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ダイナミックEQ 動きます。

「音像達は不安よな。ダイナミックEQ 動きます。」

こんにちは、ダイナミックEQ大好きマンです。ダイナミックEQとは、コンプっぽいパラメーターを持ったEQです。プラグインではWavesだと「F6」、iZotope Ozoneではバージョン6から、FabFilterだと「Pro-Q3」からダイナミックEQモードが実装されました。最初に書いておくと、ダイナミックEQはコンプレッサーではないです。使い方によってはマルチバンドコンプやディエッサー「風」な結果を得ることはできますが、動作としてはめちゃめちゃEQです。めちゃめちゃEQ(2回言ったよ!)。めちゃめちゃEQなので、「ダイナミックEQはコンプっぽく使えるEQ」みたいな先入観を持っている方がもしいたら、一旦それは忘れていただきたい。

ダイナミックEQのパラメーターは、普通のパラメトリックEQと同じように「周波数ポイントの設定」「ゲインの設定(ブーストまたはカット)」「Q幅の設定」の他に、「スレッショルド」「アタック」「リリース」があります。ぼくが愛用しているiZotope Ozone 8の「Dynamic EQ」にはその他に、「Down/Up」の切り替えボタンというのが付いてます。

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ダイナミックEQの基本動作は、入力信号が「スレッショルド」値を超える/超えないに応じてパラメトリックEQのゲイン幅が可変する、というものです。可変、つまりリアルタイムでグニョグニョ動くわけです。今回はダイナミックEQの動作をダチョウ倶楽部に例えて解説します。

1.押すなよ、絶対に押すなよ!(オフからオンの動作)

そう、熱湯風呂のやつです。ダチョウ倶楽部の熱湯風呂の芸をご存知ない方に解説申し上げると、上島竜兵さんが熱湯を張った湯船の淵に先陣を切ってまたがり、背後にいるメンバーに「押すなよ」「押すなよ」と忠告、三言目の「絶対に押すなよ」の「絶対」が合図となってメンバーは上島さんを湯船に突き落とす!(そして最終的には上島さんを押したメンバー2人も道ずれで熱湯風呂の中へ)という芸なのです。つまりダイナミックEQ的にはどういうことかというと、
1. 「押すなよ」1回目、押さない(=入力信号がスレッショルドを超えていない、EQオフ)
2. 「押すなよ」2回目、押さない(=入力信号がスレッショルドを超えていない、EQオフ)
3. 「絶対に押すなよ!」押す!(=入力信号がスレッショルドを超えた!EQオンする!)
(この「押す!」のEQは押すと書いてあるのですブーストっぽいですが、カットの場合もあります)


2.じゃあ俺がやるよ!どうぞどうぞ。(オンからオフの動作)

再度ご存知ない方に解説申し上げると、上島竜兵さんはわさび入りシュークリームなど食べたくないと言います。すると他のメンバーは「そんなに嫌がるなら俺がやるよ」「いいや俺がやるよ」と続々と立候補しはじめるのです。それに呼応し上島竜兵さんが「じゃあ俺がやるよ!」と手を挙げた途端、「どうぞどうぞ」と譲歩され結局は上島竜兵さんがわさび入りシュークリームを食べる羽目になるという芸なのです。
つまりダイナミックEQ的にはどういうことかというと、
1. 「そんなに嫌がるなら俺がやるよ」他メンバー挙手(=入力信号がスレッショルドを超えていない、EQオン)(=入力信号がスレッショルドを超えていない、EQオン)
2. 「いいや俺がやるよ」他メンバー挙手(=入力信号がスレッショルドを超えていない、EQオン)
3. 「じゃあ俺がやるよ!」上島竜兵さん挙手、他メンバーは手を下げ「どうぞどうぞ」(=入力信号がスレッショルドを超えた!EQオフに戻す!)

便宜上ここではオン・オフの切り替えっぽく書きましたが、実際には入力信号のその周波数帯域の大小によってブーストEQの山(またはカットEQの谷)が連続的に伸び縮みします。

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ダイナミックEQの使い方でよくネットや雑誌の解説で目にするのは1の「絶対に押すなよ!」の方で、この動作をディエッサー的に使える!と紹介されていることは多いのですが、ダイナミックEQが真価を発揮するのはむしろ2の「どうぞどうぞ」の方だと思うのです。

ダイナミックEQの動作はブースト時は2、カット時は1が基本です(iZotope Ozoneでは前述の「Down/Up」ボタンで切り替えられる)。つまりダイナミックEQを2で使うときはブースト時。で、ブースト時にどんな風にEQのゲインが可変するかというと、入力信号がスレッショルド値を下回るときは設定したゲインのまま不動で、スレッショルドを上回ったときに上回った量に応じてEQの山が縮みます。これにプラス、ダイナミックEQには入力がスレッショルドを上回ってからEQ動作が反応するまでの時間「アタック・タイム」の設定があります。

これをまとめて、どういう結果が起こるかというと、「発音の瞬間(=アタック部)に最も強くEQがかかり、それ以降はEQのかかりが弱くなる」のです。
ボーカルだったら子音は強く母音は弱くEQがかかるため、硬い不自然な音質になりずらい印象。だって母音は本来柔らかいじゃないですか。楽器の場合もそうで、アタックと響きは全く異なる成分ですから、押しっぱなしのブーストしっぱなしでは不自然にサウンドが変化するのは想像に難くないと思います。

さらにこれもぼくの主観的な印象ですが、ダイナミックEQをうまく使用すると音像に動きが出て、その名の通りダイナミックに音楽を仕上げることができると思うのです。しっかりとアタック部を表現した音楽は(たとえ打ち込みであっても)演奏の動きが見えるような、豊かな音像に仕上がるところがぼくがダイナミックEQ大好きマンな所以であります。

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