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1枚の紙切れが語る歴史の重み

小田急線の向ヶ丘遊園駅。南口のにぎわっている場所を離れて南西に進むと、川(五反田川というらしい)と小さな橋、さらにその上を走る跨線橋が立体的に交差した場所がある。時間があれば「稲生跨線橋」でGoogleマップ検索してほしい。川やら道やら橋やらがうねうねしていて、「どうなってるの?」と声が出るはず。

地元の人々の生活を支えている橋を渡る。下を流れる川が、重ね合わせになっている道とすき間からのぞく空の複雑な構図を、水面に映していた。橋の下をくぐるというのは、トンネルをくぐり抜けるワクワク感がある。

しばらく歩いていると、1階建てのテナントが見えてきた。2〜3店舗は入るであろう長屋のように連なったテナントに、店舗は入っていない。そのうち1つは閉店のチラシが貼られていたのだが、その数字に目を奪われた。

70年。店名のハイカラさからは、想像ができないほどの歴史を持つ、メンズショップSAKAEYA。名前から察するに、男性向けのアパレルショップだったのだと思う。「栄屋」と調べるといくつか似たようなコンセプトのお店が検索でヒットしたが、何か関係はあるのだろうか?

70年前といえば、1950年代。当然ぼくは生まれていないし、創業した日によっては親もギリギリ生まれていない、教科書のなかでしか知りようのない時代。

この時期のヒットソングってなんだろうと調べて、菅原都々子さんの「憧れの住む町」が見つかった。知りもしない、聞いたこともないのに、メロディと歌声に懐かしさを覚えたのに、ちょっと驚いた。

このお店は、親子3代とか家族経営していたのかな。それともオーナーを変えつつ令和まで営業していたのかな。数分間、いろいろ頭のなかで妄想をかき立てながら、「残しておきたい」という想いで撮らせていただいた。

そういえば、向ヶ丘遊園駅の南口には大きなボウリングのピンが印象的なビルがある。このボウリング場も、閉業してしばらく経つらしい。いつか、このピンも撤去されて思い出のなかだけの産物になるのだろうか。そう考えると、少しだけ胸がキュッとなった。

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