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ベルリンで聴いたラドゥ・ルプーのベートーヴェン

ラドゥ・ルプーが亡くなったそうだ。彼は1番好きなピアニストだった。
ベルリンに住んでいた頃、毎週のように指揮者やピアニストの巨匠がきていた。最初は正直全員良いとしか聴こえなかったが、不思議なことに同じ場所で同じオーケストラで聴いていると違いがわかるようになっていった。
ソコロフ、アルゲリッヒ、バレンボイム、シフ、ツィマーマン、ユジャワン、内田光子など巨匠達を聴いた中で、最も印象に残ったのがルプーだった。

ベルリンフィルには必ず立ち見で聴きに行っていたから、特に前情報は調べなかった。ベートーヴェンの4番か〜くらいで聴きに行った。

かなり貫禄のあるルプーが出てきた瞬間、ただならぬ雰囲気があった。若い素晴らしい演奏家であってもさすがにベルリンフィルとの共演では少し不安になる緊張感があったり、多少なりとも飲まれているようなことがある。それだけベルリンフィルは重厚で失敗の許されない雰囲気がある。聴衆もトップレベルに厳しい。
しかしルプーはその次元ではないことがすぐにわかった。バレンボイムや小澤征爾さんに通ずるような圧倒的なオーラ。

そして彼が最初のG durの和音をpで弾いた瞬間、
音が1番後ろの立ち見席まで一気に届いた。直接心に響き込んでくるような、全く経験したことのない音だった。
最初のピアノの独奏部分だけでまさに雷に打たれたような衝撃。
一音一音に感動する。

こんな感覚を味わえるのはライブだけで、それを味わうために会場に足を運んだわけだ。

人の声でもなく、トランペットでもない
自分でも弾くことはできるあのG durの和音がなんであんなに違うんだろう。それがおもしろいから音楽を続けているのかもしれない

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