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私有水田にて怪虫オオキベリアオゴミムシを複数発見


稲刈り後の私有水田にピットフォールトラップを仕掛けて数日。
今回はトラップを3つ追加して、以前にアオゴミムシを捕獲したポイントとは対岸に位置する『水田雑草イボクサの茂み』の中に仕掛けた。


一つ目のトラップ、すでに何かの影が動いているのが分かった。

イボクサの茂みに設置したトラップ

どうやら大型のゴミムシだ。腹がはち切れんばかりに膨れている。
スジアオゴミムシか?

いや、この特徴的な黄縁きべりは…。






オオキベリアオゴミムシ

怪虫オオキベリアオゴミムシだ。
本種はカエルを好んで捕食し、幼虫期は生きたカエルに寄生したまま宿主の肉を溶かし吸血するという奇怪な生態を持つ。
美麗さや大きさ、奇怪さも相まってゴミムシの中でも人気が高い種類とされている。
その証拠に、本種の繁殖記録は当noteにおける人気記事トップ3に入るほどだ。


上記個体は満腹になるまで鶏肉を摂食したようで、肉が齧られた跡も残っている。
まさか私有水田にも生息しているとは…。と思ったが、こうした環境が本来の生息地だ。

自分はこの虫が近所に住んでいる事を知らない頃に、片道数十分から1時間をかけて多産地とされるポイントに向かって数日がかりで採集をしていた思い出がある。
さらに、この虫を飼育繁殖した年には同時多発的に庭や裏山、私有する栗林で確認をしたが、本当に野生の個体なのか不安になっていた。
家から離れた栗林での発見ならまだしも、庭や裏山での発見は、もしや自分の飼育個体が逃げ出してしまったものなのではないか…との疑念が晴れなかった。
本種の成虫及び幼虫の飼育は絶対に外に逃げ出せない環境で行い、採集個体や孵化個体の数も把握しながら繁殖に臨んでいたので、逸出個体ではない可能性は99%と言ってもいいほどだったが、残りの1%は自分の管理を疑っていた。

しかし、今回の発見で近隣に生息する本種はしっかりと在来の個体群である事が自分の中で確定した。
水田から数百メートル離れた自宅や裏山で発見した個体も、道中の街灯などに誘き寄せられ、翌日には別の街灯に誘き寄せられ…という事が続いた個体が数日かけて辿り着いたのだろう。
自宅には水田から飛来したイナゴも確認できるため、誘引される条件はある程度揃っている。


その後、さらにもう1個体が入ってるコップを発見。
今回仕掛けたコップ合計3つのうち2つにオオキベリアオゴミムシが入った事になる。
その他は湿潤な環境を好むトックリゴミムシも複数確認できた。
これはかなり好成績なのではないだろうか。


前回までトラップを仕掛けていたポイントは「なるべく水路に近い方角の方がゴミムシが採れるだろう」との安直な思いでそこに仕掛けを増やしていたが、地表は乾燥している場所が多かった。
今回思い切って対岸に設置したのが正解だったようだ。
稲刈り後は、水路から遠い方角ではあるがイボクサが繁茂してある程度の湿度が保たれ続けているポイントに集中してゴミムシが集まっていると見られる。

また、実際に水路の真横の環境を確認してみた所、そこは除草剤が撒かれているために裸地化している箇所が多く、少なくとも湿地性ゴミムシの生息には適していないようであった。
湿潤環境を期待した水路の真横はむしろ組合の管理の都合上、草を繁茂させておくわけにはいかないのだろう。こればかりは仕方がない。



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