ことばの標本(14)_「李下に冠を正さず」
「李下に冠を正さず」
(中国の古事成語)
すももを大量にいただいた。
「千町2500」の皆さんから。
すももなんて、瀋陽で食べた気もするがあれは桃だったか。皮のまま行けるということでかぶりついたら、素朴な甘酸っぱさ。青みがかったものでも、食感と相まって結構いけた。
「たくさん持って帰って」ってことで一週間分くらいいただいてしまったのだが、このままでは食べきれない。よって、ジャムにすることにした。
・・・のだが、ここで止まっている。
砂糖を切らせていたため、娘にひとっ走り買い物を頼んだのだが、買ってきたのはなぜだかどうして
「塩」
だった。
砂糖が塩に変換された瞬間を聞いたら、「玄関出るときにはもう塩だったあせあせ」だそうだ。
ド天然の娘と暮らしていると、サザエさんちバリのドラマがしょっちゅう起こる。
そういえば、サザエさんのモデルは、長谷川町子さんのお姉さんだったというのをどこかで読んだことがあるけれど、
町子さんはきっと、天然で楽天家の家族のことを人一倍おもしろがってたんだろうな、と想像する。こんなおもろい人がいることを、伝えずにはいられない。
私も、日々、そんな気持ちになるのである。
というわけで、今日はもうやる気がうせたので、ジャム作りは明日以降に再チャレンジ。
***
そもそも「すもも」は、私の暮らしにはあまり馴染みがない。丸ごとかじってみたら、瀋陽で食べた酸っぱくて硬い桃に、味が少し似ているような気がした。
想像できたのはそのくらいだったので、「すもも」を検索してみたところ、漢字変換が「李」になるではないか。
え、リーさんて、すももさんやったの?!
知識の浅さが露呈する。
こちらのサイトによれば、すももはやはり中国原産。奈良時代に中国から伝わったらしい。
山梨や和歌山での生産量が多く、日本では、あの王道の桃よりも酸っぱい、ということで酸桃(すもも)と表記されたことなど。
さらには、昨日いただいたこのすももは「日本すもも」、好きで朝食がわりによく食べていたプルーンは「西洋すもも」で、両者が兄弟みたいなもんだったことを知る!
果物の恩恵に預かっておきながら、果物の産地や横の繋がりには鈍感。この辺りは、生の果物をあまり食べなくなっている食生活にも原因がありそうだ。
極め付けは、「李下に冠を正さず」ということわざと出会ったことだ。
「李」は「すもも」の木のことを指すそうで、
2〜3メートルほどになるすももの木の下で、曲がっている冠を直しでもしたら、すももを盗んでいるようにどうしたって見えるから、そのような行動は慎むべし、との意味だそう。
ほうほう、いまいちピンと来ない(笑)。
なんせ日常生活で使ったことがない言葉。私のアンテナに引っかかる「李下冠を正さず」とは・・・としばらく考えて、いわば、セクハラとか賄賂とかかか、となった。
誤解を招くような言動は慎みなさい、という意味合いで使われるそうだが、つまり
自分は大丈夫だ、問題ないと思っても、他人様からみたときには疑われても仕方がないことがある。
ただ、私なんかは、そら誤解する方に問題があるんじゃ?とか思ってしまうのだが、
そのとき、自分が悪くなくても、そのときそうしてしまった自分に非があると潔く認めよ、ということに強い意図があるのだろう。
行動を律して堂々と生きよ。
私はそんなふうに受け止めたが、次知ったかぶってこの慣用句を使っている私に出会ったら「ああ、すももね」と思ってください。
すももジャムが作れなかったことで、すももの原産地、そして、軽率な行動は慎め、という慣用句までたどり着いた今日も、なかなかに豊かな1日であった。
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