見出し画像

全てのサッカーファンから愛された天才・リトルモーツァルト

If you love football, you love Rosicky:サッカーを愛すること、それはすなわち、ロシツキーを愛するということだ。」これはアーセン・ベンゲルが残した言葉だ。

 トーマス・ロシツキー、ファンからは「リトルモーツァルト」の愛称で親しまれたこの天才を、あなたはご存知だろうか。パス&ムーブを代名詞に、常にアーセナルのパスサッカーの中心に君臨し、全てのサッカーファンから愛されたトーマス・ロシツキーという男の魅力を探っていこう。

ロシツキーにとってアーセン・ベンゲルは父親のような存在だった

【はじまり】
 1980年10月4日、チェコのプラハで元サッカー選手の父と卓球選手の母の間に生を受けた。幼い頃からサッカーボールに親しみ、7歳の時に兄と共にスパルタ・プラハのユースチームへ加入した。1999年4月、18歳の若さでトップチームデビューを果たすと、即座にレギュラーの座を掴み国内リーグタイトルを獲得、UEFAチャンピオンズリーグでもゴールを決め、その年にはチェコの「タレント・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
 その才能が認められ、2001年1月、当時のブンデスリーガ史上最高額の2500万マルクもの移籍金でボルシア・ドルトムントへと引き抜かれた。ドルトムントでは10番を背負い、在籍した5年半で149試合に出場し20得点を記録。ブンデスリーガタイトル獲得にも貢献した。

CLでアーセナルと対戦時にアーセン・ベンゲルがその才能に惚れ込んだ

【アーセナルへ】
 彼の才能に目を付けたアーセン・ベンゲルに導かれ、2006年5月アーセナルへ移籍を果たす。ベンゲルはロシツキー獲得時に「特別な才能を持っており、視野の広さとボールを扱う技術については卓越したものがある、まさにトップクラスの選手だ。」と語っており、後のアーセナルのサッカーはまさにロシツキーが体現したと言っても過言ではないだろう。
 ジャック・ウィルシャー、メスト・エジル、サンティ・カソルラ、ミケル・アルテタらと奏でる美しいアーセナルの攻撃的パスサッカーの中心には、いつもロシツキーの存在があった。その卓越したテクニックはさることながら、泥臭い守備や前線からのプレスバックも怠らず、ファンタジスタでありながらハードワークをも厭わない彼の存在は美しくも強いアーセナルのパスサッカーには必要不可欠であり、若手の良き見本となった。度重なる怪我には悩まされたが、2016年に契約満了で退団をするまで公式戦通算246試合28得点を記録し、国内カップのタイトルも2度獲得した。

アーセナルの美しい攻撃的パスサッカーを体現した

 彼に対して否定的な意見を述べる人はほぼ見たことがない程、多くのグーナーから愛され、まさにアーセナルのレジェンドとなったロシツキー。彼に魅せられアーセナルを好きになったグーナーも多く存在し、筆者もそのうちの1人だ。退団セレモニーではロシツキーのユニフォームに身を包んだ多くのチームメイト、多くのファンから祝福を受け、彼がアーセナルにもたらしたものの大きさを再確認させられた。満員のエミレーツスタジアムには「スーパートム・ロシツキー!」の大合唱が響き渡った。

2016年の退団セレモニー。この日は現監督のミケル・アルテタにとっても現役最後の試合となった。(写真右奥)
後に背番号7を引き継ぐこととなるアレクシス・サンチェスが、自身のゴールでロシツキーを祝福した。

 世間的に見たらロシツキーの存在はメッシやロナウドと言ったスーパースターたちには遠く及ばず、サッカーファンの中には彼の存在を知らないファンも多く存在するだろう。誰もが知る選手ではないなかで、なぜ彼がここまで多くのアーセナルファンに愛されるのか。彼がアーセナルファンから愛され、あの世界的名将であるベンゲルから「サッカーを愛することは、ロシツキーを愛することだ」とまで言われる存在であったのか。ここからは彼のフットボーラーとしての魅力を紹介していこう。


⑴パス&ムーブの流動的プレースタイル

 ベンゲルが築いてきたアーセナルの美しいフットボールは、ロシツキーなくては完成しなかった。彼のプレースタイルは、センスあるパスを通すだけでなく、必ず「&ムーブ」がセットだ。ワンタッチでボールをはたき、そしてスペースを見つけて走り込む、そこで受けたボールをまたワンタッチではたき、そしてまたスペースに走り込みボールを受ける、その繰り返しでアーセナルの攻撃的パスサッカーは成り立っている。
そんなロシツキーの「パス&ムーブ」を象徴したゴールがこれだ。↓


⑵泥臭いプレーをも厭わないハードワーク

 グーナーから彼が愛される一番の理由が、おそらくこれだろう。攻撃面では周知の通り天性の才能を持ち合わせていながら、彼は誰よりも守備に全力で戻る。チームが苦しい場面での全力のプレスバック、リトルモーツアルトと言われながら泥臭いプレーをも厭わない彼の献身性、勝利への熱い想いが、アーセナルを支えていた。誰よりも早い攻→守への切り替え、そんなロシツキーを象徴するプレーを以下からご覧頂きたい。


⑶大一番での勝負強さ、一発で局面を変える能力

 彼はゴールを量産するタイプではないが、彼のゴールを振り返るとどれも大一番で試合の流れを一発で変えたり、難しい局面でド派手なシュートを決めたりと、どれもグーナーの記憶に焼き付くようなゴールが多かった。まさに記録より記憶に残る、ここぞの場面で決めてくれる彼の勝負強さはチームの大きな助けとなった。更に彼は誰よりもダービー男であり、タイトル・トッテナイ・ホットスパーとのノースロンドンダービーで何度もゴールを決め、そして試合を決めてきた。これ以上無いアーセナルファンから愛される理由だろう。
 以下、ロシツキーのベストゴールだ。↓


【おわりに】

 ロシツキーを好きになり、そこからアーセナルを好きになったというファンも多いのではないだろうか。なぜなら、彼こそがアーセナルの美しい攻撃的パスサッカーの象徴であり、彼なくしては成り立たなかったからだ。引退からかれこれ5,6年ほど経ったが、未だに試合の際に彼の名を口にし、回顧するグーナーは多くいる。それだけ、人々の記憶に焼き付いているプレイヤーなのだ。彼が残したものは、これからも人々の記憶に焼き付き続けるだろう。
※ちなみに筆者のプレースタイルを知っている人は、どこか私自身、彼のプレーを意識しているところに共感して頂けると非常に嬉しい。スーパートム、その名を借りるに相応しいプレイヤーになれるよう、私自身も精進をし続けていくつもりだ。個人的な感想、失礼しました。

「Once a Gunner, Always a Gunner」


文/編集長(自称・スーパートム)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?