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私有水田トラップ経過報告


前回


先日、稲刈り後の私有水田に仕掛けたピットフォールトラップの確認に向かう。
先に結論から言うと捕獲数は貧相であったが、トリカルネットを使用するメリットとデメリットを確認できたという収穫があった。
今後はもっと数多くトラップを仕掛けても良いだろう。


水田の最奥にて何か獲物が入ったトラップを発見。
中にはヒラタゴミムシ類とアオゴミムシが1匹ずつ確認できたが、コップの中身を出す際にヒラタゴミムシ類はすぐに逃走してしまったため撮影を行う事ができなかった。
しかし、それはこの場所で最も多く見かけるゴミムシであるため、近いうちに再会できるだろう。
ヒラタゴミムシは似たような種類が多いため、未だ同定する事ができていない。
数年以内にはしっかりとその分野も把握しておきたい。

アオゴミムシ

アオゴミムシは河川敷等ではお馴染みの多産ゴミムシで、いわゆる普通種と呼ばれるもの。
特に河川敷で冬季にマイマイカブリ採集を行う者からすればうんざりするほど目にしたであろう虫ではあるが、自分はそうした採集を行った経験が乏しく、近所では中々お目にかかる事ができない。
ましてや私有地にて得られる事ができるとは思ってもみなかったため、この成果は貧相に見えつつも非常に嬉しい。
どこにでもいる虫というわけではなく、湿地帯等の高湿環境にある程度依存するため、少なくとも水田地帯から数百メートル離れて乾燥した庭では見る事ができない虫だった。
全国的にこの虫の生息適地も少しずつ減っているため、私有地での生息が確認できた事は大きな収穫だ。

また、今回は地表のヒビ割れ内に逃げ込まれて撮影をする事は叶わなかったが、コキベリアオゴミムシやトックリゴミムシの生息を確認する事もできた。
これらも普通種と呼ばれるが、ある程度良好な湿地でなければ確認できないため、その環境の指標となる虫だ。

卵を包むマッドセルを形成していた
コキベリアオゴミムシ
2022年6月撮影


さらには、感動した光景も観察できた。

少し離れた場所の用水路、アメリカザリガニとウシガエルがひしめくその用水路を、1匹のマルガタゲンゴロウがゆったりと泳ぐ姿を目撃した。絶滅危惧Ⅱ類の昆虫だ。
この虫に関しては簡単にどこでも見られるような種類ではない。

マルガタゲンゴロウ
別日撮影

その場所はアメリカザリガニに荒らされ『水草らしい水草は一本たりとも生えていない』という典型的な現代の水路環境だ。

用水路にて一掬いで捕獲されたアメリカザリガニ。
この個体達も餌として利用させていただいた。

繁殖期は水に満ちたどこかの水田内で育ち、渇水と共に用水路内へと移動してきたのだろう。
マルガタは水面に落ちた昆虫を探すかのような仕草を5分ほど続けた後、そのまま下流へと泳いで消えていった。

あのマルガタが私有水田にて生まれた個体である可能性もゼロではない。
もしかしたら稲刈りを終えてから迎える大雨の後、私有水田内に水溜まりができたタイミングで訪れれば、私有地に飛来したマルガタを採集する事もできるのかもしれない。
ライトトラップを行えば、そこに直接飛来するかもしれない。
本種の完全な私有地採集を行う事も可能なのかもしれない。
今後の楽しみが、また一つ増えた。



話をピットフォールトラップに戻す。
獣害対策として使用したトリカルネットだったが、これは一定の効果があったと言える。
トラップ2つの近辺に新鮮な獣糞(タヌキの溜め糞1箇所とハクビシンの物を1つ)を確認したが、ネットを張った全てのトラップが無事だった。
前回も述べたように棘状のパーツを追加すればアライグマ対策も行えるだろう。

そしてネットを使用せずコップを直接ペグで固定したトラップは全て餌だけが抜き取られていた。
この例からもネットを張ることは効果があった事が分かる。

しかし、カエル対策としてはやはり不十分で、網目の大きさを縮小した方が良いと言える。
トラップ内に入った昆虫の少なさも、自由に出入りできるカエルに捕食された事によるものである可能性が考えられる。
今後はさらに小さな目のトリカルネットを使用する事を検討する。
しかし、森林内等のカエルが少ない環境ならばそのまま採用しても良いだろう。

トラップを仕掛けて数分で集まるヌマガエル


初めは金網の使用を検討したが、ホームセンターで購入する際、直前になってトリカルネットの方を採用した。
その理由の一つに、素材の強靭さが挙げられる。
トリカルネットは細い金網よりも壊れにくく、加工もしやすい。
また、トラップに使用しているネットをそのまま引っ張る事でペグを弛めて抜きやすくする事もできるためだ。

餌や採集個体の回収、コップの交換を行う際は以下画像の赤丸部分以外のペグを抜いた後に赤丸部分を支点にしてネットをずらすと良い。

ネットをずらす前
ネットをずらした後

ただし、ネットの強靭さは初回使用においての感想であるため、経年劣化にてどれだけ脆くなってしまうのかは未検証である。
そちらに関しては今後も使用を続けてデータを得たい。

ちなみに、ネットをコップに合わせて切る際は、コップの直径ギリギリにすると場合によってはトリカルネットでカバーしきれず、隙間から獣に荒らされる可能性が高まる。
直径ギリギリだとそもそもコップも抑えにくくなってしまうため、コップの直径よりも1.5から2センチ以上オーバーするようにネットを切ると、設置時の微調整を行わずに済むようになる。

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