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おんせん通信

 入浴中のカピバラは、全国各地で入浴中のカピバラと、頭の中で直接メッセージを送受信することができます。理屈はわかりませんが、うまくやりとりを行うためには温泉でしっかり体を温めることが重要です。今日も夕方の5時ちょうどから定例通信が始まっています。

「こちら埼玉ズーのカピさん。早速ではあるが、コードKについて情報共有を求める。どうぞ。」

「こちら豊橋ズーのカピオ。本日、若い男女ペアの人間を確認。とくに男の方はうわのそら。ふわふわしていて隙が多く、征服は容易かと。以上。」

「こちら長崎ズーのカッピー。本日、監視の厳しい飼育員サトウに娘が誕生したとの情報あり。どうやら育休を取得する模様。計画実行のチャンス到来かと。以上。」

「こちら姫路ズーのバラくん。本日、我々の“おんせん通信”を受信できる人間の存在を確認。ただし幼少個体で会話が不可能のため、他の人間に計画が漏れることはない模様。今後の経過観察が必要かと。以上。」

「こちら伊豆ズーのカーちゃん。昼食のニンジンの切り方が日に日に雑になっており、人間の技術力の低下を確認。征服の成功確率はきわめて高いかと。以上。」

「こちら那須ズーのカピコ。本日、野良猫との接触に成功。人間に関する情報提供を依頼したが、ニャーニャーとのこと。コードKには全く役立たない模様。以上。」

「こちら秋田ズーのマタゾウ。本日、年老いた男女ペアの人間を確認。とくに男の方はうわのそら。ふわふわしていて隙が多く、征服は容易かと。以上。」

 ハシビロコウのブン太は、あらゆる通信を傍受することを得意としています。最近はカピバラたちの“おんせん通信”の盗み聞きを楽しんでいました。ブン太は、もしコードKが実行される日が来たら、その時は自分がカピバラたちの暴走をとめ、世界をカピバラの支配から守ろうと決意しました。

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