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協働のまちづくり > まち協

≪おごおりト−ク22≫

前回に引き続き「協働のまちづくり」の話題をふたたび。しばしお付き合いください。

前回、小郡市が推進している「協働のまちづくり」と「まちづくり協議会(以下、まち協)」の基本的な認識について述べましたが、「協働のまちづくり」のフィールドは「まち協」の活動に限られたものではありません。

少子高齢化や人口減少の影響により生じる様々な地域課題に対して、行政だけでは対応が困難になる状況が予測されており、これらの課題解決のためには市民との協働が欠かせないという認識から「協働のまちづくり」が推進されるに至りました。
それに伴って設置された「まち協」は、地域で協働のまちづくりを具体的に推進していく実施主体の一つではありますが、「協働のまちづくり」のフィールドは幅広く、「まち協」の活動だけに限定されるものではありません。

私は、行政としてこれまでの「協働のまちづくり」の評価・検証を行う際には、「まち協」の活動だけではなく、各所管課が抱えている地域課題についても地域自治の観点からそれぞれの成果と課題が検証されなければならないと考えています。
つまり、各所管課が地域課題の解決に向けて、自治会やまち協等との関係性の中でどのようなスキーム(課題解決に向けた具体的な方法や仕組み)で取り組んできたのかということが検証されなければならないと思うのです。

そこで今回は、少し視点を変えて、行政の各所管課が抱える地域課題をピックアップして、地域自治の観点からそのスキームと課題について考えてみたいと思います。

【ごみ減量・リサイクル活動の推進】

地域において、ごみ減量・リサイクル活動を実際に行っているのは一人ひとりの地域住民であることに違いありません。ごみ減量・リサイクル活動を推進していくためには、地域住民に対する継続的なリサイクル分別の周知やごみ減量に対する意識啓発が必要です。
この周知・啓発活動を住民主体で推進している団体が環境衛生組合連合会(以下、衛連)です。衛連は、自治会に重ねて設置された衛生組合をもって構成されており、構成メンバーは衛生組合長(自治会長)となっています。

行政はこの衛連の活動を支援することによって、また、衛連は衛生組合の周知・啓発活動を通じて、地域住民のごみ減量・リサイクル活動の推進を図っています。

これを地域自治のスキームの視点で見てみると、ごみ減量・リサイクル活動の主体は地域住民であり、衛連から衛生組合(自治会)へ、そして衛生組合(自治会)から地域住民への直接的な働きかけ(周知・啓発活動)をもって実践されている、というスキームになります。

課題として、自治会と重ねて衛生組合が設置されており、かつ衛連の組合費が徴収されていることについては、衛生組合の必要性と自治会への一体化の観点から見直しが必要でしょう。

【自主防災組織の活性化】

災害時に地域の防災活動の中心的役割を担うのは自主防災組織であり、地域防災力の強化のためにはこの自主防災組織の実働的な体制づくりと自主防災活動の活性化が必要となっています。

自主防災組織は自治会と一体的に組織されており、自治会の役員体制がそのまま自主防災組織の体制とされています。これは、災害時に特化した体制づくりは災害時には機能しないことと、平常時の自治会活動の延長線上に災害時の防災活動が位置付けられていることによるものです。

この自主防災活動を支援する組織として校区まち協の防災部会があります。防災部会では各自主防災組織からの参加のもと地域の実情に応じた防災研修や防災訓練に取り組まれており、地域の防災活動の活性化に重要な役割を果たしているといえます。
そして、特徴的なのは防災士会の存在で、行政でもなく自治会やまち協でもない立場で行政と地域をつなぐ中間支援組織として活動しており、地域の防災活動を支援しています。

これを地域自治のスキームの視点で見てみると、地域の防災活動はあくまで自治会の自主防災組織が主体であり、まち協の防災部会や中間支援組織の防災士会が行政と連携しながら地域の防災活動の支援を行っているというスキームになります。

課題は、自主防災組織の役員の高齢化と防災活動の担い手不足の問題です。この対策として、市は防災リーダー養成に取り組んでおり、地域の自主防災活動の核となる人材の育成と発掘を行っています。
また、まち協防災部会においても自主的に防災リーダー養成講座に取り組まれるなど、担い手確保に向けた取り組みがそれぞれの役割の中で実践されている事例ではないかと思います。

【地域の見守り活動の推進】

地域の見守り活動は、それぞれの自治会で「ふれあいネットワーク活動」として取り組まれています。自治会では区役員、民生委員、福祉協力者、老人クラブなどを中心に「ふれあいネットワーク推進委員会」が設置されており、高齢者等を対象とした見守り訪問活動やサロン交流事業などが行われています。

この「ふれあいネットワーク推進委員会」も自治会と一体的に組織されており、自治会の役員体制がそのまま「ふれあいネットワーク推進委員会」とされています。これは、地域の見守り活動の担い手不足への対応と、自治会の隣組や班などを活用しながら自治会活動の「ついで」に見守り活動が行われていることによるものです。

これを地域自治のスキームの視点で見てみると、地域の見守り活動は自治会の「ふれあいネットワーク推進委員会」が主体であり、社会福祉協議会から「ふれあいネットワーク推進委員会」への直接的な働きかけをもって推進するというスキームになります。

課題は、地域の見守り活動が自治会活動と一体化して取り組まれていない地域が多いことと、その地域では民生委員に負担が集中していることだと思います。


さて、私がなぜこの3つの地域課題をピックアップしたかというと、地域自治のスキームから見たときにこれらの課題には共通点があると考えているからです。

その一つは、自治会活動と一体的な体制を構築することによってそれぞれの地域課題の解決を図ろうとしている点です。

地域課題は多岐にわたりますが、それを受け止める自治会は一つです。当然に、それぞれの地域課題へ対応できる人的資源や財源には限りがあります。その中で、衛生組合、自主防災組織、ふれあいネットワーク推進委員会は自治会活動と一体化して取り組むことによって地域課題の解決を図ろうとするスキームで組み立てられています。

その際、行政の各所管課がバラバラに地域に働きかけるのではなく、まずはそのスキームについて庁内関係課で共有され、相互に整合性が図られなければならないという課題があります。

もう一つは、地域自治の基盤である自治会においては、役員の高齢化と担い手不足の問題が深刻化している点です。

それぞれの活動を既存の自治会活動と一体化して取り組んでいく際には、この担い手不足への対応として人材育成や人材発掘、いわゆる“人づくり”をどのように取り組んでいくのかが同時に検討されなければならないという課題があります。

今後、これまで10年間にわたって取り組んできた小郡市の「協働のまちづくり」を評価・検証する際には、これら自治会の抱える課題が行政の各所管課において共通認識されていたかどうか、そして、これらの課題に対してどのようなスキームをもって取り組んできたのかということが、あらためて検証されなければならないと思います。
(2022.7.14)

※今回、行政の各所管課が抱える地域課題として3つの事例をピックアップしましたが、それぞれの課題分析はあくまで私の個人的な主観によるものです。見解の相違もあると思いますがご容赦ください。

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