オープンコートと守備範囲のバランスからアプローチショットを考える
こんにちは、トモヒトです。
今回は、オープンコートと守備範囲のバランスから、アプローチショットについて考えてみます。
サイドへアプローチショットを打てば、相手を動かしてオープンコートを作ることができます。
一方で、センターへアプローチショットを打つと、相手の打てる範囲を狭めることができます。
リスク(相手の返球可能範囲)とリターン(オープンコート)のバランスで、アプローチショットをどこへ打つかを決めるのも一つの手です。
相手の返球位置で、リスクとリターンのバランスがどうなるのかを、ここでは物理的に考えてみます。
各プレーヤーの想定
ボレーヤーに関しては、以下の想定で話を進めていきます。
リーチの長さは、0.5mとする
反応時間は、0.2sとする
ボレー時の前後のポジショニングは、ネットから3m後方の位置
対戦相手(ストローカー)に関しては、以下の想定で話を進めていきます。
ストロークのショットスピードは、130km/h~160km/hの範囲で5km/h刻み
スピン量は、1200~3000回転の範囲で50回転刻み
打点の高さは0.6mで打たせるものとする
合理的待機位置の決め方
合理的待機位置の決め方は、次の手順で行います。
6コースのうち、有効なショットのスピードが最速、かつ一番外側のコースを基準にする。
(ミドルクロス・ディープクロスが160km/h、ショートクロスが130km/hの場合、ミドルクロスを基準にする)
次章以降で、太字となっているコースは、基準コースを表す。ボールに対する移動方向が斜め前、かつ3コース(ショート・ミドル・ディープ)への移動経路がなるべく同一直線上になるように、基準ボール到達時間を決める。
基準ボール到達時間時のボール座標を、各コースのヒッティングポジションと定義する。1で設定した基準のコース(ストレート・クロスそれぞれ)上で、2の基準ボール到達時間の時点の、ボールの座標を求める。
3で求めた座標に対して、ストレート側とクロス側で、移動距離が等しくなるポジションを合理的待機位置と仮定する。
また、3で求めた座標に対して移動するのに必要なフットワークスピードを、基準フットワークスピードとする。4で求めたポジションから、各コースのヒッティングポジションへの移動に必要なフットワークスピードが基準フットワークスピードを下回っていれば、合理的待機位置として決定する。
1コースでも基準フットワークスピードを上回るスピードで移動する必要のあるコースがあれば、基準のコースを変更して2~5を行う。
なお、フットワークスピードは、以下のように算出します。
$$
フットワークスピード = \frac {ボールとの距離 - リーチの長さ} {基準ボール到達時間 - 反応時間}
$$
センター付近へのアプローチショット
センター付近へのアプローチショットについて考えてみます。
相手はセンターからほとんど動かずに、アプローチショットを返すことになります。
ベースライン上からの返球
合理的待機位置は、サイドラインから4.078mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.37s | 2.59m | 12.294m/s
deep straight : 0.37s | 2.605m | 12.382m/s
middle cross : 0.37s | 2.925m | 14.265m/s
middle straight : 0.37s | 2.925m | 14.265m/s
ベースライン後方1mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから4.073mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.4s | 2.666m | 10.83m/s
deep straight : 0.4s | 2.67m | 10.85m/s
middle cross : 0.4s | 2.973m | 12.365m/s
middle straight : 0.4s | 2.972m | 12.36m/s
short cross : 0.462s | 3.395m | 11.05m/s
short straight : 0.494s | 3.376m | 9.782m/s
ベースライン後方2mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから4.082mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.43s | 2.731m | 9.7m/s
deep straight : 0.43s | 2.746m | 9.765m/s
middle cross : 0.43s | 3.016m | 10.939m/s
middle straight : 0.43s | 3.017m | 10.943m/s
short cross : 0.477s | 3.453m | 10.661m/s
short straight : 0.492s | 3.435m | 10.051m/s
コート半面の中間へのアプローチショット
コート半面の中間へのアプローチショットについて考えてみます。
相手はセンターから約2m動き、アプローチショットを返すことになります。
ベースライン上からの返球
合理的待機位置は、サイドラインから3.429mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.37s | 2.472m | 11.6m/s
deep straight : 0.37s | 2.738m | 13.165m/s
middle cross : 0.37s | 2.921m | 14.241m/s
middle straight : 0.37s | 2.921m | 14.241m/s
short cross : 0.448s | 3.481m | 12.02m/s
ベースライン後方1mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから3.462mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.4s | 2.542m | 10.21m/s
deep straight : 0.4s | 2.8m | 11.5m/s
middle cross : 0.4s | 2.973m | 12.365m/s
middle straight : 0.4s | 2.974m | 12.37m/s
short cross : 0.462s | 3.55m | 11.641m/s
short straight : 0.494s | 3.212m | 9.224m/s
ベースライン後方2mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから3.624mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.43s | 2.502m | 8.704m/s
deep straight : 0.43s | 2.994m | 10.843m/s
middle cross : 0.43s | 2.919m | 10.517m/s
middle straight : 0.43s | 3.152m | 11.53m/s
short cross : 0.461s | 3.509m | 11.529m/s
