見出し画像

鳩の王様(※創作童話です)

夕日が沈む森の中、鳩の王国がありました。 その国の王様はとてもりっぱなで、みんなから尊敬されていました。 けれども少々りっぱになりすぎました。 王様へのプレゼントは、見返りを求める者ばかりが持ってくるようになってしまったのです。
「ひまわりの種をプレゼントしますので豪華な巣を作ってください」
「豆をプレゼントしますので人間からポップコーンをとってきてください」
困った王様はプレゼントが嫌いになりました。何かをしてもらうと、もっと大変なことをしなければならないのです。いつしか王様は感謝をする気持ちを忘れてしまいました。

ある夜のこと。 王様の夢の中でお星様が言いました。
「お前はとても立派な鳩だ。ぜひ夜空の星になってほしい。けれど、今はまだ呼べないよ」
「どうしてですか?前の王も、その前の王も、お星様になっているというのに」
「お前の心にはひとつ欠けているものがある。それに気づくことができたら、お前を呼びにやってくるよ」
目を覚ました王様はすっかり夢を忘れてしまいました。そうして何年も一生懸命国を治めておりました。

そんなある日、カラスの大群が鳩の王国にやってきました。 戦って戦って、国を守った王様は、すっかり傷だらけになってしまいました。羽が半分やぶれかけ、足は折れ、片目が見えなくなりました。もう長くは生きられません。 王様は国を出て静かに死ぬことにしました。

ゆらゆらゆらゆら飛びながら、たどり着いたのは生まれ育った小さな駅の入り口でした。 王様は腰を降ろして、うとうととしておりました。
すると女の子がやってきて
「鳩さん大丈夫?とっても寒そうだから、葉っぱを置いていくね」
と、落ち葉を一枚置いて行きました。
次に野良猫がやってきて。
「足が折れてるじゃないか。 この枝を支えにして、 獲物を捕まえるんだぞ」
と、小枝を置いて行きました。
次にセキレイがやってきて。
「鳩さん、鳩さん、お腹が空いていませんか?この赤い実を食べてください」
と、小さな赤い実を一つ置いて行きました。

夜も更けた頃、夢うつつの中で声を聞いていた王様はゆっくりと目をあけました。たった一人で座っていたところに、葉っぱと枝と赤い実が置いてありました。王様は嬉しくて嬉しくて、涙を一つ流しました。
すると柔らかい光に包まれて、身体中の痛みがなくなりました。飛び立とうと力を入れると、葉っぱがやぶれた羽のかわりに、小枝が折れた足のかわりに、赤い実が傷ついた目のかわりになっていました。あんなに寒かった風ももう冷たくありません。 お星様がやってきて言いました。
「やっと感謝の気持ちを思い出してくれたな。これからは星になって、みんなを照らしておくれ。」
王様は柔らかい光につつまれながら、夜空へ飛んでいきました。



※子供が傷ついた鳩のそばに葉っぱをあげたことから作ったお話です。私は何もできませんでした。あの鳩が少しでも幸せであってほしいと祈っております。

※※12/24 生成AIで作った画像を最後に追加しました。お話しのイメージに沿った絵になりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?