夏の残り火ストーリー

「始まり火」


マユは、幼い頃からの友達であるナオキを見つめていた。

夏を楽しむような花火にマユは、戸惑いを覚えている。

「ナオキさ、どう思う?」

マユは何やら尋ねた。

「うん?どうって何が?」

ナオキは、困惑気味に答える。

「キスできない」

マユは真顔で言う。

「ん?はい?」

ナオキは何もわからなそうだ。

「夏も終わりだよ」

マユは伏し目がちに言う。

「いや〜、暑かったねぇ」

ナオキは無邪気に笑う。

「暑いは知ってる。
キスがしとうございます」

マユはナオキを少し睨む。

花火はぼんやりと赤や青、黄色に光る。

マユは涙が出てきた。

それを花火の煙で隠す。

「はい、新しい花火。
そっちの火で点けてよ。
キスするみたいに」

ナオキは笑顔で言う。

マユは、残り火でナオキの花火を点けてあげた。

「次はこっちの火を点けてね。
逃げちゃだめだよ?」

マユはそう言うとニコッと笑った。

新しい花火は緑色に光っている。