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初心者向け研修でスーツを着ない理由。

インストラクターのお仕事をする上で、わたしは自分で決めていることがいくつかあった。
おおきくこの6つだ。

・初心者向けの研修のときにスーツは着ない
・ベストな声帯で挑むため研修開始の5時間前には起床する
・方言はあえて隠さない
・基本マイクなし(※会場の広さによる)
・笑いと雑談とストレッチタイムは必須
・研修終了時間は厳守する。1分1秒たりともオーバーしない

どれもわたしだけの独自ルールなので特殊だと思うけれど
ひとつめ「初心者向けの研修のときにスーツは着ない」ってことについて
自分の意思確認のためにも書いておきたいと思う。

どういうことかと思われるだろう。スーツ着ないって。
わたしも、こうやって文字にすると「こいつ、何言ってんだ」と自分でも思う。

わたしのお客さんは、わたしの研修を受けに来てくれる受講者だ。
その受講者への対応として、スーツを着ないという選択をしたということである。
うん、やっぱり。「こいつ何言ってんだ」やな。

初心者さんにとって「集合研修」はかなり意を決して申し込む必要があるもんじゃないかと感じている。
とにかくエクセルを使えるようにならないと仕事が困るとか、パワポで資料作りしないといけないのに今まで触ったこともないって、切羽詰まった理由で研修に来た人がこれまで多かった。研修でみんなについていけるかどうかの自信もないけれど、どうしても必要だから頑張って来た。って人だ。あと、『そもそも何がわからないかが分からない状態だけど、とにかくできるようにならないと困るから来た』人もすごく多かった。

わたしはそういう人たちが研修に来てくれるのがいつもすごくすごく嬉しかった。ほんとよく申し込んでくれたねって、本当いつも嬉しかったのだ。この第一歩を踏み出したのはすごい勇気だと思っていたから。わたしはそんな勇者たちに尊敬の気持ちさえ持っていた。これはきれいごとで言ってんじゃなくって、ほんとのほんと。

でもその気持ちを受講者に伝えても「本当にパソコンが何もかもわからないので皆さんの足を引っ張ってしまうかもしれません。ごめんなさい。」「お恥ずかしいのですがマウス操作もまだ苦手なんです。」という人もたくさんいた。謝る必要も恥ずる必要もこれっぽちもないのに、不安すぎて伝えずにはいられないのだと思う。その気持ちがいつも痛いほど理解できた。

でだ。そんな人たちの前にスーツをばしっと決めた、いかにもデキそうなスマートな講師が立つとどうだろう。
「さあ研修だ!やるぞ!」と気合いは確かに入る人もいる思う。だけど、緊張や不安でいっぱいの受講者にとってはどうだろう。わたしが受ける側の立場だったら、そんな完璧そうな人が目の前に立っただけで圧倒されて余計緊張するような気がする。実際、スーツで研修をしていたときは、質問を受けるときも「こんな質問お恥ずかしいのですが・・・」「何度も聞いて申し訳ないんですが・・・」という出だしで質問されることが多かった気がする。質問したいことがうまく言語化できなくって、パニックになる人もいた。

いいのに!どんな質問でもどんどんしていいのに!
あなたが腑に落ちるまで、同じこと何回でも聞いていいのに!
上手に質問ができなくっても大丈夫!
わたしはみんなのためにおるんやで!
遠慮なんかいっこもせんでええねんで!
いつも、わたしの心が叫んでいた。

それで考えた。緊張や不安を溶いてくれる講師で、かつ、どんな質問でもしやすくって、おんなじことを何回でも聞きやすい講師になるにはどうしたらいいだろうとめちゃくちゃ考えた。寝ても覚めても考えた。そして出た答えのひとつが「まずスーツを脱ぐ」だったのだ。いや。脱ぐじゃないか。正しくは、スーツではなく受講者と同じようなビジネスカジュアル的な服装をする。だった。

人ってのは結局見た目からなのだ。メラビアンの法則では人の第一印象って視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%の割合で受けるらしい。研修で初めて会う人たちはわたしという人間をほぼ見た目で、それも数秒内に決定づけるのだ。ってことはわたしの見た目のカッチリさと「先生感」を払拭するだけで、受講者の緊張や不安を多少なりとも溶きほぐすことができるかもしれない。と思いついちゃったのだ。

そして、スーツを着るのをスパっとやめた。
たまたまかもしれないけれど、わたしの目論見は功を奏した。
出で立ちが変わっただけなのに皆との距離感が縮むのを実感した。
服装が似ていることで室内の一体感も生まれてくる。
休憩中や研修後も気軽に質問してくれるようになった。
雑談もしてくれるようになったし、後日メールで研修の「あの内容が仕事で役立ってます」って報告をくれる人も増えた。

以来、わたしは初心者向け研修のときは、スーツは着ていない。
そして、心理的にも受講者に寄り添った研修を以前よりも心がけるようになれた。

ちなみにだが、がっちりビジネス系の研修のときは、初心者向け研修とは逆で、その受講者に合わせてこっちもバシっとスーツで挑むようにしていた。そういう系当の研修はビジネスシーンをイメージしてもらいながら進めるほうが皆にとっていいのでスーツ一択。

たかが服装。されど服装だ。とわたしは思う。
っていろいろ好き勝手書いているけれど、あくまでこれはわたしの考え。
自分の経験上、そういう考えに落ち着いたという話だから
初心者向け研修でスーツ着てやってる人を否定することはしない。

それぞれインストラクターさんみんな受講者のこといっぱい考えてやっているのだし
どういう考えでどういうスタイルであっても、
最終の「受講者のため」っていう目的はみんなおんなじ。

とはいえ、しばらく集合研修には立っていないが、今後のオンラインに研修のためにまたイメージ戦略(かっこいい)もしないとな。

なんちて。

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