見出し画像

人生の目標、故郷産アオヘリアオゴミムシとの遭遇


2023/08/22

故郷にて、実家のビオトープに入れるための水草を探している最中、1匹のゴミムシが目の前を一瞬だけ横切った。

その時は数百メートルの藪漕ぎをした直後で疲労困憊となっていた。
しかし、昨年に「絶対に取り逃してはならない」と覚悟を決めて絶滅危惧IA類のアオヘリアオゴミムシを捕獲・観察及びリリースをし続けたおかげで、安全を確認しつつ反射的に手を伸ばし歩行虫を確保する能力が多少なりとも育っていた。
一度確保して寄生菌類や奇形の有無を確認しないと気が済まない。
それ故に今回も横切った昆虫を無事に確保できた。

捕獲された地元市産ゴミムシ類

手に握られたその虫の姿をしっかりと認識した時、呼吸と思考が止まってしまった。

長らく幻の存在とされていたあの昆虫、アオヘリアオゴミムシにしか見えないのだ。

近似種のスジアオゴミムシ、オオキベリアオゴミムシ、コキベリアオゴミムシ。
それらはこのポイントで何匹か見かける事があった。オオキベリに至ってはこの日だけで4匹も確認する事ができた。

同所で捕獲したオオキベリアオゴミムシ

長い硬直の末、堰き止められていた血液が心臓から一気に放出されたような、そんな錯覚に陥る。同時に呼吸と思考も再開する。

これがアオヘリアオゴミムシならば、人生においての1番の目標『地元市産アオヘリアオゴミムシの捕獲』が突然叶ってしまった事になる。
「幸せな人生を過ごしたい」、それを遥かに上回る願望だった。
それほどまでに数を減らした幻の存在だった。様々な文献を多少なりとも漁っているが、当地では記録があるのかさえ不明だ。

逸る気持ちを抑えて、小型ペットボトルにその虫を投入する。
愛車に戻って呼吸を整えた後、自分と共にアオヘリアオの調査を行なっている師に報告をし、すぐさま帰宅して撮影と最終同定を行った。


アオヘリアオゴミムシ

地元市で突然出会ったその昆虫は、どこから見ても、紛れもなく、アオヘリアオゴミムシそのものだった。しかも鞘翅には寄生菌類ラブルベニアが付いている。

絶滅危惧IA類。
その定義は『ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの』。
自分が最も読み込んだ本種の文献では、関東地方における本種の記録が網羅されていたが、そこにも当市での記録は無かった。

また、各地で8つのポイントを開拓した末に、「当市には本種の生存が絶望的と思えるいくつかの要因がある」と自分は考えていた。
師からは「この地域でも可能性はある」「この地域のとある環境なら生き残っていてもおかしくない」と伝えられていたが、当市だけで365日以上の湿地帯捜索を行った自分はその可能性を微塵も信じる事はできなかった。
しかし最終的には師の予言が的中する事となった。生息地の立地さえも。

今はまだ気持ちの整理ができていないため、本日の日記はここまでとする。

次は在住市内のアオヘリアオ発見を目標としたい所。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?