short straight : 0.508s | 3.417m | 9.471m/s
サイドライン付近へのアプローチショット
サイドライン付近へのアプローチショットについて考えてみます。
相手はセンターから約4m動き、アプローチショットを返すことになります。
ベースライン上からの返球
合理的待機位置は、サイドラインから2.778mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.37s | 2.406m | 11.212m/s
deep straight : 0.37s | 2.875m | 13.971m/s
middle cross : 0.37s | 2.928m | 14.282m/s
middle straight : 0.37s | 2.949m | 14.406m/s
short cross : 0.417s | 3.627m | 14.41m/s
ベースライン後方1mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから3.004mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.4s | 2.358m | 9.29m/s
deep straight : 0.4s | 3.1m | 13.0m/s
middle cross : 0.4s | 2.86m | 11.8m/s
middle straight : 0.4s | 3.156m | 13.28m/s
short cross : 0.431s | 3.568m | 13.281m/s
ベースライン後方2mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから3.336mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.43s | 2.217m | 7.465m/s
deep straight : 0.43s | 3.433m | 12.752m/s
middle cross : 0.43s | 2.709m | 9.604m/s
middle straight : 0.43s | 3.449m | 12.822m/s
short cross : 0.43s | 3.45m | 12.826m/s
short straight : 0.524s | 3.595m | 9.552m/s
コート外へ追い出すアプローチショット
コート外へ追い出すアプローチショットについて考えてみます。
相手はセンターから約6m動き、アプローチショットを返すことになります。
ベースライン上からの返球
合理的待機位置は、サイドラインから2.605mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.37s | 2.147m | 9.688m/s
deep straight : 0.37s | 3.519m | 17.759m/s
middle cross : 0.37s | 2.683m | 12.841m/s
middle straight : 0.386s | 3.416m | 15.677m/s
short cross : 0.37s | 3.518m | 17.753m/s
ベースライン後方1mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから2.605mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.4s | 2.212m | 8.56m/s
deep straight : 0.4s | 3.561m | 15.305m/s
middle cross : 0.4s | 2.753m | 11.265m/s
middle straight : 0.4s | 3.488m | 14.94m/s
short cross : 0.4s | 3.562m | 15.31m/s
ベースライン後方2mからの返球
合理的待機位置は、サイドラインから2.749mの位置となります。
このときの、各コースの、基準ボール到達時間、ボールとの距離、必要フットワークスピードは、下のとおりです。
deep cross : 0.43s | 2.292m | 7.791m/s
deep straight : 0.43s | 3.609m | 13.517m/s
middle cross : 0.43s | 2.833m | 10.143m/s
middle straight : 0.43s | 3.519m | 13.126m/s
short cross : 0.43s | 3.608m | 13.513m/s
short straight : 0.524s | 3.513m | 9.299m/s
アプローチショットの選択肢
ここまでの結果から、アプローチショットの選択肢について考えてみます。
1.相手の返球ポジションがサイド寄りになるほど、必要なフットワークスピードが高くなる
相手の返球ポジションがサイド寄りになるほど、各コースへのショットを返すのに必要なフットワークスピードが高くなることがわかります。
特に、サイドラインやコート外へのアプローチショットを打った場合、返球可能範囲ギリギリへのショットを返すのに必要なフットワークスピードは、かなり高いものになります。
一方、サイド寄りに打つほど、逆サイドにオープンコートができる可能性が高くなり、次のボレーが決めやすくなります。
このことから、アプローチショットをサイドへ打つのは「相手のショットのコースが読めるorアプローチショットで相手のショットのコースを限定できる」ケースを基本とするのが、効果的です。
サイド寄りのポジションで、どのコースへも打てる体勢を作られると、パスを抜かれるリスクが高くなります。
アプローチショットの1ショット前で、相手のポジションや体勢を崩せていないのであれば、センター寄りにアプローチショットを打つほうが、パスを抜かれるリスクを減らせます。
2.深いアプローチショットで相手のポジションを下げる
相手の返球ポジションがベースラインより後ろに下がるほど、ボレーを返すのに必要なフットワークスピードが低くなります。
角度をつけたい場合を除けば、アプローチショットは深く打ち、相手のポジションを下げさせるのが効果的です。
相手のポジションを下げることができれば、コート前面にオープンコートを作ることもできます。
※あわよくばウィナーになるように、オープンコートへのアプローチショットを打つのであれば、相手の移動距離を大きくするために、浅く角度のついたショットが良いケースもある
まとめ
今回は、オープンコートと守備範囲のバランスからアプローチショットについて考えてみました。
サイド寄りのアプローチショット
=>オープンコートは作りやすいが、パスを抜かれるリスクが高まるセンター寄りのアプローチショット
=>相手にポジションは整えられやすいが、パスを抜かれるリスクを抑えられる
相手のポジションや体勢、状況に応じて、リスクとリターンのバランスが取れたアプローチショットを選択する必要があります。
アプローチショットでのリスクとリターンのバランス感覚が磨かれれば、ネットプレーのポイント獲得率を上げることにつながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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