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テトテト

 ポロニャマ市の中心部から、車で1時間くらい離れたところにあるチャミヤミ森、その奥深くの小さな村、ムッチャラ村にハラビスのピーリオの家がありました。ピーリオは仲間のハラビスたちと共に、たくさんのシューンを育てており、収穫したシューンをつかってテトテトを作って暮らしています。ピーリオの家には、家族がずっと昔から大切にしている、大きなオッタンダがあるので、そのオッタンダを使って、とても上手にテトテトを作ることができました。

 ハラビスは仲間の誕生日を盛大に祝います。ピーリオの兄であり、ムッチャラ村の財務大臣であるピオの誕生日には、村中のハラビスたちが家を訪ねてきて、コリポリやマスタス、チョリーヌ、タッカス、ヒュリンチョスなどをお祝いの品として、ピオに渡しました。彼らはオッタンダを見ると「これはとても立派なオッタンダだ」と、いつもオッタンダを褒めました。ピーリオの家族はお祝いの品のお返しに、たくさんのテトテトを振る舞いました。日が暮れて空が薄暗くなるころには「プレンデニスが出たら怖いから」と、ハラビスたちはそれぞれの家に帰っていきました。

 ピーリオは1匹のメンメンをペットとして飼っています。ムーと名付け、できうる限りの愛情を注いでいました。ムーはとても毛並みの良いメンメンで、ピーリオは頭から尻尾までをスーッと撫でるのが好きでした。ムーもまた「悪くないな」という表情で、いつも気持ちよさそうに撫でられていました。

 ある夏の日、ピーリオがポロニャマ市の中心部にあるバーマロン市場へ、テトテトを売りに行っている間に、ムーはいなくなってしまいました。夕方になってもムーが家に帰らないことに気づいたピーリオは、チャミヤミ森中を走り回ってムーを探しましたが、夜になってもムーは見つかりませんでした。「プレンデニスに襲われてませんように」と、ピーリオは星に願いました。

 次の日の朝、テトテトの匂いに誘われて、ムーは何事もなかったかのように家に帰ってきました。きっと帰り道がわからなくなっていたのでしょう。ムーもテトテトが大好きなのです。ピーリオはムーが帰ってきて、とても安心したと同時に、自分が留守の間にきちんとムーを見ていなかったことで、家族を強く責めてしまったことを、ひどく後悔しました。

 秋になり、今年もバッデン・アランディアの日が近づいてきました。バッデン・アランディアには18歳以上のハラビスが出場できます。前回のバッデン・アランディアはピオが優勝しました。村長のセメンデウスから優勝賞品として、たくさんのシューンを与えられましたが、優しいピオはそれらのシューンを全部つかってテトテトを作り、仲間のハラビスたちに振る舞いました。ピオにとって大切なのは、賞品ではなく名誉だったのです。

 「おまえにも出場資格があるじゃないか。なぜいつも出場しないのだ。」バッデン・アランディアの当日、ピオはピーリオに尋ねました。「ケガしないでね。応援してるよ。」テトテトをほおばりながら、ピオの質問には答えずにピーリオは言いました。「そうだ、ムーにもテトテトをあげないと。」

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