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【読書記録3】今宵も喫茶ドードーのキッチンで。/標野凪

都会の片隅にあり、誰もその存在に気が付かないような喫茶ドードー。都内には不似合いな森に囲まれた、お一人様専用喫茶店。店主のそろりが客の心にぴたりと寄り添う料理を振る舞い、その人の心の疲れを癒やしていく。
僕たちが経験したコロナ禍を、こんなにも正面に扱った作品は初めてだ。コロナによって一変した社会を、幸せとは何かという視点で描いている。
コロナ前の社会では、いかにがむしゃらに、効率よく物事を進められるかを求められていた。同じようにはできなくなったコロナ禍で、人々はどう生き方を変えていったらいいのか。
この作品は、自分がどう生きれば幸せなのかは、肩の力を抜いて優しく自分の声を聞けばいいと伝えていると思う。
そんなふうに自分らしく優しく生きられればどんなにいいだろう。北欧的な生き方がその理想なのだろうか。本書の中にもそんな北欧へのイマージュが溢れていた。
しかし、隣には覇権を目指す存在がいるこの国で、北欧的な生き方は現実的なものなのかとも思った。

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