勝手に曲からストーリー4

曲:secret base〜君がくれたもの〜(ZONE)

「秘密基地」

夏の終わり頃、夕方の公園。
ベンチに腰掛けて、奈緒と涼は、他愛もない話をしていた。

「宿題は終わった?」

涼は笑顔を交えて、奈緒に聞いた。
二人は中学三年生。

「う〜ん、まだいくつか残ってる」

奈緒は苦笑いだ。

「そうなんだ」

涼は夕日を見ながら言った。

「宿題、そのままぶっちぎろうかな。
やる気ないし。
何か、無理するより、怒られた方が楽な時あるよね」

奈緒は空を仰いだ。

「うん、いいんじゃない、たまには」

涼は少し笑顔で言った。

「それでね。親父の都合で転校するみたい」

涼は無表情で言った。

「えっ?何それ。
聞いてないんだけど」

奈緒は驚いたように、涼を見た。

「今言った」

涼は笑顔だ。

「いつ?」

奈緒はまじまじと涼の顔を見る。

「来週」

涼はうつむいて言った。

「たく、もう・・
そんな大事なこと今になって」

奈緒は口をとがらせた。

数日後。

新幹線のホーム。
涼と家族、奈緒がいた。

「これあげる」

奈緒は涼に駅弁を差し出す。

「うん。
いただきます」

涼は笑った。

「十年後とかに会えたりするかな・・」

奈緒は照れくさそうに下を向く。

「うん、会おう」

涼も照れ隠しに笑った。

「さあ、そろそろ乗ろう」

父親に促され、涼は新幹線に乗った。

「じゃあ、また」

涼は満面の笑顔で手を振る。

「あのね・・涼」

奈緒が言いかけると、新幹線のドアが閉まった。

「私、涼のお嫁さんになるから!」

ドアの向こうの涼に向かって、奈緒が叫んだ。
涼は、えっ?何て言ったのっという顔をして、
手を耳の後ろにあてた。

新幹線がゆっくりとホームを離れていった。

十年後。

奈緒はスマホを開いて写真を見た。
涼から送られてきたものだ。
起業をした涼はさっぱりとした服装してて、
笑顔でピースしている。

「ふふっ、何か充実してそう」

奈緒は笑顔だ。

リビングで泣き声がした。

「はいはい、ミルクの時間ね」

奈緒の子供だ。

奈緒がミルクを用意してると、
仕事終わりの奈緒の夫が帰ってきた。

「ただいま〜」

夫は今日も疲れたなぁという表情で言った。
夫は仕事場で出会った人だ。

「おかえりなさい。
子供にミルクあげてくるから、
ご飯ちょっと待っててね」

奈緒は笑顔で夫に言う。

「了解です」

夫は右手を上げて答えた。

ミルクをあげながら、
奈緒は優しく子供を見つめている。

「元気だね、嬉しいな」

奈緒は一生懸命ミルクを飲む我が子を見て、
そっと頭を撫でた。

(涼、あなたの子供、元気に育ってるよ)

奈緒は秘密の箱を開けるように、
クスッと笑った。