今週のシロクマ文芸部〜海の日を
「海の向こうに」
海の日を楽しみにしていた。
ナミは、朝からワクワクしていた。
それというのも、今日は近くの海水浴場がオープンになるからだ。
海水浴場は、混雑を避けるために順番に設置される。
各地で海開きのニュースが入るたびに、
ナミは、いても立ってもいられなくなっていた。
玄関を出ると、少し強めの日差しが照りつける。
(うわぁ、今日も暑くなりそう。
パラソルも借りなきゃね)
ナミは、眩しい光に手をかざす。
そして、海岸に着く。
待望の海開きとあってか、たくさんの人がいた。
ナミは、波打ち際を歩いてみる。
打ち寄せる小さな波が、ひんやり冷たい。
遠くを見ると、水平線と少し緑がかった空。
エメラルドグリーンの海は、どこまでも透明で綺麗だった。
(うん、いつの時代でも、夏は海だね)
ナミは、自然の非日常を満喫していた。
すると、放送が入る。
<ただいま、この海域の沖にて、そこを震源とする地震がありました。
遊泳中の方は、直ちに海岸へお戻りください>
サイレンが鳴り響く。
ナミは、慌てて海岸の奥へと走る。
海の水がどんどんと引いていく。
そして、5分もしないうちに、周りは、砂と岩だけの風景になった。
海洋コントロールシステム。
かつて、海が存在した地域は、衛星からのマイクロ波照射により、
海水量を地域ごとに調節することができるようになった。
普段は、海岸に海はなく、夏になると、お盆まで海水が満たされる。
ただし、災害時には、津波防止のため、警報が解除されるまで、海水はなくなる。