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透視能力

当時10歳だった私は、「ギミア・ぶれいく」という番組を父と二人で見ていた。

くしゃくしゃに丸められた紙には何かしら文字や記号が書かれていて、その紙を開くことなく、こどもたちが読み取る…という透視をテーマにした内容だった。

見ているうちに父がすっかり感化されてしまい、

「おまえもやってみろ!!」


テレビで子供たちがやっているのと同じように、くしゃくしゃに丸められた紙をおでこにあてて目を閉じた。胸にも当ててみた。

そうこうしているうちに、頭の中にすうっと明かりが広がって、とがっている、チクチクする感じ…三角がそこにある、と感じた。

「さんかく。」

父は「おお!」と言いながら紙を広げた。そこにはやはり、三角が書いてあった。

「まぐれかもしれんからな!」とまた別の紙を丸めて手渡す父。

…さっきよりももっとチクチクしている。わかる。感じる。
「ほし。ほしのかたち。」

広げた紙には星のマークが書いてあった。

父は「えらいこっちゃ」とばかりにまた次の紙を丸めて手渡してくる。


「あれ?」


先ほどまでの感じ方とは全然違い、ぼんやりしていて、霞の中のようで、はっきりと感じることができない。かろうじてわかるのは、チクチクは減っている、そして、もっと丸みを帯びていて…

頭の中にはハートの形が浮かんでいる。
でも、さっきみたいにはっきり感じない。自信がもてない。
何度集中しても、同じ、ぼんやりとハートが漂うだけで時間が過ぎていく。

「…ハート…かなあ?」と言いながら、紙を広げてみると
そこにはハートの絵があった。

「あたった!」と思い父の顔を見ると




「ブー!うさぎでしたー!」



そう、父は絵が下手だったのでした。


#私だけかもしれないレア体験

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