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ボーボボで笑うという事



少し前まで、人生で一番笑ったであろう記憶はボボボーボ・ボーボボの番宣CMを観た時だった。
あまりにインパクトの強いタイトルとやたらウネウネ動く鼻毛に腹を抱えて笑い、それが5分以上も続いた。

人生で初めて、笑いすぎる事の苦しさを知った。

それについては過去の記事でも語っている。




ボーボボの面白さは、小学生のような『まだ知識や経験に乏しく、それでいて何でもスポンジのように吸収する時期』に読む事と、その経験を経た後に成人してから再び読む事でその真価を発揮すると考えている。
高校生以降に初めてボーボボを読んでも、その半分も笑えないだろう。

『でんじゃらすじーさん』にも言える事だと思うが、なんというか…支離滅裂さに感じるそれを俯瞰した目で見てしまう気がする。
(実際には完全な支離滅裂である事は少なく、大小様々なフリとオチが散りばめられてその都度細かく回収されているが)


小学生は日常的に世の中から『分からない事』を当然のように浴び続けている。
無知ゆえに、ギャグ漫画を読んだ際の『分からない事』に対する受け入れ方が柔軟であり、常識との乖離をナンセンスであると切り捨てて拒絶するに至るケースが大人よりも少ないように感じる場面も多い。
『ボーボボ』や『じーさん』は、その対象年齢の「分からない」を絶妙に上回るように描かれているというのが自分の印象だ。


小学生の目線で見るボーボボ。
それは当時の知識や経験に乏しかったからこそ、「自分の理解を遥かに超えるギャグが洪水のように浴びせられる」「その中で溺れる様な感覚を味わう事ができる」という刺激的なエンタメだったような記憶がある。


作中の内容の意味が全く分からない訳ではない。話の大筋は王道バトル漫画のそれを踏襲しており、支離滅裂に見えて所々意味が分かる要素が配置されている。子供にも分かるパロディも多い。
しかし妙な所で「なんで!?」と思うような外し方をしてくる。
この世の多くの笑いは「分かる」からの「なんで!?」に繋がるフォーマットに乗っ取ったものではあるが、ボーボボはそのストップ・アンド・ゴーの激しさ、短い間隔でのフリオチの頻度の高さが極まっている。
フリがあってオチがある。と思ったらまた次のフリとオチに繋げられる。これを数コマから1ページ、または2〜3ページを使って何度も行われる。
1話1話を通しで読むと、体感としては息継ぎをほんの一瞬しかさせてもらえない感覚に近い。


この場合は1ページ内でフリ〜オチが完結している

ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社



大人になって再び読むボーボボの面白さは、「あったな、こんなギャグ」という懐かしさを含む笑いの再履修の要素と、「子供の頃は意味が分からなくて笑っていたけど、大人になってから読んだら余計に意味が分からん」という気付きによるものなのかもしれない。子供の頃に分からなかったパロディの元ネタに気付くようにもなる。

笑いは『おかしさ』や『矛盾』に気付く事で生まれる。
そしてその後、作者の澤井啓夫さわいよしお先生はなんでこんな発想ができるのかという点に恐ろしさを感じるに至る。それがボーボボの魅力だと感じた。

伝説となっているボーボボ3話の扉絵では、「人気投票にボーボボしかいない」という気付きに加えて、「新連載3回目だから人気投票なんて行っているはずがない」という部分に気付いた時に笑いが生まれる。これは読んでいた当時に気付かなくても、後からそのおかしさを知ってしまう時限爆弾のような要素がある。

ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社

その他、それぞれのボーボボに個別のキャラクター性が付与されている…等の小さな気付きも用意されており、左端にはこの投票が架空のものであった事に気付ける注意書きもある。



先週の『呪術廻戦』239話、そのサブタイトルは『バカサバイバー!!』だった。
今週の240話は『バカサバイバー!!〜生き残れ〜』。
どちらもボーボボのアニメOPであるウルフルズの『バカサバイバー』とその歌詞から来ている。
歌詞部分がサブタイトルのナンバリングの役割を持っているのかもしれないし、来週は『バカサバイバー!!〜勝ち残れ〜』やその他の歌詞部分なのかもしれない。

話の内容は、ボーボボが連載されていたあの時代を髣髴とさせるギャグやパロディの応酬だった。
あまりにも笑ってしまい、冒頭で語った『ボーボボの番宣CMを初めて観た時』を超える爆笑をしてしまった。
ボーボボのアニメ放映開始は2003年11月。
あれからちょうど20年の時を経て、人生における最爆笑が更新された。


呪術廻戦作者の芥見下々あくたみげげ先生は自分と歳も近い。
共にボーボボで育ち、ボーボボに影響された思考回路があるのだろう。

呪術廻戦は明らかにボーボボのオマージュだと思われる(というかそう明言されている)シーンがそこそこあるので、それを探すような読み方も楽しめる。


ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社
ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社
呪術廻戦
©︎芥見下々・集英社


ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社
呪術廻戦
©︎芥見下々・集英社



私達は、ボーボボに育てられている。
確実に。



追記

呪術廻戦のこのシーンもボーボボのオマージュと言われている。
個人的にはボーボボのギャグの当たり判定が大きすぎて偶然一致しただけ…かと思っていたが、上記のように完全にボーボボを参考にしたであろうネタや明言されたネタはいくつもあるので、本当にこれもボーボボネタなのかもしれない。
というかもう、そうだとしか思えない。

呪術廻戦
©︎芥見下々・集英社
ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社


呪術廻戦
©︎芥見下々・集英社
ボボボーボ・ボーボボ
©︎澤井啓夫・集英社




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