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雑巾がけで得られるメリット
小さいころ、わたしはきかん坊で母親におもちゃを買ってもらえないとすぐ泣き叫んだ。大の字になって寝転んで「イヤだ! イヤだ! 」「買ってくれないと帰らないもん! 」などとよく母親を困らせたものだ。
はるか遠い記憶だが、イトーヨーカドーであおむけになって見えた、半分ほど消えかかった蛍光灯をはっきりと覚えている。
雑巾がけ
そんなとき母親は絶対におもちゃは買わず、家に帰ってからもなおしゃくりあげているわたしに雑巾がけをやらせた。
ひっく、ひっくと泣きながらも懸命に両手を動かしていると、6畳ほどの床を拭き終わるころには不思議と涙は止まっていた。
欲しいお菓子を買ってもらえないとスーパーであおむけになり、またはガチャガチャをやりたいとごねて泣き叫ぶ。
その度に決まってわたしは雑巾がけをやらされた。
そんなことを何度もくりかえすうちに、わたしは欲しいものを我慢できるようになった。
そして、子供心ながらも床がピカピカになる心地よさを気に入ったのだろう。母親に言われずとも自らすすんで雑巾がけを行うようになった。
雑巾がけは賛否両論?
雑巾がけについては賛否両論があるらしい。
小学校で児童たちが行っている「雑巾がけ」について、以前テレビ番組でこんな特集が組まれた。
■街の声「体も丈夫に」「罰ゲーム」
街の人は、どう捉えているのでしょうか?
60代パート:「今って、それぞれに子どもがスポーツをやっていたりするので。そこで培われたり、勉強したり、習得してくることなんじゃないかなと。家で雑巾がけとかあまりしないので、子どももそういった意味では、『何で学校でだけ?』という思いもあるんじゃないかな」
20代会社員:「コロナで、外で遊ぶ子たちが減っているのもあって。体育の他に、雑巾がけとかで取り入れたほうが、体も丈夫になる」
30代会社員・40代会社員:「今も?今もそう?あえて、やらせているんですね。メンタル、それで鍛えられるんですかね?どっちかっていうと罰ゲームな感じ」
■専門家「心育むことで教育的効果」
一方で、専門家は、教育現場では一見、不必要と思えるようなことにも意味があると指摘します。
教育評論家・石川幸夫氏:「自分たちの使う所は、自分たちできれいにしておく。雑巾を絞る。水の冷たさから季節を感じる。心を育むことが実は、すごく教育的効果とともに学力も上がっていくことが、示されてきている」
今やロボットが掃除を行う時代。
他にもフローリングワイパーなど楽に床を掃除できる方法は多い。
いちいち汚れを水洗いして、絞るやり方は効率的ではないのかも。
ただ、雑巾がけならではのメリットがある。
雑巾がけのメリット
フローリングワイパーや掃除ロボットよりも、床に近い目線で掃除を行うため、細かな部分にも目がいきやすくしっかりと汚れを拭きとれる。
また、手足で体重を支えながら手を動かすので、全身の筋肉を使ういい運動になる。さらにバランスをとりながら動くため、体幹も鍛えられる。
すべてが終わった後、とてもスッキリとした気持ちになるのは、運動と同じ効果があるのだと思う。
これからも
今でも雑巾がけの習慣は継続している。
週に一度。休日になると床に膝をつき、両手を大きく広げ、カタカナの「コの字」を意識して片手を一心不乱に動かす。
絞った雑巾からしたたり落ちる濁った水を見ると、心の汚れも絞られたようで心地がいい。
近い将来、雑巾がけを行うロボットが開発されても、わたしは自分の手足を動かし、もくもくと掃除をするだろう。
わたしにとって雑巾がけとは、心を安定させ、リフレッシュさせる大切な時間なのだ。
------〈了〉------
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