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風化した古代兵器




数年前、繁殖を終えて力尽きたタイコウチに様々な生物が群がる様子が観察された。

主な生物種はミズムシ(等脚目)、カイミジンコ、サカマキガイなど。
これらの生物にとってはタイコウチの体は全身が硬いようで、中の肉を食べるためには死後しばらく経ってから胸部の隙間等、限られた箇所を利用する他なかった。
野外では同所にゲンゴロウ類のように強靭な顎を持つスカベンジャー兼プレデターが生息しているので、数日でバラバラになってしまうだろう。

飼育容器内で起きたこの様子は、死骸を食べるためにこぞって群がっていたというよりも隠れ家や登り木のようなシェルターとして利用されていた場合が多く、特にミズムシはタイコウチの頭部から腹部先端にかけてを昇降する行動を頻繁に繰り返しており、まるで子供の遊び場のような光景となっていた。
しかしこの行動はタイコウチ体内で分解された物が漏出している箇所がその場所だったために興味を示していたのかもしれないという見方もできる。

タイコウチの背中の傷は生時にはすでに存在していたような記憶があるが、よく言われる「剣士の恥」というよりは「生き抜いた勲章」に思えた。

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