売上800万で利益を出す取り組み
お寿司屋さん、特に回転寿司店の損益分岐点は、およそ“月商1,200万円”ほど。
少なくとも、月商1,000万を下回るお店は赤が続き、(おおよそ)潰れます。
「潰すのは簡単。必死になって取り組んで、それでもどうにもならなかったら考える。でも、必死になってもどうにもならないことなんてあるのかな?」
今回は、ひとつ前の記事に引き続き、ドキュメンタリー(思い出話)をお送りします。
お寿司屋さんの数字(売上・FL・経費)に関するお話です。
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大:月商2,500万円
中:月商1,500万円
小:月商800万円
月商2,500万円、平均客単価1,600円のお店であれば15,625人のお客様がご来店くださっている計算になります。1ヶ月30日ならば、1日あたりの平均客数は520人。
それでおよそ200〜300万円の利益が出ます。
会社の数字に詳しい方は「まあそんなもんだよね」と感じてくださるのではと思います。
月商2,500万円という数字に至ると、従業員にはかなりの負荷がかかります。
人事売上(従業員1人あたりの売上)が高くなり、レイバー・コスト(人件費/L)は20%を下回るほどになります。
それだけ従業員が苦労しているということです。
しかし、体の苦労はいくらでも慣れます。
涼しい顔をして2,500万円売れるようになります。
心労には慣れませんが。
一方、月商800万円のお店。
普通に(月商1500万円以上のお店に居る感覚で)営業をすると、絶対に利益が出ません。
お財布(入ってきたお金/売上)に余裕がある状態では、多少のロスが出ても目をつむります。
しかし、800万円のお店にはそのような“ゆとり”がありません(お財布の余裕)。
なので、極限まで管理して、一切のロスをなくすよう努めます。
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売上が800万円しかなくて赤字になっているなら、それを1,000万円、1,200万円と上げていく努力をすればいいじゃないか。
みんなこう言います。
私も当初はそう思っていました。
我々は営業の人間です。
売上を上げる努力は、考えうる限り、また他店から学びながらすべてやります(私がお寿司屋さんを100店舗以上食べ回っていたのは営業を学ぶためです)。
もし貴方様が、「将来は小さいお店を持ってみたい」と思っている(思ったことがある)ならば、決定的な不利がある可能性が高いことを頭に置いていただけますと幸いです。
きちんと駐車場を確保し、ウェイティング(待ち)がかからずに回転させられるなら話は変わりますが、お店の規模が小さいと(必ずと言っていいほど)売り逃しが出ます。
それが致命的です。
月商800万円のお店は、どんなに頑張っても、月商800万円のお店にしかならないのかもしれません。(50〜100万円程度の底上げは可能ですし、利益を出すためにはその努力も必要ですが)。
月商800万円のお店は、客席が他店の半数、ウェイティングスペースが他店の1割、そして駐車場が整備されていないお店でした。
強烈です。
経験上、「飲食店の売上は立地の良し悪しで決まる」と心から思います。
1.商品力
2.サービス
3.清潔さ
売上の上げ下げに関わる要素はこの3つだと言われています。
まず商品力。
これは企業努力により最高レベルだと思います。
次にサービス。
全員が「お客様に喜んでもらいたい」と思うまで根気よく話し、劇的に変わりました(当初は寝る暇がありませんでした)。
そして清潔さ。
これは自分でやりました。不思議なもので、「他人(ひと)の嫌がる仕事を率先してやる」と、周囲の人たちが手伝ってくれるようになります。
毎日(小さな店舗ですから)店の隅々までピカピカに保つよう掃除をしていたら、自然とみんなの意識が掃除に向くようになりました。
これは私の持論ですが、
飲食店は「お客様の食欲が減退する」一切のものを排除しなければならない
と思っています。
生臭い臭いや、目に見える汚れは、お客様の食欲を減退させ、食べる量を減らし、お店の評価を著しく下げます。
それは何としても避けなければなりません。
これだけやっても、月商は950万円に届くか届かないか、といったところまでしか伸びません。
そこで初めて、お店のキャパシティと立地の限界を知りました。
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考えをシフトすればいいのでは?
と思いつきます。
私は「売上を上げろ。それがお前の仕事だ」と厳命されていました。
そのことばかり考えて、「出ていくお金に気が回っていなかった」と反省しました。
会社でお店をやっていると、お金のことに関して無頓着になりやすいと思います。
数字はお金。お金は数字。
目にする数字のすべてがお金なのだと、やっとこさ気づきました。
そうか、ロスをなくせばいい。
そこから数字と向き合う日々が始まります。
1.食材の仕入れ価格を暗記
2.売上を予測(1日)
3.使えるお金を算出(1日)
4.頭の中で計算
5.仕込み量を決定
この5つのステップを完璧に行えばイケると思いました。
そのためにはみんなの協力(特に仕込みをする人の協力)が必要不可欠でしたが、幸い、主に仕込みを管理する人とはほとんど親子のような関係が築けていたので、スムーズにいきました。
「ごめん!」と「お願い!」が通用する人間関係は、ほんとうに有り難いことだと思います。
かなり無茶なことを言っていたと思います。
皿単位で仕込み量を要求していましたし、予想外なことが起こったときには「ごめん!お願い!」です。
あたま、上がりませんね。
1日の営業が終わった後には、冷凍以外の在庫を数ではなく金額で計算します。
これを毎日行います。
(休日はちゃんといただきました。前夜に量を伝え、翌朝に確認すればわかります)
すると、数字が劇的に変わりました。
具体的には、フード・コスト(原価率/F)が、前月より7ポイント下がりました。
7ポイントというのは、お金にして66.5万円(売上950万円)。
赤字がおよそ50万円でしたので、黒字転換です。
とても嬉しかったです。
みんなで歓喜しました。
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利益を出したいと思ったのは、会社のためでも、社長のためでもなく、自分とお店のみんなのためです。
店舗が赤字になっているのにお給料をいただくのは、他店の頑張りをおすそ分けしていただいているように思え、それがとても恥ずかしいことだと感じました。
若さでしょうか。
一所懸命になりすぎました。
お店は、利益が出ていないと、当然ですが圧力を受けます。
責任者は盛大に怒られます。
その圧力は、お店のみんなにも伝わり、どこか恥ずかしい思いをしながら、働くようになってしまいます。
それが心底、つらかった。
みんなには、楽しく、前向きに働いてほしい。
その上で、人生が好転するきっかけを得てほしい。
それが私の願いでした。
なので、人件費は極力削りたくなかった。
お金に関する不満は、その人自身の生きがいを絶対に創らないと思っていたためです。
結果、人件費はそのままでなんとかなりました。
ほんとうによかった。
そういう想いが、人のためになったのか、ならなかったのか、私にはわかりません。
飲食店は、第三者から見るとどこか機械的に見えるかもしれませんが、(お寿司屋さんだからかもしれませんが)人間味溢れる環境です。
そういう環境に救われたことは、とても多かったように思います。
機械的な取り組みの裏には、それと同じだけの振り幅の「人間味」があるということでしょうか。
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