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越冬マイマイカブリ誘引トラップ案


前回



前回の記事では『飼育下におけるハンミョウの集団越冬』について語った。
記事に記した管理法を行った数年後に北隆館から『日本のハンミョウ』が出版されたが、そこにはハンミョウが集団越冬を行うメカニズムを調べた実験が記録されており、自分の中で今でも強く印象に残っている。


その内容は「越冬場所となる崖に人工的な穴を造り、ハンミョウから抽出した脂肪を塗り付けた穴とそうでない穴を用意したところ、脂肪を塗り付けた穴の方に入った成虫の数が有位に増えた」というもので、この事からハンミョウは同種の匂いを頼りに集合する性質がある可能性が高いと考察されている。

ハンミョウと近い系統の虫であるオサムシやゴミムシの一部も同種の匂いによって集団越冬に発展する傾向があると見られ、同様の方法で誘引を行うトラップが作れそうだ。


その本を読むまでの自分は、「マイマイカブリの越冬準備が始まる前の時期までに、その地で予め捕獲しておいたマイマイカブリ生体を入れた容器を越冬候補地に埋める」という手法で他の越冬準備個体を誘引できるのではないかと考えていたが、ある程度は良い線を行っていたのかもしれない。
現地で捕獲した個体を用いるのは脱走が起きた際に他地域の個体や寄生虫、細菌等を拡散させないためだ。


しかし、そんな事をしなくてもマイマイカブリは獲れるだろうし、そもそもその前に現地でマイマイカブリを獲らなければならない。
上記のような抽出脂肪を用いた手法の方が遥かに手軽だろう。
ただでさえマイマイカブリは標本製作の際に脂抜きの作業が必要となる虫だ。
その際は脂抜きした後のアセトンを揮発させれば脂を回収できるはずだが、それが同種を誘引できる性質を保っていられるのかは不明。
一応、ハンミョウにおける実験ではエチルエーテルを用いて脂肪の抽出を行っていた。


仮にマイマイカブリでその実験を行うとするならば、どのように行えば効率的だろうか。
個人的には

①越冬候補となるポイントの出入り口付近に脂肪を塗り付ける

②蓋にいくつかの穴を開けた小型プラスチック容器に脂肪を入れ、越冬候補ポイントの奥に埋め込む

といった案を同時に試すべきだと考えている。

蓋に穴を開けた小型プラスチック容器は、必要以上に成分が揮発してしまう事と外気に晒される事による劣化を抑えるために採用を検討した。極小のタッパーやフィルムケース状の物が適しているかもしれない。
もしくは小さな穴を開けたチャック袋を用いるべきか。


マイマイカブリは樹洞から多数の個体が見出されたという報告が非常に多いが、前述の案を実行する場合においても最適な条件が揃ったポイントの一つとなる。

樹洞内で集団越冬をするヒメマイマイカブリ
一つの樹洞に5匹が集まっていた

バケツや発泡スチロール等を用いて簡易的な樹洞を再現してみるのも面白い。

しかし、今年はあまりにも多忙かつ、野外で見かけたマイマイカブリも全てをリリースしてしまっているため、試す事はできないだろう。
そもそも、すでに越冬が始まっている地域もあるようなので、試したとしても少しばかり遅いような気もするが…ここ最近は妙に気温が高い日が連続しているため、越冬に至れていない個体も多そうだ。試すのならばギリギリな時期か。

これを読んだ誰かにいつか試してもらいたい気持ちと、いつか自分で試してみたい気持ちが半々で同居する。

ちなみに、エチルエーテルやエタノール、アセトン等を用いて抽出した脂を使用する場合は、マイマイカブリ生体をそのまま用いたトラップほどは他地域由来の細菌リスクを考慮しなくてもいい気がするが、個人的には極力控えたいと考える。
なんとしてでも同地域由来の物を使用したい。



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