶことはほぼ不可能に近いです。
前述の通り、日々の暮らしを成り立たせるためだけにも多くの時間を費やさなければならない現状がある中で、将来にすら繋がらない時間を生み出すことはなかなか許されません。
生まれた国が違うだけで、野球をする機会や、野球で飯を食うという選択の権利すら得られないのは、平等であるとは言えません。
どの国に生まれようとも、野球を続けたいと思った人が野球を存分にやり尽くすことが出来る環境作りは必至だと言えます。
そして一部では、既にそのような取り組みが始まっています。
関西の独立リーグに属する「兵庫ブルーサンダーズ」は、東アフリカに位置する「ウガンダ共和国」の野球連盟との提携を2012年に結んでおり、実際にウガンダ人の選手がトライアウトを経てチームに加入していました。
また、NPBでは広島東洋カープがドミニカ共和国に野球のアカデミーを設置して選手の育成を行っており、フランスア投手やメヒア選手などがカープで活躍しています。
このように野球が1つの職業として成り立つ環境が生まれれば、野球の価値も高まります。
そうすれば、親や周りからの理解も深まり、どの国にいても平等に野球を楽しむことが出来るようになってくるのではないでしょうか。
そうした世界が実現すれば、最終的には人や国による不平等が1つ無くなったと言えるでしょうし、目標10の達成にも貢献できます。
これもまた、個人で何かアクションを起こすことは難しいですが、既に野球を職業にして頑張っている途上国出身の選手を応援することも、1つの大切な行動だと思います。
★ まとめ
白球を追う子どもの姿は、どこの国でもキラキラと輝いています。
ヒットを打った時の笑顔は、どの国の人だろうと、とても素敵です。
だからこそ、どの国に生まれようとも、野球を楽しむことが出来る世界が早く来てほしいと、1人の野球ファンとして願っています。
壮大な規模の話に聞こえるかもしれません。
ただ私は、現在野球に携わっている全ての人々が、今回取り上げたような開発目標をちょっと意識してアクションを起こすだけで、そんな世界を実現することに繋がるのではないかと思っています!
最後に、本記事は私の経験に基づく見解が多く含まれており、決して客観的なデータだけから記された記事ではないことを申し上げておきます。
もし何か違う考えをお持ちの方がいらっしゃいましたら、Twitterなどで意見を頂けましたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
SDGs関連画像の出典:SDGsガイドライン
※プライバシー保護のため、一部写真にモザイクを入れております。
ご了承ください。
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