がん発覚を打ち明けられた家族の思い~あるナースの体験~
がんを罹患された方が病気が発覚してから、治療・退院・療養を経て新しいライフスタイルを見つけるまで、上図のように移り変わります。ここでは、それぞれの状態で起こることや、罹患された方が感じていることについて、ご紹介して参ります。
(文:訪問看護経験者 ガーベラナース)
がんが発覚して茫然と立ち尽くしたあなた。これからがんになったとを打ち明けることで、自分の大切な家族が一体どんな思いになるのか……。自分ががんになったことより、家族が悲しむ所を想像しただけでつらい気持ちになってしまう方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
私は、ナースとして多くのがんの方の看護に携わってきました。そして、がん罹患者である私の母もまたベテランナースでした。
そんなナース母(以下、母)がどのようにがんを打ち明け、ナース娘(以下、私)がどのようにそれを受け止めたのか……
皆さんの参考になれば良いなと思い、体験をお伝えしようと思います。
※本記事はナースの個人的な体験談です。一般的なことを知りたい方はこちらも参照ください。
がんが発覚したことを打ち明けられた家族はどう対応すれば良いの?|病気と向き合っているあなたが自分らしく生きるを一緒に見つける「Tomopiia」|note
母からの告白とその時のわたし
その日、休日だった私は、家でDVDを観ていました。そこに母からの着信……。普段仕事で忙しい母からの昼間の電話に何となく嫌な予感がして、すぐにその電話に出ました。
私「どうしたの?」
母「うーん…。あのさぁ……」
私「何?どうしたの?何かあったん?」
母「実はさぁ………………、がんになった。」
この時の感情を私は一生忘れることはないと思います。言葉が出なくて、でも何か言わないと母が心配してしまう……と、一瞬の間に様々なことが頭を駆けめぐりました。
私「症状あるの?」
母「出血が続いてる。ずっと続いてたけど、仕事が忙しくて、病院へ行く暇がなくて……」
正直、私は母ががんになったことよりも、症状があったのに受診が遅れてしまったことの方がショックでした。
思わず「何でもっと早く病院行かなかったの?」「仕事と命、どっちが大切なのよ!!」と、母を責める気持ちがふつふつと湧き上がっていました。
でも、私がショックと怒りを母にぶつけずにいられたのは、母の声がとても悲しそうだったこと、そして、電話だったので冷静さを保つことが出来たからかもしれません。
私は必死に、母にショックを悟られないように、わざとゆっくりと落ち着いた声で話していたように記憶しています。
これからのこと
私「治療どうするか決まってるの?」
母「とりあえず手術って。あとは追加で抗がん剤かな…」
私「いつから?」
母「2週間後かな。」
そこで私は一気に冷静になりました。この2週間で手術に向かう準備と術後、母が療養できる環境を整備しなくては!!と。
私「あと誰に話した?」
母「まだ誰にも。他のみんなには内緒にしておこうと思う。みんな心配するし。」
この言葉に私はとてもびっくりしてしまいました。母はとても隠し事が出来るタイプではありません。しかもナースである母が、手術することを家族や職場に打ち明けることをためらっていることに驚きました。ここで私は、母も冷静ではない、今パニック状態なんだなと何となく直観的に感じました。それと同時に、ここは私がしっかり母を導いていかないと!と思ったことを覚えています。
誰に伝えるか
私は、母の思いを尊重しつつ(具体的には「うーん…みんなに心配かけたくないって言うお母さんの気持ちは分かるけど…」という様な言い方をしたと思います。)家族の中で●●と○○、職場では△△だけにはとりあえず伝えた方が良いのではないかと提案しました。
母はこれには答えずに、ご先祖さんのお墓参りに行ってきたことや、自分は運が強いから大丈夫だと思うなど、脈絡のない話をしていました。
おそらくここで色々な思いを吐き出しながら、母自身も気持ちを整理し、治療に向かう覚悟を決める心の準備をしていたのかな、と今になると思います。
私は、母の話に同調する形で思いを聴いていましたが、しばらく話すと、母は自分から「●●と○○、△△には言うわ」と言いました。
そこから2人で、それぞれの人にどんなことを話すかや、手術までに準備しなくてはいけないことなどを確認し合いました。
時間にして10分程度の電話だったと思います。
でも、私にとっては一生忘れられない電話になりました。
まとめ
あの時、母が一番に自分を頼って心を打ち明けてくれたことはとても嬉しく思いました。
そして、強くてナースの先輩として尊敬する母ですらパニックになってしまう病気が発覚したことの衝撃の強さを、改めて感じました。
私個人的な意見としては、がん罹患者本人が一番身近な方に打ち明ける時は、自分の思いや考えを率直に話すと良いと思います。
受け止めるご家族の方は、自分も衝撃を受ける気持ちも勿論あって、とても冷静ではいられないかもしれません。あなたの感じている気持ちを率直に当事者の方とシェアするのは大切なことだと思いますし、もしかしたら、その事実から逃げたくなったり、怒りの気持ちをぶつけたりしたくなってしまうかもしれません。しかし、その気持ちを罹患者ご本人にぶつけることをぐっとこらえれれば、当事者の方も心を落ち着けることが出来るかもしれません。
Tomopiiaではがん罹患者の方々をサポートしていきたいと考えています!
1人で抱え込まずにいてくださればと思います。
筆者ご紹介
合計臨床経験12年。ER・集中治療室経験などを経て訪問看護の道へ。訪問看護は管理者を含め6年のベテランナース。在宅看護領域で修士課程修了、ケアマネジャーの資格も持つ。
ガーベラの花言葉「希望」「常に前進」通り、じっとしていられない猪突猛進タイプ。山登りやスノーボードなどアウトドア好き。子どもが成長し一緒に山登りを楽しむのが夢です。
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