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1989年に行ったインド

前夜ニューデリー入りしてから見つけた1泊300円の安宿にいた。
クラクションや独特の音色に起こされて寝ぼけ眼で2階屋上に上がると、その光景に目と鼻に強烈なパンチを食らった。
人と車、リキシャ、牛がそれぞれを押しのけるように進む街角。
まいったな、というのが正直な印象だった。

最初のインドは、経済鎖国が解かれる前の89年、25歳だった。
車もバイクも現地物。見慣れているマークに似た商品が目についた。
コカコーラっぽいカンパコーラやセブンナップっぽいタムスアップはどこでも売っていて、ドライヤーの風に向かって歩くような日中は、冷えてないとわかっていても売店でつい買ってしまう。店のオヤジは瓶コーラの栓を抜くと瓶の口を指で拭いて渡してくれる。栓の錆やらゴミを取ってくれる行為なんだけどやらなくていいのにと思いながら、受け取って自分の指で拭きなおした。

2回の予防接種を受けて渡航。直前に「オールドデリーでコレラ流行の兆し」のニュースを知って、川の近くの宿に泊まった時は、目と口を閉じてシャワーを浴びた。
今も夏になるとたまに思い出すのは、世界遺産タージマハルでの昼寝。サイクルリキシャの車夫も途中しゃがんで休憩したり、軒先で水をもらったりしながら進んだ暑さの中、ようやくたどり着き大理石に横になった。クルタ(民族衣装)の薄い生地を通して感じたひんやりとした心地よさ。
大型バスが着くたび列を作る観光客を余所目にしながらうたた寝した。

※2015年3月

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