見出し画像

まちづくりの未来予想図 Ⅰ

≪おごおりト−ク26≫

現在「みんなですすめるまちづくり条例(以下、まちづくり条例)」が制定され、これに伴い、今後のまちづくりの指針となる「まちづくりガイドライン(以下、ガイドライン)」の策定に向けた検討が進められています。
今回は、このガイドラインについて考えてみます。

このガイドラインの目的は何か、それは「まちづくり条例の実効性を高める」ことにあると思います。

まちづくり条例は、本市の基本的なまちづくりの考え方や方向性を理念として取りまとめたものですが、条例は制定すれば終わりではなく、制定後はその理念に基づいたまちづくりが地域において実践されなければ意味がありません。そのためガイドラインは、地域において具体的な実践活動の行動指針となるべきものです。

まちづくり条例の実効性を高めるためには、この条例の理念がより多くの市民や地域全体の共通認識として共有されることが必要ですが、それよりも重要なのは、個々の行政施策(特にソフト事業)に条例の理念が反映され、その理念を具現化した施策や事業が地域で推進されることだと思います。
そのためには、まずは行政内部での庁内論議が不可欠であり、まちづくり条例に基づいて目指すべきまちづくりの方向性や実現したい地域自治のビジョンが、庁内関係課や職員間において共有されなければなりません。
行政施策として条例の理念を反映した具体的な事業が地域で推進されてはじめて、地域住民やまちづくり関係者の共通認識を醸成していくことにつながるのだと思うのです。

では、このガイドラインの守備範囲はどのように考えればいいのでしょうか。

本市の「協働のまちづくり推進事業」は、少子高齢化と人口減少の影響を踏まえ、様々な地域課題に対して行政だけでは対応が困難になる状況を予測し、市民主体のまちづくりの実現と自治会を中心とした地域コミュニティの活性化を目指したものです。
各小学校区に「校区まちづくり協議会(以下、まち協)」を設置することにより、校区単位で特色あるまちづくり事業が住民主体で取り組まれています。しかし、本市の地域自治の基盤は自治会活動にあり、「まち協」は地域の共同体として自治会活動を補完する組織であることから、協働のまちづくりのフィールドはこの「まち協」の活動だけに限定されるものではありません。
やはり、このガイドラインの守備範囲としては、地域の自治会活動や「まち協」の活動なども含めた地域活動全般をそのフィールドとして捉えなければならないのだと思います。

今回、これらのことを踏まえて、私なりにこのガイドラインの射程に入れるべき内容と地域活動において考察すべきポイントについて考えてみたいと思います。

1.これまでの協働のまちづくりの成果と課題

まず、ガイドラインの内容として必要になるのは、これまで10年間にわたって取り組んできた「協働のまちづくりの成果と課題」だと思います。
一言で成果と課題といっても地域では多様な主体によって様々な地域活動が取り組まれているので、個別の事例を一つひとつ検証していくことは現実的ではありません。そこで、地域包括ケアシステムにおける生活圏域の考え方に基づいて「自治会圏域」「小校区圏域」「市全域」の3つの階層に分類して地域活動を概観してみることにします。

【自治会圏域】
本市の地域自治の基盤である「自治会圏域」では、地縁組織である62自治会における自治会活動の現状と課題について考えてみます。

他自治体では自治会の加入率が低下し、自治会活動そのものが継続困難に陥っている事例も出てきている中で、本市においては、現在もなお地域自治の基盤となる自治会活動がそれぞれの自治会組織において維持・継続されていることはやはり注目すべきポイントだと思います。
しかし、それぞれ自治会の実態としては役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化しており、このままでは自治会活動そのものの継続が困難になる状況も予測されています。すでに自治会では「区長の後継者が見つからない」、「高齢化により広報の配布ができない」、「民生委員のなり手がいない」、「消防団員が確保できない」といった状況が出てきており、これから先も地域コミュニティが飛躍的に活性化することは期待できません。

さらに地域ではふれあいネットワークや自主防災活動など個別の地域課題へ対応した活動も行われていますが、これらの活動においても担い手不足の問題がボトルネックになっており、今後、自治会活動との関係性や地域活動そのものの再構築が必要になっているといえます。

【小校区圏域】
「小校区圏域」では、これまで8小校区で取り組まれてきた「まち協」の現状と課題について考えてみます。

そもそも「協働のまちづくり推進事業」が始まる以前は「小校区圏域」でまちづくりを推進する組織が存在しなかったため、校区エリアでの地域活動はそこまで活発ではありませんでしたが、平成24年度以降、「まち協」が設置され小学校区の特性や地域の実情に応じて様々な活動が住民主体で取り組まれていることは大きな成果だといえます。
例えば、自治会バス、移動販売、自主防災活動、どんど焼き、高齢者SOSネットワーク、認知症カフェなど、地域の特色ある活動が地域住民やボランティアを主体として取り組まれています。また、校区防災部会では、地域の災害特性に応じた防災訓練や防災研修によって自治会の自主防災組織の活動を支援するとともに、防災リーダー養成講座を行うなど地域の人材育成の役割を担っています。

しかし、一方では「まち協」が特定の人達だけで運営される固定的な組織になっていないか、地域の住民にとって本当に魅力ある組織になっているのか、「まち協」と地域ボランティアの関係性はどうあるべきかなど、新たに検討すべき課題も出てきています。

【市全域】
「市全域」では、当初の「協働のまちづくり実施計画(以下、実施計画)」において目指してきた「協働のまちづくりに期待される効果」についての検証が必要だと思います。

これまで10年間にわたって協働のまちづくり事業を推進してきたことによって、①市民主体のまちづくりは進んだのか、②地域の実情に応じたまちづくりは実現できたのか、③自治会や各種団体の活動は活性化したのか、という観点からの総括的な検証になると思います。

 また、これまでの協働のまちづくりの取り組みが、地縁組織の自治会や「まち協」だけではなく、志縁組織である市内の市民活動団体やNPO、ボランティア団体の育成や活性化につながったのかについても、市の施策(事業)として進めている市民提案型協働事業の総括(成果と課題)とあわせて検証が必要になると思います。(次回へ続く)
(2022.10.10)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?